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5話 レべリングの日々(2)

※2/3一部書き忘れが有った為描写を追加しました。


 日が落ちるのを待って行動を再開する。

今回の目当ては昨晩同様ウサギの巣だ。

臆病な選択だと自分でも思うが、より大型の動物を狙ってその動物が特殊な能力を持っていた場合は目も当てられない。

 その上先日見つけた「フレイム・ホーンベアーの角」の件もある。

熊という時点で勝てる気がしないがその上火属性まで持っている。

スライムである自分との相性は最悪に近いだろう。

たぶん。

 何はともあれ慎重には慎重を期すべきだ。

ウサギの巣の様な小さい穴倉の中であれば熊の様な大型肉食獣の干渉は排除できるのだから。




 そんな事を考えながら森の中を行くと、先日とは異なる位置に空き缶程度の大きさの穴を発見した。

モグラかな?ウサギかな?

今晩の収穫へ心躍らせながら体を細長く伸ばし巣穴へと沈めていく。

 

 ズリズリズリと巣穴の中を行く。

相変わらず暗くて何も見えん。

仮に獲物がいるとすれば最も奥に居るのだろうと構わず進む。


 その無警戒さがいけなかった。

獲物を狙うのは何も自分だけではないというのを失念していたのだ。

顔(?)に触れるはスベスベとしていながらぬらりとした感触。

生前覚えがある感覚。

あれはいつだったか……。

思い出すのは会社での出来事。

昇進した上司が「妻からの昇進祝いなんだ。」と嬉しそうに語っていた姿。

蛇皮の財布。

 それに思い当った時、既に目の前には自分を飲み込まんと大口を開けた蛇の喉があった。

「バクン」

 そんな音が鳴ったような気がした。



 然もありなん。

今まで俺は襲う事しか考えていなかった。

襲う立場の筈が襲われるなど夢にも思っていなかった。

自分以外にも捕食者はいくらでもいるというのに。

だからこうして捕食されることも、その慢心がもたらした当然の報いなのだろう。


 そしてそれは目の前の「獲物」にも当てはまる。

俺の半身いや精々四半身程度の分量を飲み込み満足げにしている蛇野郎。

蛇の喉を見た瞬間、俺は咄嗟に「意識」を後方に持って行き体の一部を切り離した。

おかげで一部は食われた物の大半は無事。

さながらトカゲのしっぽ切りの様にして窮地を脱したの俺は体を巣の外に出し、糸のように細くした体で巣の中をうかがっている。


 俺の体を食いちぎってくれた蛇は満足げな表情ででっぷりと体を膨らませている。

体長は60cm程、元の体の太さは直径3㎝程。

それが今は首から下は倍ぐらいの太さまで膨れ上がっている。

あの状態では巣の主を襲う余力など無いだろう。

消化が終わるまで、どこかで身を潜めたい筈。

つまり奴はこの道を戻って来る。

ここで待ち伏せすれば一方的に奇襲する事が出来る。

幸い相手は先ほどの一噛みで完全にこっちを食い尽くしたと思っているようだ。

闇夜で赤外線を利用して視界を確保する蛇の生態と、スライムという熱量を持たない体が幸いした。

念の為相手のステータスを確認する。


種族 バイトスネーク/Lv8 22/800

職業 なし

体力=15

魔力=3

筋力=15

頑丈=16

器用=3

敏捷=6

知力=3

想像力=4

精神力=6


スキル


赤外線視      Lv10 MAX!

ビッグマウス(物理)Lv10 MAX!


状態異常


満腹



 ……ステータスは高い。

しかし吸収スキルの反則臭い能力を鑑みれば何とかなる範囲だろう。

いくら筋力が高くてもあの体の構造じゃ振りほどくのはまず不可能だろうし。

実際自分よりも筋力が大幅に高かったハンターオウルも骨格と筋肉の付き方の関係だと思うが、振りほどく事が出来なかったのだ。

気になる点は「ビッグマウス(物理)」そして「状態異常 満腹」だ。

 「状態異常 満腹」はそこに自分が収まってると思うと腹が立つがまだ解る。

見た目にもわかる通り、「もう食べられないよ」状態という事だろう。

だが「ビッグマウス(物理)」って何だ!「ビッグマウス(物理)」って!

ギャグか?ギャグなのか!?



