乙女だから
次から不定期更新になるぅ……。
ごめんね。
「ねえ桐葉、やっぱ俺と組まない?言っちゃなんだけど、俺たちすごい気が合うと思うわけですよー」
「気が合うのは幼馴染の腐れ縁っぷりで証明されてるだろ」
「だからって……だからってソロでおっさんと一緒にオペレーターは無いと思う」
井嶋はヤシロさんと一緒にお部屋で情報管制業務に当たるらしい。お前どう見ても現場向きじゃ無いって。組ませるとしたらセナだけだろ。
だいたい自分も怪我を負いまくるって、だいぶすごいぞ。
「いや、俺とお前が組んだとしても、俺ははっきり言ってやばいわけですよ」
「その心は?」
「ついお前を殴ったら、マトだけじゃなくこっちにうっかり流れ弾が来そう」
「それは考慮してなかった……」
どうやら攻撃を仕掛けてきた相手にしか攻撃は返せないらしい。
「あと、お前の超能力だと、比較的拘束を重きとする奴らに対して、ひどく抵抗力が薄い。みゆちゃんたちと同じく、武器が一通り揃う部屋で待ち伏せてる方がいい。あとは純粋にお前が有能だから、だな」
「えー……っと。俺、小手先の細かいことしか自信ないよ?」
そう眉をきゅっと寄せて言うので、井嶋の肩をポンポン叩く。
「問題ねぇよ。俺だってお前には何度も助けられてんだろ。分断工作とかしてくれなきゃ、やばかったし」
「いつの話かな。俺何度もやった記憶があるんだけど」
「それに関しては正直すまんかった。だがお前は有能だから、それに関しては嘘は言ってないし」
「あ、そう?」
そっけなく言ったが、ちょっと嬉しそうだ。
そういえばこいつのことは正面から褒めたことはなかったな。
でも褒めすぎると調子にのるので黙っておく。
「あれ?でも日鳥さんも一人じゃなかったっけ?」
「ああ、縁はちょっと、いや、かなり戦闘スタイルが特殊なもんだからな……」
「特殊ぅ?」
「一人だが一人じゃねーっつーか……」
「おや、私の話をしているのか?」
「あ、縁」
今日はライダージャケットを羽織っている。めっちゃかっこいい。
「そうか、確かに気になるだろうな。と言うわけなら見せるしかあるまい」
「ええー……いいの?」
というわけで訓練場がわりの草原に来ております。
「私の可愛い人形たちだ」
顔もなにも無いのっぺらぼうの、木偶人形。
それがずらりと約50体。
「まあ、中身はそう大したものじゃ無い。人を材料にしているとか、そう言った悪いことは一切ないから安心したまえ」
「いやなんか逆に怖いんだよそういうこと言われると!ったく、じゃあ、見せてくれる?」
「了解した」
縁が声を張り上げて「人形部隊整列!」と叫ぶと、人形がかしゃかしゃと動き始めた。縁がその手を振り下ろすと、人形が一糸乱れずに行軍を始める。
「構え!」
じゃき、と腰に下げていた銃を取り出し、構えている。それから縁が「おろせ」と言うと、人形たちは銃を下ろした。
「とまあ、細かく命令を下せばそれなりのことはやってくれる。実戦では声を届けるイヤホンをつけて、戦わせている。こっちの人形は、それぞれのメンバーの血や髪が一部に使われているものだ」
「それはまたどうして?」
「そうだな、これは応用みたいなものだ。桐葉、送るぞ」
またあの気持ち悪いのやるのか、と思いつつも、俺は手をゆらりと振って了承の意思を示した。地面に置かれたちょっと間抜けな顔をした猫の人形が、縁の手に触れた。
瞬間、酩酊感が身体中に広がって、到着と同時に俺は崩れ落ちた。
「おぅえっ……」
「え、ちょ、大丈夫?」
「だ、大丈夫に、見えてたまるか……おぉううえっ」
