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驚いたことってよく覚えてるよね

こんなめっちゃくちゃなのにブクマしてくれてありがとうございます。でも自由にやるね

それはまだ俺が高校に入る前、多分中ニの時。


俺の家系はだいぶ身長が伸びるのが早かった。その頃は成長痛と襲いくる食欲の波に飲まれて伸び伸び育っていた。


その体格のせいで目をつけられたり、奈々香に連れ回されて痛い目にあったりあわされたりしていた。


とある日、俺が道を歩いていると前を歩いていた女性が携帯を落とした。


「おいあんた、これ落としたぞ」

「え!?あ、ほんとだ。ありがとう」


そこから話が弾み、彼女がとある高校の生徒だという話とか、あと色々話した。そう大して覚えてはいない。


しかしそれから一日も経たずに俺の携帯に連絡が入って来た。

「あ、もしもし?昨日ぶり——」

『もしもし桐葉くんかな』

男の声が聞こえて、あ、彼氏かな?と思った。たしかにいそうな物腰だったし。


「彼氏さんですか」

『あ?何寝ぼけたこと言ってんだよ。お前のカノジョだろ?預かってんだよ、返してほしきゃ指定するとこまで来な』

「……あ゛?」


思わず低い声が出た。

いや昨日会っただけで巻き込まれちゃうのかよ、ってかなんで俺がそれで釣れると思ってんのか意味わかんねーし。


「まあ釣れるんだけど」


腹が立った。なぜ昨日一日話をしただけで、彼女が狙われることになるのかわかっていなかった。俺は俺の影響力をあまり重く見ていなかった。

たかが一発殴られたのなんだのって報復のために無関係にも等しい人を巻き込むなんて思っていなかった。


「きちんと手加減したはずだぞ」


到着した頃には、日暮れ間近だった。赤い風景の中にポツンとある空き地。ゴミが捨てられて、ひどく荒れたその場所に、数十人のクズどもがいた。


「よぉ、桐葉くん。俺の名前は佐久間ってんだ」

「へえ、甘そうな名前だな。ドロップ持ってる?」

「ハッ、ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。散々舐めた真似しやがって」


するとその時、目を覚ました女性。

「……ぅ、ここ、は……誰!?貴方達……ゔっ汗臭っ!」

へー汗臭いんだ。

「やめろ!風評被害だ!」

「あ、ご、ごめんなさい。つい本音がぽろっと」

「この女意外と失礼だな!?」


本音がモロリしているが、俺と彼女を取り巻く状況は変わらないままだ。


「っち、この女がどうなってもいいのか!?」

「やめて!私に乱暴する気なんでしょう!リョナ漫画みたいに!」

「しねーよそこはエロ同人みたいにが正しいだろ!?ってかなんだよおもお!!」

「だって……俺、男だしぃ?」


にたぁ、と笑ったその顔はひどく蠱惑的で、なんかエロい表情だった。


「えっっっ」


全員の驚きの声がこだまする。


「いやあ、案外気づかれないもんだなあ。奈々香ちゃんの言ってた通り、可愛いっ!桐葉くんお友達になろ♡僕君みたいなの好みなんだ」


佐久間が慌てて女の子(仮)の股間を弄ってそしてがっくりと肩を落とした。


「まじか……!」

「んー、でも汗臭くなかったらこっちもいいなあ。ねえお兄さん、名前なんていうの?私といいことシよ?」

「ぎゃああああああ」


佐久間たちが逃げようとしたが、俺は一足飛びにその襟首を掴んで地面に引き倒す。

「ひっ!?」

「なあなあオイオイお前だよそこのお前。佐久間さん?」

「な、なんだよ」

「人質とかとってんじゃねぇよ卑怯者」


拳を握りしめて、一発。


「この人数で高々一人の中坊に刃物まで持ち出して恥ずかしくねえの?」


一発。


「喧嘩の前にちょっと面白い会話とかしてんじゃねぇよ」


一発。


「そして最後に——俺とあいつは昨日会ったばっかで彼女でもなんでもねぇよ!!」

「グフッ!?」


一発を叩き込み終えると、ちょっとスッキリした。

「さて、帰ろ」

「あ、待ってよ桐葉くーん!?」


*********


「ってなわけで佐久間とはお知り合いだ」

「なんかすげえ思い出してぞわぞわして来た……男のアレを触るなんて」

「業が深いですな」

「井嶋、あんまりそこは追求してやるな。佐久間はそんでもってなんで元彼女を泣かせたの?」

「なんで元彼女って言うんだよもう違うみたいじゃん!?」

「え、だって振られたって言って号泣してたから……」

「振ってねぇ!プロポーズは自分からって決めてたんだぞそれをあっちが言い出しちゃうからおさまりがつかな……」


いっやーん勢いってこわーい。


真っ赤になっている涼香さんと俺を真っ赤になって睨みつける佐久間。

「誘導尋問か!?」

「今のこれ誘導尋問に聞こえる人いたらヤバイよね、頭が」

「言ってやるなよ井嶋……」


こいつと来たらドMではあるが、気に入らない人間に対してのドSっぷりは目を見張るものがある。何しろ自分がされたいことをするだけでいいのだから。


「それより先に弁解する相手がいるんじゃない?はっきり言って関係ない人間に文句言って大人気ないにもほどがあるよねえ」

「ぐっ……」


俺は最後まで見届ける必要はないか、と立ち上がった。

「井嶋、飲んだならいくぞ」

「え、いいの?」

放っておいてという声が聞こえて来そうだが、俺はあえて顎を一度しゃくった。


「あの、お客様。お会計ですけれど……」

「あっちにいるでかい男に払わせてください。俺たちの分」

「よろしいので……?」

「泣いてたコの彼氏なんだ。ちょっとはいいとこ見せないとね」


俺たちはそうして店の外に出ると、伸びを思い切りして、となりの悪友をちらりと見た。


「井嶋。——スれたか」

「仰せの通り。無用心にもほどがあるけど、どうするのこれ?」

涼香さんの自宅の鍵。可愛らしいマスコットのついたそれを、井嶋が見せびらかすかのごとく左右に振った。

それを受け取ると、ポケットにしまい込む。


「盗聴器を仕掛けられたぬいぐるみの回収だよ。ストーカーがいるんだと」

「うっわ、僕は嫌だけど、まあ仕方がないか。気をつけなよ。……ってことは桐葉の仕事って探偵?」

「ま、似たようなもん」


ちなみに。


居住者の了承を取らずに住居に侵入するのは不法侵入罪ですので、良い子も悪い子も真似しちゃいけないよ。

うっわ触っちゃったばっちい!

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