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2話 遭遇そして初めての……

今回精神的に重めな表現を含むため、苦手な方は飛ばして1月24日投稿予定の第3話を読んでいただけると幸いです。

今回の話を読まなくても次の話で軽いあらすじを書くため今後の展開に支障は有りません。

※1/24に一部ステータスの変更とそれに伴う表現の改訂を行いました。

※2/3ウサギを倒した後の心理描写を強化しました。

※3/13ウサギ遭遇時の心理描写を強化しました。

2話  遭遇そして初めての……




 ガサリという音と共に飛び出してきたのはまっ白な一話のウサギ。

想定外の出来ごとに固まってしまったが、それは相手も同様で一瞬空気が固まりかける。

 逃げるか?それとも戦うか?

「キッ!」

悩んでいる内にもうウサギは駆け出していた。

こちらに向かって全速力で駆け出すウサギ。

とっさの事に対応できず渾身の体当たりを食らってしまう。

うめき声を上げようとするもそもそもスライムの肉体では発声ができないのかゴポゴポと音を立てるだけだ。

 衝撃の最中、己の「死の瞬間」がフラッシュバックする。

ぞぶりと差し込まれた刃物の冷たさ。

次いで感じるのは臓腑の熱。

目に飛び込むは自身のしたことに慄く暴漢の姿と飛び出す自分の腸。

失われていく五体の力と、もう戻れないという圧倒的な喪失感。

もう二度と味わいたくない。

 二、三度バウンドを繰り返し意識が戻る。

吹っ飛ばされたのか幸いしたのかウサギとの距離も1メートルほど空いている。

この半端な距離では体当たりしようにも十分な加速が取れないだろう。

ひとまずステータスを確認しよう。


種族 スライム/Lv1

職業 旅人/Lv1

体力=15/16

魔力=16

筋力=6

頑丈=8

器用=6

敏捷=5

知力=121

想像力=131

精神力=17



スキル


管理者権限/Lv1

???

???

吸収/Lv1

アイテムボックス/10


そしてウサギはっと。


種族 ウサギ/Lv1

職業 なし


体力=5

魔力=1

筋力=1

頑丈=2

器用=1

敏捷=6

知力=1

想像力=1

精神力=1



 HPは確かに減少しているがその数値は微々たるものだ。

自分と相手のステータスには大きな差が有り普通に戦えばまず負けないだろうというだけの差が存在する。

落ち着いて行けば大丈夫だ、そう自分に言い聞かせ相手を見据える。

数値上は大差ないが、スライムの体に慣れていないせいかあちらの方がかなり動きが速い。

攻撃方法も「吸収」と体当たり……はできそうにもないから、まとわりついて窒息させるくらいしか思いつかない。


 そんな事を考えているとウサギが後ろ足に加重をかけ大きく跳躍する姿勢を取り始めた。

良いだろう。どちらにせよこちらから追っても逃げられてしまうのだ。

相手の一撃を受け止めそのまま反撃させてもらうとしよう。

後ろに加重をかけ、相手に向かって斜め上方に柱を刺すイメージで体を固定する。

ウサギが飛び掛かってくる!

衝撃が体を揺らす、が今度は何とか耐えきった。

俺はそのままウサギを飲み込もうと体を伸ばしていく。

ウサギも飲み込まれてたまるかと言わんばかりに噛みついて反撃してくる。

がそれこそが好期。

噛みつこうと口を広げたところに腕を突っ込むイメージで体を殺到させる。

ウサギの頭部は瞬く間に俺の体に覆われ口や鼻の中まで詰まっている状態だ。

このままでも遠からず勝てるだろうが、念には念を入れて全身を覆っていく。

 吸収スキルの発動方法が分からない為取りあえず相手からエネルギーを吸い上げるイメージをしてみる。

相手の体に接している面をストローで吸うようなイメージだ。

すると暖かい物が流れ込様な感覚が有り、体当たりや噛みつきで傷んでいた部分から痛みが引いていく。

確認のためにステータスを確認する。


種族 スライム/Lv1

職業 旅人/Lv1

体力=16

魔力=16

筋力=6

頑丈=8

器用=6

敏捷=8

知力=121

想像力=131

精神力=17



スキル


管理者権限/Lv1

???

???

吸収/Lv1

アイテムボックス/10




種族 ウサギ/Lv1

職業 なし


体力=3/5

魔力=1

筋力=1

頑丈=2

器用=1

敏捷=6

知力=1

想像力=1

精神力=1


 予想通り自分の体力は回復しウサギの体力は減少している。


「ゴポッ……」


 体内から息が漏れていく。これは自分の物ではない。

吸収を続ける毎にウサギの体から徐々に熱が失われ冷たくなっていくのが分かる。

このウサギの命が尽きようとしているのを肌で感じ、思わずたじろぐ。

襲われたとはいえ相手は小さなウサギだ。

日本にいたころであれば間違いなくその愛らしさに思わず頬を緩めていた。

その命を奪って良い物だろうかという感情すら鎌首をもたげてくる。

しかしここで見逃せばあの暴漢の様にコイツは俺を殺しに来るだろう。

二度と殺されててたまるかと感情が俺を突き動す。


 そして完全に冷たくなったウサギを見る。


ウサギの死体


 その表示に自分のやったことを突きつけられる。

俺は生き物を殺したのだと。

この愛らしくふわふわとしたウサギをただの死体に変えたのだと。

思わず吐き気を覚える。

有りもしない臓腑が引っくり返るかと錯覚する強烈な不快感。

背骨に氷柱を突っ込まれたかのように全身が泡立つ。

目の前は暗くなり、有りもしない胃にズシリと重みを感じる。

深呼吸をし気を落ちつけようとするが体はスライム、息など吸えるはずもない。


 動転した心が時と共に落ち着いてきたころ、ふと心から言葉が這い出る。

喰わねば。

俺がこのウサギを食べなければこの死も命も無駄になってしまう。

誰に言われるでもなく自分の言葉に突き動かされ、或いはその言葉に操られる人形の様にぎこちなく吸収を始めた。

 義務感と焦燥感に突き動かされ吸収を続ける。

加速度的に強くなる吐き気と、それに呼応するように強くなる義務感と焦燥感。

その二つがせめぎ合いながら俺を責め立てる。

どんなに不快感が吐き気が強くなろうとも吐き出すことも許されずただひたすらに吸い続けた。



 時が経ちウサギの姿が完全に消え去る頃、日の光を受け輝いていた景色はもう、光一つ差さぬ闇の中へと沈んでいた。

 重い表現を含むにも関わらず読んでいただきありがとうございました。

現代人からの転生である以上「生き物を殺すことへの葛藤や迷い」は書かねばならないと思い今回のような話を投稿した次第です。

お付き合いいただきありがとうございます。

評価ブックマーク感想等頂けると幸いです。

誤字の指摘等も大歓迎です。

※2/3表現を強化したら催眠音声みたいになった(笑)

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