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くらうん《リライト前》  作者: 永ノ月
2章 高校封鎖編
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TARGET7 渋谷第二高校

やあ皆さん。GSO戦闘員、東東京エリア担当の二条にじょう未来みきです。

私は今、とある少年と戦っています。

入学初日からですよ?誰かつっこんでほしいくらいですよ、ええ。

何故こうなってしまったのか、それを今朝の出来事から振り返りたいと思います。


今朝はいい日差しを浴びて起床、寝間着のまま一階へ降りると、せみゆーさんが朝食を作って待っていてくれた。

ありがたく栄養満点の食事を摂り、部屋へ戻って着替える。


制服はグレーのブレザーに紺色のカーディガン、それに真っ赤なネクタイを結ぶ。

これもまたグレーのスカートを履き、膝上の丈になるよう腰の部分を折ってブレザーで隠す。

ボタンをきっちり閉め、鏡の前へ立つ。

しばらくラフな格好をしていたため、若干の違和感はあるがとてもよく似合っている、と自分に言い聞かせて、鞄片手に部屋を出る。

真っ先に私を捉えたせみゆーさんは、表情をふにゃふにゃに崩した。


「うはぁ〜〜!超可愛いっすよ、似合ってますよ!写真撮っていいっすか?!」

「ありがとうございます、でもこれから毎日見れるから写真は…」

予想以上のリアクションを見せ、驚いていた最中に、二階から隼人センパイが降りてきた。

寝ぼけ眼にボサボサの髪、まさに寝起きという風情を晒していた。


「おはようございます!今日から学校なのです!行ってきまーす!」

「お、おお…」

パタパタと小走りをして家をあとにする。

「…入学式って10時からだよな?」

「はい、確か」

「まだ8時半だよな?」

「…気合い、入ってましたからねぇ…」

瀬見が苦笑いを浮かべ、時計を見る。

呆れながらも隼人はふらふらとコーヒー豆へと手を伸ばす。





学校までは徒歩で15分程の近場、私はわざと、ゆっくりと歩いて学校へ向かった。

10分くらい経ったところで、同じ制服を着た生徒達の大群に遭遇した。恐らく電車で通学してきた人達だろう。

話しかけようと思ったが、咄嗟に声が出ずにその場を流してしまった。


事前に学校から送られてきたクラス番号を確認し、16HRホームルームへ着くと、既に何人か机へ鞄をかけて座っていた。

「おはようございまーす!」

持ち前の明るさで元気よく挨拶をすると、その場にいた全員が返してくれた。

『おはよう!』

『おはようございます!』

『おーっす』

自分の席を確認し鞄をかけると、既に右隣の人が座っていた。

前髪は眉毛にかかる程度の長さで、しかし全体的に私よりも長めの茶髪の女の子だ。黒フレームの落ち着いた印象のメガネに…胸は、負けてるな…

「初めまして、二条 未来です」

「は、初めまして…たちばな結衣ゆいです…」

第一印象は大人しそうな可愛らしい娘…さて


分析眼アナライズアイ

別に悪用じゃないですし?別にたまたま発動してしまっただけですし?

オーラの色は淡いピンク色、淀みは無く透き通っている。ここまでは一般的と言える。

だが、ある一つの《共通点》を見つけてしまった…

「きゃっ?!二条さん…?」

グイッと頭を机の高さまで押し下げ、声を潜めて問いかける。

「あなた、能力者なの?」


これも、オーラで分かってしまう。

言葉では言い表せないが、必ず同じ周波があることは知っている。

「…どうして分かったんですか?」

「大丈夫、バラしたりしないわ。私も能力者なの」

「ええ?!」

思わず結衣が悲鳴のような声を上げ、周りの視線が集まる。

「変な声出さないで!!」

「す、すいません…」

泣きそうな顔を浮かべ、頭を下げる。

うーん、可愛い。


「私以外の能力者と会うのは初めてだったので、つい…」

「そうだったの、じゃあ非戦闘員?」

先日紅麗から教わった単語を使ってみる。

「はい…私のは《治癒ヒール》という希少な能力らしくて…」

「嘘っ?!凄いじゃん結衣ちゃん!!」

思わず立ち上がって叫び、またも周りの視線が集まる。

「に、二条さん…静かに…」

「あっすいません…」


治癒ヒールの能力、これはたいへん希少な能力の一つである。

回復系の能力はランクの対象外となっており、戦闘員ガーディアンになることもない。

治癒系能力者部隊に自動配属され、病棟への勤務だけでなく、精鋭は世界各国の戦争や紛争に赴き兵士達の傷を癒す仕事までやってのける、いわば最も世のため人のためとなる能力だ。