 気を取り直して待ち伏せの方法を考えよう。

考えられる方法としては二通り。

一つは近場の木に昇り出てきた蛇めがけて垂直落下する方法。

もう一つは巣穴出口付近に平べったく地面と同化し、出てきたところを虎バサミよろしくからめ捕る方法だ。

前者は奇襲効果が強く、後者は攻撃の確実性に勝ると言ったところか。

そこで先刻の出来事を思い出す。

「襲い掛かろうとして逆に襲われた」この事実が前者を選ぶことを躊躇わせる。

木に登った場合は上下左右前後全てに気を払わなければ、またこちらが襲われる危険性が有るのだ。

逆に大地に平たく広がる場合は極端な話上だけを気にすればよく、鳥類などの生半な相手ならばそのままこちらが捕食できる。

やはり後者の方が良さそうだ。


 可能な限り体を薄く伸ばし大きな水たまりの様に振る舞う。

音から察するに、蛇野郎はもう出口付近まで出てきているようだ。

蛇が出口からどう出て来ても対応できるように、巣穴を中心にしたドーナツ状に体を広げている。

念の為「意識」は巣穴からできるだけ離している。


 ノソリと蛇が巣穴から顔を出す。

緊張感がピリッと俺の脳をかすめる。

気付くな!

俺は祈るように蛇の動きを見つめた。

蛇は「雨でも降っただろうか」と言わんばかりに目を瞬かせ、警戒するように周囲をゆっくりと見渡している。

ふ、と蛇と目が合った。


 瞬間、奴は親の仇でも見つけたかのように、全速力で俺の「意識」に向かって飛びかかる!

反射的に逃げようとするがそこはもう俺の体の端。

もう逃げ場など無い。

目を閉じ、有りもしない両腕で「意識」の前を塞ごうと試みる。

ダメだ!喰われる!

今度こそ本当に!!


 が、いつまでたってもその瞬間は訪れない。

恐る恐る、前を向くと完全にスライムの中に埋まり宙に浮かぶ蛇の姿が有った。

ほっと息をつく間もなく吸収をかける!

目の前の蛇が体を捕らえられ酸素を失いつつあるにも関わらず、もがき続け少しずつではあるがこちらへと向かって来て居たからだ。

必死で吸収を続ける。

薄く延ばしていた体を元に戻し、一層強い力で蛇を締め上げる!

それでもステータスの差は大きいのか、じわりじわりと俺の「意識」に向かってにじり寄ってくるのだ。


 蛇の動きが完全に止まった時、俺の「意識」との距離はまさに目と鼻の先と言っていい位置にあった。

「テッテレー♪」

いつぞやのマヌケなファンファーレが響く。

レベルアップ時に鳴っていたものだ。

それを思い出すと思わず安堵し、全身が弛緩していく。

もう一安心だ。

 気が抜けるとレベルアップの結果が気になってくる。


種族 スライム/Lv2 193/200

職業 旅人/Lv3    2/300

体力=20

魔力=20

筋力=9

頑丈=11

器用=8

敏捷=7

知力=121

想像力=131

精神力=20



スキル


管理者権限/Lv1   293/5000

???

???

吸収/Lv3      46/300

アイテムボックス  1/10




 あれ?

思った以上に経験値の伸びが悪い。

ふと今までの戦闘後の事を思い出す。

思い返してみると今回を除けばレベルが上がったのは全て死体の吸収が終わったタイミングだった。

しかし今目の前にはまだ蛇の死体が残っている。

死体を吸収しきることで初めて経験値を獲得できるのだろうか。

否それだと今回レベルが上がった説明がつかない。

少なくとも敵を倒すだけでも経験値が得られる事は今回の戦闘で証明されているのだ。

 また、「職業 旅人」のレベルだけしか上がっていないのに各ステータスが上昇している。

以前倒したウサギの例からも推測できたが、職業にはステータスに補正が有る事とレベルによって補正幅が変化することが見て取れる。


 そこではたと我に返る。

想定外の遭遇戦で忘れかけていたが、そもそも今夜の目的はウサギの巣の襲撃だった筈。

ならば考察も「蛇の死体」を吸収することも後回しにすべきだ。

吸収には時間がかかるし、何より先ほどの蛇は何も食べたふうは無かった。

つまりこの巣穴には高い確率でウサギだかモグラだかがまだ潜んでいる筈。

どうせ時間をかけて吸収するのであれば、、この巣穴の主も一緒にいただいてしまおう。

 そう思い直した俺は「蛇の死体」をアイテムボックスに仕舞うと、再び巣穴へと身を沈ませるのであった。

お読みいただきありがとうございます。

次回投稿は2/6午前8時を予定しています。


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