23 新弟子は魔族の女の子
一応、顔を確認しとくか。
そう思い、ずっと被っていたフードをめくろうと、ゆっくり下降していくと、急にめまいが襲ってきて、意識を失った。
どうやら魔力切れのようだ。
○
「ライナさんっ……死んでしまったんですね……今まで本当にありがーー」
「勝手に殺すな!」
「す、すみません……」
起き上がって周りを見渡してみると、心配そうな顔の村長と、村の人たち……と、白髪で赤い目の女の子が立っていた。
「ライナ様、先程は本当に申し訳ありませんでした」
「えーっと、誰かな?前に会ったこと……」
しかもなぜに様付け?
「……この姿では始めてですね。ライナ様が先程戦っていた2人の内、火操魔法を使っていた方で、カズサといいます」
「えぇっ!?2人とも、男じゃなかったの!?」
「色々あって変身魔法を使っていたので……」
まぁ、喋り方にも違和感があったしな。
って、そういえば。
「あなたたちって、どうして私の命狙ってたの?」
「……私の他に、もう1人いましたよね?」
「うん、青い目で水操魔法使っていた人?」
「はい。実はもう1人の方は、ワタシの双子の妹のミヅサなんです。もの凄く好奇心旺盛で、実力では私と同じくらいなのですが、ライナ様の実力を知ったとたん、洗脳魔法をかけてきて、今に至ったのです」
「……あなたが悪くないのはわかったけど、村を破壊したのは事実だよね?村の人にはしっかり謝ったの?」
「ぃ、ぃぇ、それは……その……
村が燃えていたということは、魔法を使ったのはカズサのほうだろう。
「あ、あの、カンナ村の皆さん……本当に申し訳ありませんでしたっーー」
「いいんですよ、カズサさん。村の人たちも、謝ってもらえればそれで納得するようですし。家も、直せばいいだけの話です!」
ポジティブ思考だな……
実は、アンさんは現在カンナ村ギルドリーダー兼カンナ村村長だ。
……5年ぐらい前にクエストに連れて行ったら、どんどんレベルが上がって、そのままの勢いで村長になってたな。
世界中のギルドリーダーの中では、現在最強らしい。
「あ、ありがとうございます!……ライナ様、改めて、先程は申し訳ありませんでした」
「いや、私は全然いいよ」
「……一つお願いがあるんですが、いいですか?」
まさか、この状況で死んでくれとかではないよね?
「私を……ライナ様の……弟子にしてくださいっ!!」
「……えっ、弟子って……」
「できれば、ライナ様と一緒に暮らして、日頃の絶え間ない努力を学びたいです!あと、これからはライナ様と呼ばせていただきます!」
いや、ツッコミどころが多すぎるだろ。
すでに「ライナ様」って呼ばれてるし、このステータスに至ったのは別に努力した訳ではないし……
弟子との二人暮らしか……一応、部屋は余ってるんだけど、「俺、中身男だよ?」なんて、今更言えないし……
もう、仕方ないか。村の人たちもカズサに関しては心を許したようだし。
「わかった。取ってあげるよ、弟子。そのかわり、条件があります」
「はい、なんでしょうか?」
「毎日の掃除、料理、洗濯等の家事は当番制にします。その他のルールは後から決めるけど、それでもいい?」
それで喧嘩になったら面倒だしな。
「それぐらいでしたら、私が全部やります」
「いやいや、一応私にもやらせてほしい。まぁ、ルールさえ守れば弟子入りはオッケーだよ?」
「あ、ありがとうございます!!」
こうして、ライナ家には、新しい弟子(魔族の女の子)が、1人加わりました。
次回から新編入ります。