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24 魔族の結界

こうして、ライナ家には、新しい弟子(魔族の女の子)が、1人加わりました。



「ライナ様、今日の予定は?」

「うーん、特にないかな。ギルドのクエストは全部終わらせてあるし、今日は家でカズサの料理の腕前を見せてもらおうかなぁ、と思う」



弟子との二人暮らし1日目。

とりあえず、初日ということで今日の当番は俺になっている。



「料理、ですか……ライナ様がそういうのでしたら、やってみます!」

「材料は買い出しに行けばいいから、いつでも言ってね」

「ではっ、今から行きましょう!」

随分と気合いが入ってるな……



「た、たくさん買ってしまいました……」

「いいよ。早速作っていける?」

「はい!精一杯頑張ります!」



1時間後。

「ライナ様、できました!」

「え、えーと……これは?」

俺の前にカズサが出してきたのは、おいしそうな料理ーーではなく、黒い謎の塊だった。



「えーっと、これが豚の丸焼き、キャベツの丸焼き、あとはリンゴとオレンジの丸焼きですね」

「丸焼きが多いな……。しかも、全部焦げてるし、一体どんな調理したの?」

というか、キャベツとオレンジの丸焼きなんて聞いたことない。



キッチンを見に行って見ると、燃えていました。

「ちょっ、消火っ!!」

慌てて水で消化する。



「あなた、今まで何食べてきたの?」

「実はワタシ、家事全般は得意なんですが、料理だけはどうしてもできないんです。いつもはミヅサが料理をしていました」

なるほど、どうりで酷いわけだ。

一応、基礎は教えておくか。



「さ、最低限の料理はできるように私が教えてあげるんだけど……その前に、キッチン直そうか。」

「……はい」



俺たちは、キッチンを修復し、ライナ監督の料理教室が始まった。

「えー、今から料理教えるけど、具体的に何を作りたいとかある?」

「ミヅサがよく作っていた、カレーなるものを作ってみたいです」

「オッケー。まず鶏肉は一口大にーー」



30分後。

「どうでしょうか?」

「うーん、水を入れる量が多いかな。別に食べれないこともないよ」

「わ、わかりました!」



さらに30分後。

「今回こそ!」

「今度は、肉のサイズが大きすぎるかな。もう少し小さくするといいよ」

「はい!」



さらにさらに30分後。

「できました!」

「うーむ、野菜がだいぶ硬いかな。火加減はもう少しーー」

こんな調子で、料理教室は夜まで続いた。



そして16回目。

「ど、どうでしょうか……」

「うん!火加減もバッチリだし、これはお店で出しても恥ずかしくない味だよ!」

「ありがとうございます!!カレーしか作れませんが、これからもよろしくお願いします!」

まぁ、料理のバリエーションがないのは仕方ないか。



翌日。



今日はカズサが当番だ。

「ライナ様!できました!」

まさか、朝からカレーじゃないよな。

「昨日教わった、カレーです!」

ぬぅ……まぁ、せっかく作ってもらったので食べることにする。



「いただきまーす……昨日より美味しい!というか、いつこんな技術を!?」

肉が多めなのが少し気になるのだが、味は確実においしくなっている。



「実は昨日の夜抜け出して、アンさんの所で修行してました」

アンさん意外とスペック高いな……



「あ、そういえばライナ様、この村で一つ気になったことがあります」

「何かあった?まぁ、田舎なのは仕方ないけど」

「失礼なのですが、この村の冒険者のレベルが平均的に低くて、例えばワタシたちみたいに急に襲われた時に全滅はほぼ確実といってもいいでしょう」

確かに。もし俺がいなかったらやばいかったな。

そもそも、あの時の目的は村の破壊ではなく、俺だったけど。



「そこでライナ様、私に村を守らせてください!」

「……というと?」

「魔族に伝わる大規模な結界を村に張ります」

魔力の性質上、俺は人間なので魔物に有効な結界を張ることはできないが、魔族にはどの種族にも、魔物にも有効な結界を張ることができるみたいだ。



「……とは言ったものの、ワタシが魔族になっても、この村を覆えるだけの魔力はないのでライナ様の魔力も使用することになってしまいますが、いいですか?」

「え、カズサは魔族になって結界を張るの?」

「はい、そうですけど……」

「この前戦ったとき、魔族になったとたんに性格めちゃくちゃ悪くなってたけど、大丈夫なの?」

正直、心配だ。



「はい、中身がワタシであるのには変わらないですし、魔族化した時の副作用のようなものです」

「なら安心だよ。ちなみに魔力はどれくらい必要なの?」

「少なくとも、ワタシの魔力は全て消費します。そういえば、ライナ様の魔力と知力ってどれくらいあるんですか?」

「魔力は最大3902で、今は半分くらい。知力は、4608だったかな」

「ワタシが魔族化した時の2倍はありますね……」



「カズサが魔族化した時ってステータスどれくらい上がるの?」

「普段はレベル200程度なのですが、魔族化すると一気に魔力と攻撃力、素早さと知力は、2.5倍ほど上がります。逆に、体力と防御力は0.4倍になります」

メリットだけじゃないのか。



「あ、話脱線してた。結界ってどうなの?」

「ライナ様の魔力と、ワタシの魔力を今ある半分くらいずつ結界に込めれば、大丈夫そうです」

「わかった。結界を張るのは、外だよね?」

「はい。大規模な魔法ですので、魔法陣も大きくなります。村の中で広めの場所ってどこかありますか?」

「うーん、ギルドの広場みたいな所はどうかな?」

「行ってみましょう!」



「アンさん、村に結界をーー」

俺はアンさんに結界のことを話した。



「はい、是非使ってください!実は最近、利用者が減ってきて困っていたんです。ぶっちゃけ、ギルドの実技試験だって、その辺の空き地でも借りてやればいいですし」

「ありがとうございます!では早速、魔法陣を描きますね」

そう言って外へ出ると、カズサが魔族化した。



「よしっ!ライナ、魔力を半分くれ」

「呼び捨てかっ!まぁ、いっか」

俺はカズサに魔力を半分渡した。



「すごいな……力がみなぎってくる」

「だからと言って村破壊したりしないでね!?」

「わかっている」

そう言ってカズサが魔法で地面に魔法陣を描き始めた。



十分後。

「完成だ!あとは魔族語で詠唱をするだけだ」

翼を広げて上昇したカズサが、詠唱を始めた。



「ワリハイト・カツマエ・モツナノ・カズサ・ジイメンナリ!」

魔法陣が光を放ち、村の中心の真上まで飛んでいき、消えた。



詠唱を終えたカズサが降りてきて、魔族化を解除する。

「カズサ、詠唱は大丈夫なの?」

「はい、もう問題ないかと」



ちなみに、さっきの詠唱は魔族語で「悪しき魂を持つものを捕らえよ」みたいな意味らしい。



「ふぅ、これで村は平和だねー」

「ですね。2人とも、本当にありがとうございます!」



……この何気ない会話がフラグになってしまったのは、また後の話だ。



「アキアたち、ここに来るの久しぶりだねー!」

「……正確には、15年ぶり。ナツナが見た風景とは何も変わっていない」



「……カズサ、ちょっと寄り道していかない?」

「と言いますと?」

多分、この調子だと朝昼晩全部カレーなので、外食をするつもりだ。



俺たちは行きつけの喫茶店「能ある鷹」で昼夜兼で食事を摂ることにした。

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