クラクラする視界を必死に抑え込みつつ、俺は地面へと横たわった。まじしんどい。酔っ払いすごいな。これ俺は耐えきれんぞ。
「こんな風にめまいと吐き気が凄まじいが、一瞬で転移が可能だ。要するに、同一の遺伝情報でマーキングした人形と、個人とを無理やり入れ替えるんだ。実戦で使う場合は、ダミーで赤のマーキングを地面に施してある。人形はその途中で人格がないために形状を保てず、消失する」
これは説明されてもよくわかんなかったんだが、とりあえず俺は魂が重要なんだよ!という非論理的な結論に達した。縁はそれは理解をぶん投げたと言うんだと怒っていたが、仕方ないと思う。
思想ってだいぶめんどくさいんだよ。
「そういえば、遠足は結局どうなったんだ?あの状況下ではそのままってのが難しくなっただろ」
「あー……あのね、病院に搬送されたことになってる。ミラーハウスでの事故ってことになってね」
「マジかよ」
俺はミラーハウスで全身を挟まれてたことになり、戸谷も同じく。
そういえばあいつ、どうしたんだろうな。そのまま隠居して仕舞えばいいのに。
「事故は事故だが、まあ……クラスメイトの中には台無しにしやがってとか言った奴がいたんで、先生がカンカンよ」
「そうだぞ。名前なんだっけ」
「馬場ちゃんだよ」
「そうだ。馬場は怒ると……こわい」
「何でそこだけ言語機能が麻痺するんだよ。もっとねぇの?鬼のように、とか……」
「ああ、えーっと、適切な表現が見つからなかったんだ。だが、心底怖かった。軽口を叩いた輩が、丁寧語から元に戻らなくなっている」
えっなにその特殊能力。
馬場ちゃん超能力者?
「ま、仕方ないよ。命に関わることだと向こうは思い込んでるからね」
「……ああ、まぁ、実際あれは死んだと思ってたからな」
俺は右の拳をじっと見つめる。あそこまで、届かないとは思わなかった。『あの状態』をやるにしても、セナの協力が必要になる。俺ひとりの一存で彼女の手を煩わせるわけにはいかないから、必然タイミングを狙っての練習となる。
「明日からまた登校になるんだろう?そのうちミスターホスピタルとか名前つくんじゃない?」
「やめろよ!?最初のあれ、食中毒だとか思われてるらしいじゃねぇか!!」
「あはは、今でこそ違うと言えるけど、俺は信じてたよ。……食中毒で下痢だってね」
「普通に風評被害!!」
汚い話をしてると、縁さんがプリプリ怒りながら両者の頭をしばいたので話題が変わった。
「そういや、奈々香は?あいつ、元気?」
「馬場ちゃんと一緒にしかり飛ばそうとしたら、馬場ちゃんの怒りが凄まじすぎて失敗してたよ。割と伝説になってる」
「おぉう……じゃあ奈々香はそう覚えてないのか?」
「みたいだね。ただ奈々香はあの薬には適合性を見せてなかったし、バレても仲間には引き入れられないんだよね〜」
のんびりと言って、井嶋が俺の横に寝っ転がる。すぐに、井嶋は寝息を立て始めた。
「呑気な奴だな」
「ふふ、呑気で結構じゃないか。仕事がなければこういうのも全然ありだ。……面白いことがあれば別だがな」
その眼光の鋭さに、俺はぎくんと肩を強張らせて苦笑いを浮かべた。
こういうところがあるから彼女との付き合いはやめられないのだ。
ちなみに本当に余談だが、戸谷は俺と一日ずらして先に登校してたらしい。
僕のプライドにかけてあなたより先に回復しなければなりませんでしたのでといけしゃあしゃあと言われて、こいつ実はアホなんじゃないかとこっそり思ったのは秘密だ。
ちょっとお絵描きが楽しくなってしまったんだ(´・ω・`)




