第1話
「ただいまー」
ガチャ、ギイィィ―――――
鉄錆の擦れる音に鳥肌を立て、「おぅふ」と苦情を漏らすのは毎回のことだ。
『裏野ハイツ』
きっと『うらのハイツ』と読むのだろう。
「ユニットバスはあまり好きじゃない」という理由だけで選んでしまったこのオンボロアパート。その『203号室』、二階の一番隅っこが1か月前から僕の根城のなっている。
家賃は4.9万と。現役大学生、しかも親と半場喧嘩して出てきて仕送りをあんまり貰えていない、貯金命の生活を送っている者にとっては少々お高い宿だが、しかし住めば都というものか。一室の主という称号に酔いしれて、気が付けば1か月。そろそろバイトを探さないと財布と口座が悲鳴を上げている。
パチン、―――――――――
大学から帰ってくるこの時間はいつも夕方で、東に窓があるこの部屋は早々に帳がやってくる。
電灯も今どきのLEDではなく、蛍光灯。しかも僕が入居する前から取り替えていないらしく、その光は非常に頼りない。
ジッ、ジイィ――――――――――……
「……」
田舎の街灯じゃあるまいし、早く換えてくれないかな……
明日土曜だし、大家さんに相談してみよう、と僕は迎えてくれたダイニングで栄養剤と適当なゼリーで夕食を済ませ、奥の寝室に入る。営業中のサラリーマンのお昼か、夏を炭酸飲料のみで乗り切ろうとする中学三年生並に不健康な夕食だが、疲れで食欲がないから仕方がない。
そしてベッド横にカバンを投げ捨て、ベッドに横になる。
低反発が僕を包み込むように迎えてくれる。
「……飯」
どうするかな……、なんて考えているうちに脳内に靄がかかり始める。
それに伴い瞼は徐々に幕を下ろしていき、
僕『中山健太』の意識は帳に飲み込まれた……
最後に
笑えると
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