表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

俺の小指が強すぎて魔王が相手にならないんですが

作者: 白木渚

 ついに、ついに魔王城まできた!

 目の前にそびえ立つ魔王城を目に干渉に浸っていると小指に力が入る。


「お前もそろそろ休む時が来たようだなーーlittle finger」


 そう顔を下に向けながら口を動かすと緊張で震えているlittle fingerを撫で慰める。

 逃げたい気持ちも山々だが皆んなの期待を裏切るわけもなく顔を魔王城に向け引きつった笑顔を見せるように魔王城のドアを蹴る。


「たのもーー」


 ………。気付いてないのだろうか、今度はさっきよりも大きく口を開ける。


「たーーのーーもーーー!」


 …………。あれ? まじで気づいてないの? てか、このまま居留守使うつもり? 顔がさらに引きつる。

 しつこい郵便屋の人が何度もインターホンを押すように魔王城を何度も蹴ってみる。

 ……………。まじでいないのか……。

 魔王城の前半分はほぼ壊滅状態だが誰も出てくる気配はなさそうだ。


「あ〜そんな事しちゃう? もう僕怒っちゃった〜little fingerもカンカンだよ、しちゃっていい事と悪い事があるよね〜〜」


 苛立ちが強くなり足をトントンと地面に叩く。もはや、いるかどうかなんてどうでも良くなってきた。

 青筋が浮かび上がる。

 魔王の祭壇まで行くかと腕を組み指をトントンさせながら前に進む。

(進める道などないが)

 瓦礫の道を歩き前に進むと瓦礫の隙間に小さな光が見える。

 瓦礫を蹴り中を覗くと魔王の祭壇に続く地下への階段がある。

 わざわざ魔王の祭壇ってプレートまで付けちゃって。

 ぷぷっと笑いながら階段を下りていくと魔王の祭壇はここ! というプレートがあるのでドアにかかったプレートごと蹴飛ばした。


「たのもー」

「………フッフッフッ勇者よ、よくここまで辿りついた。さあ、我の魔法のチリになるが良い!」


 待ち構えていた魔王が一呼吸吐きお約束の言葉を口にする。

 上の魔王城より遥かに狭く小さい。そして、薄暗く不気味なオーラが漂っている。

 ここまで辿りつくのめっちゃ簡単だったけどこいつは何をしてたんだよ。


「上の魔王城は飾りか? オブジェクトか? 魔物の1匹もいやしないじゃないか」

「そうだ。飾りだし、オブジェクトだ。ここ、魔王の祭壇こそが本当の魔王城なのだ」

「………え?」


 驚きの事実に驚愕の表情を隠せないでいると魔王はドヤ顔を決めてきた。


「いやいやいや、魔王城逆だろ! どう考えても上の方を魔王城にしたほうがいいだろ! こっちしょぼすぎだよ! お前馬鹿だろ? 馬鹿なんだろ!」


 え? そうなの? そんな顔を向けながら顎に手を当て悩んでいると考えがまとまったのか顔の前に手を合わせその場に立つ。


「勇者よ、上に移動しようではないか」

「さっき蹴散らしたから上はもうないよ」


 しばらくの間ポカンとしていると戦闘モードに切り替えたのか身構え呪文を唱え始める。

 そうこなくっちゃな、俺も同じく戦闘モードに切り替えるために右の靴を脱ぎ捨てて構える。


「……何をしているのだ? 遊びではないのだぞ聖剣をとれ! 勇者よ!」

「………何を言っている。これは俺にとって聖剣扱いだが? ……あ、五本指の指の内どれかわかんなかったのか? ここ、ここだよ、小指が俺の聖剣、little fingerだ」

「いやそれただ英語にしただけじゃん」


 2人の間に沈黙が生まれる。その沈黙を打破する魔王。


「勇者よ、我、この魔王サタンの手によってめされるがよい!」

「…………」


 魔王の冷たい目が向けられる。

 そんな目を向けられてもやりません! そう魔王にテレパシーを送るが魔王は変わらずこちらを見てくる。

 ………はあ、やりますよやればいいんでしょ?

 恥ずかしさ交じりに口を動かす。


「魔王! 我の名はカナト! お前を倒すものだ、覚えとけ!」


 魔王はフフット笑い呪文を唱え、俺にぶつけてくる。

 俺はlittle fingerを振り上げ魔王の呪文ごと魔王にlittle fingerを振り下げる。


「カナトスペシャルっ‼︎‼︎‼︎」


 魔王もろとも当たりが吹き飛び地下が崩壊していく。

 力なく魔王が口を開く。


「勇者カナト流石じゃ、その力に感服いたした。敵ながらあっぱれよ! ただ聖剣が小指じゃなければーー」


 そう言い残しチリとなって消えていった。

 最後の方は聞かなかったことにするよ、魔王サタン。

 埋もれたら出れなくなっちまうな。 

 早く階段上っとくか。

 落ちてくる瓦礫を避けながら階段をぐんぐんと上がり勢い良く出口から飛び出した。

 これで世界は平和か………こ、小指いてぇぇぇ!

 世界は危機をまぬがれても俺の小指は痛みはまぬがれないぃぃぃ。

 小指を抑えながら悶絶する。

 小指を見ながら虚しげに口を開く。


「俺の小指は魔王までも簡単に倒せるのか(激痛はともなうが)」


 普通の人間でいうタンスの角に小指をぶつけた痛みだ。

 涙目になりながらも達成感に満ち溢れる。

 これ以上戦ったら骨折れる………。

 そんな達成感に満ち溢れながらも不吉な予感がしてならない。

 本当の敵は魔物のなんかじゃなく俺の小指なんじゃないかと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