戦闘員ガーディアン候補としか会ったことのない私にとっては、相当珍しい人物だった。

「凄い…治癒系能力者に会ったの初めてなんです、よろしくね結衣ちゃん!」

「は、はい…えっと、未来ちゃん?」

うん!と笑顔で頷き、一つの友情を育んだという事実に、私は早速浮かれていた。


結衣と談笑をしていると、左隣の人間が机へ腰掛けた。

それに気づき、すかさず話しかけようと半回転すると、がっしりした体格の大きな少年。髪は結衣よりも明るい茶髪に、サイドは刈り上げられている短髪。身長はせみゆーさんや隼人センパイより少し小さいけど、ガタイがとにかく凄い…

「おはよう!私は二条 未来です。あなたは?」

水色の瞳をこちらに向けると、目線は下へと逸れた。

「…?えっと…」

「お前、何者だ?」


え?と不思議そうな顔を浮かべると少年は立ち上がって、私の首根っこを掴んで外へ連れ出した。

「え?え?」

「み、未来ちゃーん!」

慌てて結衣が追いかけてきたが、掌を向けて止める。

「私はもうダメだ…お前は先に行け!」

「何が?!それ言いたかっただけだよね未来ちゃん?!」



連れられてやってきたのは屋上、風が少し強く吹き、髪がなびく。

「何なんですか?いきなり連れられてきたんですが、告白ならお断りしますよ!」

「ふざけるな、お前の腰に武器が仕込まれていることは分かっている。だから何者だと聞いたんだ」

なるほど、それでさっき目線を下に…それにしてもよく気づいたな。普通なら気づかれないと思ったんだけど…やっぱり鞄に入れとくべきだった。

「あー私はですね…」

「さては密国してきたテロ組織のメンバーか?!」

「ち、違います!私は…!」

「問答無用、《石化ストーン》!!」


そして、今に至ります。

どうでしょう?理由は明確、一つは私をテロ組織の人間だと勘違いしてること。そしてまったく他人の話を聞いていないこと…参っちゃいますね。

「もしもーし、私は決して怪しい者ではありませんよー?」

次々と襲いかかる地面から生えてくる岩の針をひらりひらと躱しながら言葉を飛ばす。

「嘘をつけ!」

が、彼の頭に血が上る一方でてんで話は進まない。


「結衣ちゃん、あなたからもお願いします!」

「は、はい…えっと、一旦お話を…」

「あ?」

鋭い眼光が結衣へ向けられた途端、涙目になってしまう。

「ナンデモナイデス。」

「結衣ちゃん!諦めないで!!」


再び目線は私を捉える。

「武器を抜け、俺と正々堂々勝負しろ!」

「一方的に武器を取らせずに攻撃する人間が言う台詞ですか?!」

一瞬の隙をつかれ、背後から鋭い岩が迫る。

「未来ちゃん!」

「ちっ…」

瞬間、腰に仕込んでいたトンファーを一つ抜き、カチッとボタンを押して40cmほどに伸ばし、振りかざして岩を砕く。

逆の手も抜き空中へ投げる、宙を舞ったトンファーの握る位置を正確に掴んで構える。

「未来ちゃん…凄い!」

結衣は感心してパチパチと拍手を送る、だが今はその声援に答えている余裕はない。


この男、ガタイからして近接型かと思いきや中距離も対応できる…なかなか強い。

石化ストーンと言ったか…初見の上に相手は倒しちゃいけない。

なかなか難易度の高いクエストですなぁ。

ていうか、せっかくペアがいるのにまったく共闘してないな…っと!

「ぼやぼやしている暇はないぞ!」

「あーもう!すみませんが気絶させにいきますよ!!」

岩男の懐へ走る、左右から飛んでくる岩を一つ一つ砕きながら進み、あと数メートル…


「《境界ボーダー》」

女性の声が聞こえたと感じた瞬間、目の前へ真っ白の壁が現れる。

透けた壁の奥では岩男が襲いかかってくるが、壁に弾かれてしまう。相当強力だ。

「あなた達、1年生ですね?入学初日からケンカ、しかも能力者同士とは…見逃せないですね」

先程の声とは違う、ハキハキとした女性の声が聞こえる。

ふと屋上の入口を見ると、2人の女性が立っていた。

ネクタイの色を見る限り…2年生と3年生か。さて、どう弁解しよう…?

考えていると、3年生の黒く長い髪をもった女性が、ゆっくりと歩み寄る。

「あなたもしかして…二条さんですか?私は嘉瀬かせ めぐみ、渋谷第二高校の生徒会長です」

せ、生徒会長?!


こうして私の高校生活は、波乱の幕開けとなりました。

「いいよいいよ〜制服似合ってるよミキちゃん!じゃあこっちのセーラー服も着てみようか。ああいいねーどれも似合うよミキちゃん〜〜よーしじゃあ脱ごうk」

「調子のんな」

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