34 メイド長兼大臣
「まぁ、いいのだ。話を続けるのだ」
「さっき、全ての魔法を使えるといっただろ?爆発で魔法が全部解き放たれた結果、このあたりの空間が乱れまくったのだ。だから、その影響で、ここで呼吸することもできるし、光も届いている」
「なるほど……。勉強になります。帰ったらアキアちゃんとナツナちゃんに教えてあげましょう!」
「う、うん。そうだね。きっとあの子達も喜ぶよ。それで、リアの記憶はなんでおかしいの?それとも、私たちがおかしいの?」
度々話が脱線していく……。
「お前らが正しいなら、理由はさっきの話の、空間が乱れたことにある。お前ら、ここに泳いできた訳ではないだろう?」
「うん。魔法陣でワープしてきたよ」
「……原因はそれだ。わかりにくいと思うが、見ての通りここは空間が不安定な状態を無理矢理魔力で上書きして安定させている。そこにお前らが魔法陣で空間をかき乱すと、せっかく安定していた空間がまた乱れて、周りに影響を及ぼす」
「……つまり?」
「お前らがいる時間軸と、我がいる時間軸は違っているということだ。結果的に過去に干渉することになるが、別にそれに関しては問題ない。その傷だらけだった我は何か、ここで事件があって、過去の我を助けてほしいということだな。我ながらよく考えたものだ」
自画自賛してる!
とりあえず、リアの怪我の原因を見つけて、そこから救い出せってことか。
「ちなみに、我が傷だらけになるのはいつだ?」
「今日って何月何日?」
「7月19日だ」
「じゃあ、明日だね。気をつけて行動しよう!」
「そういえばライナ、お前らは国賓待遇でいいのか?結果的に恩人になる訳だから……。いや、でも、助けてくれる保証があるとは言えないし……。あぁ!もう!ややこしいのだ!」
「カズサ、何とかして……」
「地味に責任転嫁するのやめてくださいよ!」
「まぁ、いいのだ。一応見逃してもらったこともあるし、できた借りは返しておくべきだな。今日は我の家に招くのだ!」
そんな感じで、俺とカズサはリアの家にお邪魔することになった。
○
「ここが我の家なのだ」
リアに案内されるままついていくと、そう言われた時に、目の前にさっき言ってた、「向こうの方にお城みたいなのが見えるし」の、お城があった。
「いや、冗談ですよね?」
「いや、本当だ。これでも一応、海の王様なのだ」
「あ、確かそんなこと言ってたねー」
「数分前のことだろう!」
「おい、クラーケン、おるかー?」
リアの家(王宮)はとても広くて、よく声が響く。
「お帰りなさいませ!」
「「「お帰りなさいませ!」」」
銀髪の、メイド服を着た子がやってきて、挨拶すると周りの兵士達も一緒に挨拶する。
「我の客人なのだ。今すぐにおもてなしするのだ」
「かしこまりました。では、お客様はこちらへ」
リアはどこかへ行ってしまったが、メイドの子に豪華な部屋に案内された。
「改めまして、わたくし、海底王国メイド長兼大臣を務めています。クラーケンのエイレーネです。以後お見知り置きを」
「私はライナ。こっちは弟子のーー」
「カズサです。よろしくお願いします、エイレーネさん。……失礼ですが、リアさんに仕事丸投げされたのって、エイレーネさんですか?」
「いや、まぁ、その……。丸投げされたのは本当です。書類を1500枚ほど……。まぁ、残業手当はでるので、苦ではないですよ」
リア、この子絶対過労死するって!
「よーし!チェック終わったのだー!エイレーネ、ご苦労様なのだ」
「ありがとうございます」
絶対的な服従関係がなせる技なのかも知れないな……。
「お前ら、ちょっとお腹も空いてきただろう?」
「まぁ、朝から色々あったしね……」
「それだったら、エイレーネが作ってくれるのだ。できるよな?」
「はい、かしこまりました」
結構強引だな……。
ちょっと申し訳ない気がする。
約十分後。
「お待たせしました。海鮮を使った、カレーです」