26 ドラゴン娘
「ワタシは、その人たちに会ってみたいです!」
「わ、わかった。何とかする……」
「え?何をですか?」
「いや、何でもないです」
とりあえず、家に帰る事にした。
「ライナ様、どんな方たちなんでしょうね?」
途中で期待した顔のカズサが聞いてきた。
「うーん、分かんないなぁ」
正直、本当に分からない。
前世でカンナ村に卵を預けた時に、「名前は、お任せで」って言って旅に出てしまったので年齢はおろか、性別までわからない。
こんっこんっ。
家のドアをノックする音が聞こえた。
「すみませーん!ライナさんはいますかー?」
あれ?アンさんの声かな?
「ワタシ出まーー」
「いや、念のため私がでる」
ドアを開けると、やはりアンさんが立っていたが、その後ろには10歳ぐらいの女の子が二人立っていた。
「はーい、ってあれ?アンさんじゃん……」
「なんかその反応痛いですね……。あ、そんな事より、先程も紹介した、アキアさんとナツナです」
「幼女万歳!」って自分が言われた時はまぁまぁ嫌がっていたが、逆に考えると結構言いたくなるな。
もっとも、この可愛い二人が自分の娘たちだと知った以上、「可愛い」という感情と、「終わった(いろんな意味で)」という感情が渦巻いて訳がわからない。
「はじめまして!アキアっていいます!」
「はじめまして、アキアの妹のナツナと言います。突然すみません、ライナさんってーー」
「「強いの!?」」
「え?あ、いや、その……」
アキアは、勢いがあって、おてんばな感じ。
逆にナツナは、真面目で、落ち着いた感じ。
というか、アキアとナツナが目をキラキラさせている。
「はい!そうです!超強いです!」
か、カズサぁぁぁぁ!
ちょっと嬉しそうな顔でナツナが言った。
「ち、ちょっと話を聞いてもらえますか?」
とりあえず、俺たちはアンさんも一緒に中へ入った。
「……ナツナたちは賢者グライアと竜王フユカの間に生まれた、双子のドラゴンの子供」
はい、知ってます……あとまぁ、ツノ生えてるし、少しフユカの面影もあるかな?
「アキアたちが生まれる前に、もうパパとママはいなくて……」
急に悲しい話になった!
あと、その件は本当にごめん!
「ナツナたちが生まれてからは、カンナ村で育ってきた……しかしドラゴンだから村を守ってきたのはナツナたちで、誰も守ってくれる、親……という存在がなかった」
「そこで、自分より強い人を探していて、各地を旅したり、竜の里で休憩したりしていたけど、なかなか見つからなくて、一度カンナ村に戻ってみたらライナさんがいたってわけなの!」
「だ、だからライナさん……」
「「アキア(ナツナ)と勝負して!」」
「……もし負けたら、どうなる?」
「アキアたちはもう一度旅にでるよ」
「……勝ったら?」
「まだ、わからない」
○
というわけで、俺はギルドの広場で戦うことにした。
「じゃあ、いくよ!」
「……!」
2人がドラゴン形態になる。
昔、同じようなシーンを見たことがあるような……
「ケガしたら可愛そうだな……ここは様子見で睡眠魔法をーー」
と言ったとたん、とても太い何かが横から飛んできて、そのまま空へ吹っ飛ばされた。
「ライナ様!」
ステータスのお陰で、ダメージはないけど、防御魔法を使わない限り、衝撃はそのまま伝わってくる。
「……しかし、どうしたものか」
村の結界はだいぶ大きいのだが、それを貫通するほど吹っ飛ばされた。どうやら俺に当たった尻尾には何か、魔法が使われていたようだ。
このまま止まる様子がないので、一度「風操」で、体制を立て直す。
全く他人ならまだしも、娘たちとなると結構戦いづらい。
いや、そもそも戦っていいのか?
と思っていたら、今度は火のブレスが飛んできた。
すかさず打ち消すべく、魔法を展開ーーしていたら、ブレスが届かずに、目の前で止まった……
というより、結界の境界線で止まった。
結界はドーム型になっているので、炎のブレスはみるみる広がっていく。
「このままじゃ村が危ない!」
そう言って俺は「魔法破壊」を使用し、結界を破壊する。
魔力消費がとても多いし、とても扱いづらい魔法だけど、自分の魔力も含んだ結界だし、今のステータスなら発動できるだろう。
結界はどんどん消滅していき、同時に炎のブレスも飛んできた。
俺は魔法で相殺し、舞い上がってくるドラゴンに爆弾を投げつける。
爆弾と言っても、カズサとミヅサを倒したあの即席の魔法だ。
今のところ多分「朱雷」を除けば一番強い魔法だし、ドラゴンを撃ち落とすには十分の威力だ。
娘たちを傷つける形になってしまったが、このまま逃げ続けてもキリがないし、忘れていたが、ドラゴンには睡眠魔法などは一切効かない。
大きな爆音と共に、アキアとナツナにダメージが入り、ドラゴン形態が解除され、そのまま落下していく。
さすがにこれ以上ダメージを入れると死んでしまうので、落下のダメージも一応防がなければならない。
「カズサ!お願い、受け止めて!」
今から落下する2人に追いついて助けるのは「風操」の機動力では無理だ。
「分かりました!」
カズサが魔族化し、落ちてくる2人をしっかりと空中で受け止めた。
「ふぅ……」