18 お父さんは盗賊
部屋の壁を壊し、俺は、ギルドに向かった。
レベル52なので、だいぶ移動も楽なようだ。
「アンさん!!カイさんがーー!」
俺は全部事情を説明した。
「あ、そういえば!ライナさんがステータス表示してた時、カイさんギルドにいました……」
おい。
そういえば、アンさんからの尋問の途中で出てきた話だが、ラウア、アイナ、カイは昔この辺りの州を荒らし回っていた盗賊3人組で、盗んだものを全て売ってそのお金で(わいろ)で免罪。
カンナ村で暮らすということで落ち着いたらしい。
要するに、あの3人はもともとグルだったのだ。
バンッ!!
ギルドの扉が勢いよく開いた。
もうカイたちが来たようだ。
「ライナぁ!3対1で決闘だ!文句はねぇな。じゃあ表でろ!」
いや、返事してないんですけど……
勝手に話が決まってるし。
結局、俺は外にでて、決闘することにした。
ギルドの窓から、アンさんが心配そうに見守っている。
念のため、3人とも倒さずに捕まえて、カンナ村の村長に送りつけた方が良さそうだ。
魔力量からすると、3人ともレベルは20前後。
まぁ、楽勝だろう。
「「いくぞ!」」
まず、勢いよく攻めてきたのはカイとラウア。
2人とも短剣を両手に持っている。
アイナは、素早さ上昇の魔法を2人にかけているようだ。
「……」
俺は2人の攻撃を無言で受け続ける。
もともと盗賊だからなのか、魔法効果もあって動きは早いし、たまに飛んでくるアイナの攻撃もうっとしい。
だが、威力はそうでもない。
30歳前後の大人が2000歳の幼女に勝てるわけがないのだ。
ちょっと仕掛けてみるか。
本来、武器に魔法を付与するときはわかりにくいようにするのだが、ちょっとだけ無駄に付与して周りにも電気をまとわせて、カイの隙をついて喉を斬りはらった。
当然、本気の攻撃ではないので避けられるが、時間差でくる電気には当たってしまったようだ。
「試験の時の痛みは電気か!?」
「御名答♪」
さっき雷操魔法を剣に無駄に付与したのは、カイを煽るためだ。
意外とこういうのは楽しい。
「もう、暴れ足りたかな?」
3人とも息切れしていて、動きが鈍ってきている。
そろそろケリをつけるか。
俺は風操魔法を使って空へ浮き上がり、3人が見下ろせるぐらいの位置でとまった。
そして、巨大な炎を3つ作り出した。
全滅させるには十分な威力だ。
「もう降参する?」
笑みを浮かべて言った。
もう3人はビビって尻もちをついている。
「返事がないってことは、まだ続けるのね」
俺は炎を3人に向かって放ち、当たる直前で消してあげた。
地上へ戻ると、3人とも気絶しまっていたので、魔法でガチガチに縛った。
今思ったが、レベル20の人が魔法でレベル52の人は縛れない……何か裏がありそうだな。
まぁ、今はいいか。
「アンさーん、この人たちどうしますか?」
「……そ、村長の所に押し付けましょう」
○
気絶した3人を引きずって、俺とアンさんはカンナ村の村長の家に向かった。
「お久しぶりです。村長」
「おぉ、アンか。そっちのお嬢ちゃんは?」
「ラウア盗賊団を全員捕らえた、ライナさんです」
「ラウア盗賊団を……!正直、ワシらの所にも度々苦情が来ておっての。ありがたい。ライナよ、何か望みはあるか?」
望みか。特にないもんな。
あ、ないわけじゃなかった!
「私の家が戦闘で壊れてしまったので、作り直していただけますか?」
「わかった。すぐに手配しよう」
「この3人はどうしますか?」
「うむ。こちらで預かっておこう」
○
翌日。
ライナ家の工事が始まった。