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4話 レべリングの日々(1)

 吸収を終え巣穴を出るころには、日が昇り森を明々と照らしだしていた。

雲一つない晴天に一層晴れやかな気持ちになる。

加えてレベルアップでステータスが伸びた事がと心を躍らせる。

21世紀を生きる日本人の例に漏れず、多くのRPGやソーシャルゲームを遊んできた身としては素直に嬉しい出来事だからだ。

それに丸一日以上寝ずに動いていたのに眠気も疲労感も無い。

どうやらスライムの体は睡眠を必要としない様だ。

吸収に時間がかかる事を考えれば、このメリットは大きい。

昨日の戦闘を考えれば一回吸収しきるのに凡そ半日ほどの時間を要すると思っていいだろう。

吸収レベルが上がって速度が上がっていることも考えられるが概ね24時間で2回戦闘できれば良い方だ。

遭遇までに時間がかかる可能性もあるし、運悪く強敵と遭遇し逃げる様な事になれば長時間戦えないという事態も有り得る。

最大レベルが不明な点を加味すれば、レべリングに必要な経験値を稼ぐ時間はどれだけかかるかわからない。

さらに睡眠が必要だった場合戦闘できる回数は半分ほどになってしまうのだからこのメリットを生かさない手は無いだろう。


 さて今日の日中の戦闘だが既に日が昇り始めている為、ウサギの巣穴を狙うのは空振りに終わる可能性が高い。

むしろフクロウなどの夜行性生物を狙って行く方が奇襲しやすく効率的に戦えそうだ。

 早速手近な木によじ登る。

例えは悪いがナメクジの様に木に張り付き、蠕動によって這い上がるイメージだ。

昇る、昇る、のぼ……

「!?」

落ちた。

べちゃっとした音と共に視点が反転する。

幸い痛みは無いが球体のままよじ登るのは難しいらしい。

そこで昇り易い様に球体から半円の筒状に変形し、ゆっくりとではあるが木によじ登っていく。

……今度は落ちなかったようだ。

一番低い枝に到達し辺りを見回すが鳥の巣のようなものは見当たらないし、鳥そのものの姿も無い。

降りて新しい木に登ろうと考えたが、その前に一つアイディアが浮かぶ。


 木の中で最も太い枝に移り、体を枝の先の方に集中させる。

枝から他の木の枝に飛び移るのが目的だ。

昨晩ウサギの巣を襲撃した時には考える余裕も無かったが体を筒状に伸ばした際の長さは5mほどにもなる。

この体の長さを利用すればさながらテナガザルの様に木々を飛び移れるのではなかろうか?

体を勢いよく撃ち出し、向かい側の木に捕まる。

残った体もメジャーを巻き取るイメージで一息に絡め取る。

ガサガサと音を立て木の枝も大きく揺れる。

幸い鳥が飛び立つようなことは無かったが、こんな移動法では獲物に気付かれるし他の大きな獣を呼び寄せてしまうかもしれない。

しかし地上を這うよりも大幅に速いのもまた事実。

次は音を立てない様注意しながら試してみるとしよう。


 そうして幾つか試行錯誤をするうちにほぼ無音で木と木の間を飛び回れるようになった。

途中で何羽かの鳥が逃げ出したがそれはご愛嬌だ。

コツは飛び移った後。

最初はメジャーを巻き取るように一息で飛び移っていたが、ゆっくり体の比重を次の木に移しながら枝の根元に向かって移動することで揺れと音を最小限にまで抑える事が出来るのだ。

その成果に内心ドヤ顔をしていた頃、木の枝に不自然な出っ張りが有るのを見つけた。

目を凝らし念の為ステータスも同時に確認する。



種族 ハンターオウル/Lv3  67/300

職業 狩人/Lv3       81/300

体力=11

魔力=4

筋力=12

頑丈=6

器用=10

敏捷=32

知力=8

想像力=5

精神力=10


スキル


鷹の目/Lv3         81/300


状態異常


睡眠



 フクロウ強ええぇぇ……。

レベルも高いし職業の補正も有るのだろうが物理系ステータスの殆どがこちらより高い。

しかし”状態異常 睡眠”が有る以上先手は取れる。

密着してしまえば高い敏捷値も筋力も生かせないままこちらが勝てるはずだ。

そう自分を鼓舞し相手を起こさない様注意深く、しかし素早くハンターオウルの許へとにじり寄っていく。


 あと50㎝程……もう目と鼻の先と言っていい距離だ。

意を決して一息でハンターオウルへと飛び掛かる!

全身の粘液で相手を一気に包み込み、昨日のウサギ同様口や耳からも粘液を侵入させる。

「ゴポポッ!ゴボッ!」

敵も目を覚ましたのか粘液の中でじたばたともがき始める!

しかし、元々外側から抑えられた翼を無理矢理開く様な筋肉の付き方をしていないせいか何とか抑え切れる範囲で抵抗は留まる。

吸収を発動し、相手から力を奪う。

同時に耳や口等から侵入した粘液も利用して内と外から同時に痛めつけていく。

必死で吸収をかけ続けると、抵抗が弱まり熱もだんだんと失われていく。


「ハンターオウルの死体」


 確認するともうハンターオウルは息絶えていた。

ようやく一息ついたがこのフクロウを消化しなければ。


 さらに吸収をかけ続け消化が終わるころにはもう日が翳り始めていた。

「キンコン♪」

昨晩聞いたものとは異なる音が脳内に響く。

その音を聞きまた何か変化が有るのかとステータスを確認する。



種族 スライム/Lv2 175/200

職業 旅人/Lv2   182/200


スキル

吸収/Lv3      20/300



 おお!

流石に元のステータスが高いだけあって、経験値も豊富だ。

ウサギに比べると倍以上の経験値が入った計算になる。

吸収は発動回数が多いからか、真っ先にレベルが3になった。

職業と俺自身についてもレベルアップ目前だし、今夜の戦闘が楽しみになってきた。


さて日が落ちる頃合いを見計らって戦闘夜の部としゃれ込もう。


お読みいただきありがとうございます。

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