9話 レべリングの日々を経て(2)
今回短めです。
昔であればガサガサと音を立てながら草むらを進んだだろう。
今はもう違う。
敏捷が上がった結果か跳ね回る距離もスピードも当初とは段違い。
木の幹から幹へと跳び回りながら効率的に森の探索を進めていく。
しかしステータス確認もしながらくまなく探しているのだがなかなか獲物が見つからない。
まさか狩りつくしたか?
ここ数日狭いエリアで積極的に小動物を狩り進めていただけあって局所的に空白地帯ができていてもおかしく無い。
そろそろ別のエリアに足を延ばす事も考えたほうが良いだろう。
そんなことを考えながら木々の合間を飛び回る事数十分。
ふと視界の端に茶色い塊のような物が写る。
トラベリングディア―/Lv2 112/1000
職業 旅人 /Lv5 131/500
体力=37
魔力=11
筋力=25
頑丈=27
器用=8
敏捷=40
知力=5
想像力=7
精神力=11
スキル
アイテムボックス 6/15
状態異常
仮眠
……鹿だ。
ステータスを見れば何とか勝てそうな部類。
幸いにも周辺に仲間の姿は無い。
身体構造的に一度背中に張り付いてしまえば勝てるのではなかろうか?
ステータス上の敏捷値では勝ち目がないがあの体では樹上の獲物は狙えまい。
もし不利な状況になっても樹上へと逃げ去ってしまえば後はどうとでもなるだろう。
負けが無い事を悟った俺は音を立てない様慎重且つ素早く鹿の胴回りへと忍び寄った。
体に触れないように少し隙間を開けて腹巻の様に鹿の胴体を覆っていく。
地面についている部分を除いて覆いかぶさった俺はその体をギュッと縮め、鹿の胴体に巻きつき吸収をかける。
瞬間冷たさに驚いたのか鹿が飛び跳ねる!
しかしそれは元々想定済み。
地面から離れたことをいいことに、地面に接していた腹側にも粘膜を伸ばし完全に胴体を覆う。
体から違和感が取れないのにパニックを起こしたのか鹿はそのまま走り出してしまう。
顔も無いのに思わず笑みがこぼれそうになる。
揺れる胴に張り付きながら吸収をかけていくと目に見えて鹿の動きが衰える。
はじめは力強かった動きも今ではどこか頼りない。
鹿はようやくスライムにまとわりつかれているのに気が付いたのか近くの木に体当たりを掛ける!
痛ぇ!
ガッツリ体力を持って行かれた感触が有ったが構わず吸収をかける。
吸収で回復するというのもあるがそれより先に相手の体力を削り切ってしまわないと。
もう一度これを食らえばこちらも危ない。
よたよたと助走を付けようとする鹿に吸収をかけ続ける。
二歩三歩と歩む足がガクリと折れ、地に膝をつく。
鹿の死体
ようやく相手の体力を削り切れた。
鹿の死体をアイテムボックスに収納し辺りを見渡す。
確か、アイテムボックスの中身が有ったはずだ。
以前ウサギを倒した時はこちらの体内に落ちていたが今回は相手の方が大きかった。
周囲に落ちている物をくまなく探す。
ウツボカヅラ(Lv2)の魔石
トレント(Lv5)の魔石
マタンゴ(Lv9)の魔石
取りあえず魔石を三つ発見。
これもアイテムボックスに投入。
にしても鹿らしいのかラインナップが草食系だ。
反対の草むらに目を凝らすと鈍い輝き。
錆びたナイフ
使い古しのショートソード
サンダーディア―の角
……役に立つかは分からないがこれも拾っておこう。
鹿の角とかどうすればいいのかはさっぱりわからんが。
刃物も何れ使う事が有るかもしれない………あると良いなぁ。
どっちにせよまだアイテムボックスには空きがある。
まだ日が高いため検分と吸収は後回しにし、探索へと戻るのであった。
お付き合いいただきありがとうございます。
評価ブックマーク感想お待ちしております。
尚今週から別作「ありふれたボーイ・ミーツ・ガール~遥か未来で~」も連載しております。
ジャンルとしてはSF青春物になるのでしょうか。
本作とは雰囲気も登場キャラクターの数もガラッと変わり、ヒロインもちゃんと出ますので是非合わせてお楽しみいただければと思います。↓URLからジャンプできます
http://ncode.syosetu.com/n8854dc/
なお次回投稿は2/27午前8時を予定しております。




