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くらうん《リライト前》  作者: 永ノ月
2章 高校封鎖編
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TARGET12 隠された想い

奇襲は見事に成功した。

私はと、八束先輩、梓弓先輩の順に敵陣へ突っ込んだ。

そして、敵の目の前には、私だけが残り、二人は姿を消した。

「残りは…隠密ステルスで隠れちゃったかな?面倒だねぇ〜」


長身の金髪の男、アーサーは緊張感の無い声で嘆く。

「で、唯一僕達とまともに戦える君が残ったってことかな?」

私へ問いかける際に、剣に手すら添えずに、悠長に構えている。

ただ分かることは、彼が桁外れに強いことである。

「もちろん、全員同時だって相手しますよ?」

「ハハ。君、ちょっと気に入ったよ。名前は?」

「GSO所属、二条 未来です!」


素早くハンドガンを取り出し、アーサーへと銃口を向け、放つ。

しかし、彼は気づきながらも襲いかかってくるレーザーを避けようともしない。

まるで未来でも見えているのかという程に、悠々とした構え。

そしてアーサーの右耳すれすれを通過してゆく。


「おいアーサー!今のが当たってたらどうするんだ!」

中学生くらいの少年、ショーンがまだ高い声でアーサーへ怒鳴る。

「大丈夫だよ、全然殺気無かったし…それに今確信した。彼女の最大の弱点は、『人を殺せない』」

わずかに顔が強ばったところを見逃さず、アーサーは確信したように笑顔をつくってみせる。

「じゃあショーンちゃん、ウェスカーくん。殺されないから思い切り殺っておいで」

「あの生意気なアマ…ぶっ殺してやる!」


ショーンが叫び、彼は走り出すと、また信じられないスピードで、約10mあった距離を一瞬で詰められる。

ショーンの剣をハンドガンで何とか受け止め、ガチャガチャと擦れ合う音を奏でる。

「よくもこの俺の剣に…穴開けてくれたなぁ?!」

剣に入る力が増してゆくの感じた。


そろそろ、分析をさせてもらおう…

分析眼アナライズアイ

瞳がが金色に弱く輝き、ショーンは思わず距離をとる。


さて、一番厄介なのは、彼の能力が分からないこと。身体強化フォースではないことは解った。筋肉増強などはまったくされていなかった、むしろ細すぎるくらいで、どこからあんなパワーとスビードが出ているのか検討がつかない…もし能力が高速移動クイックなら納得はいく。だが彼の能力には引っかかるところがある、それは…

「こんなときに考え事か!」


レオの声とともに岩山が足下に現れるのを感じ、咄嗟に躱す。

レオは隣に立ったショーンが、強く歯軋りしていることに気づく。

「いいかレオ…あいつは俺に殺らせろ。このままじゃ俺のムシが収まらない…」

言葉を察した私は、すかさず挑発をかける。

できるだけ冷静さを奪うように、嫌なところを丁寧に毒づいてみよう。


「まあ、まだ私は本気を出してませんけど、そこの少年くらいは、本気出さなくても勝てそうですねぇ…」

「…レオ、あいつと一対一でやらせろ!!」

「やめろ、そんなことをすれば相手の思うツボだ」

「そんなの関係ねえ!俺の強さを分かってるだろ?!」

レオは諦めたのか、一歩下がって溜息をつく。

未来はハンドガンを片手に、腰からトンファーを取り出して構える。視線はショーンを射抜いたままである。

「いいかショーン、彼女の厄介なのはあれだ。妙な武術を使ってくるから注意を…」

「確かあれ、日本発祥の武器なんだろ?おもしれえ…叩き斬ってやる!」

またも驚くべきスピードで走り、近接戦が始まった。

大味に振りかざされる剣を、未来は腕を覆うように伸びたトンファーを巧みに流して、斬撃を往なす。

「ちっ…ちょこまかと!」

「能力は厄介ですが…単調な動きで助かります」


挑発を挟み、少しずつ校舎へと戦場を移してゆく。

レオはそれに手を出さず、腕を組んで眺めていた。

「二条 未来…やはり手強い相手だ。それにしても、校舎へ入ろうとしてるメリットはなんだ?仲間の援護か、それとも…」


校舎へ足を踏み入れると、一心不乱に背を向けて走る。

「バカが!ガラ空きだよ!!」

しかし、左脇からハンドガンを取り出し、正確に剣を弾く。

「ぐっ…くそっ!」

「あとは…」

そして、彼を振り切って二階へ駆け上がり、教室へ姿を隠す。


四階に愛先輩と結衣がいる、生徒達は六階…ここで食い止めるしかない。一か八かだけど、やる価値はある!


階段を登る荒々しい足音とともにショーンは息を切らせて二階へたどり着く。

「あの女…どこいった?!」

「ここですよ〜」

その言葉に顔を向けると、目の前に教室の机と椅子が宙を舞い、ショーンへ襲いかかる。

「そんな小細工に、やられるかぁ!!」

両方を一太刀で振り切ると、机に塞がれていた世界が視界へ映る。

ハンドガンを構えている、今の体制からでは避けることは不可能。

「チェックメイトです」

正確に放たれたレーザーはショーンの右肩、そして左太ももを貫く。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


無様に崩れ落ち、肩を抑えるショーンへ近づきながら言う。

「どうして避けなかったんですか?あなたのスピードを持ってすれば、余裕だったはずですが?」

ただ唇を噛み締めるショーンの代わりに、自らの仮設を披露した。

「それは、あなたの能力は高速移動クイックではなく、加速アクセラレーションだから。初速が速くなかったので途中で確信しましたが、成功です」

「ひ、卑怯だぞ…!」

「卑怯?戦場において卑怯という言葉は存在しません。勝つことがすべて、例え目を潰そうが両脚をぶった切ろうが、勝った方が正義です」

「くそっ…くそっ!!」


少し離れたここまで歯軋りが聞こえ、表情は痛みと悔しさで歪んでいる。

ゆっくりと少年へ歩み寄りながら、落ち着いた声色で問う。

「あなた達は何のために、戦いを挑んだのですか?」

ショーンに答える気力は無いのか、心無しかさっきより顔は青くなっているように見える。

「お、俺達は…」


保護能力者ウェイスト達を支援するためだ」

背後から聞こえた声に咄嗟に振り返ると、拳を振りかざすレオがいた。

優しそうだった彼の目は据わっており、冷淡に私を捉えている。

それをギリギリで躱すが、すかさず足技が展開され、横腹へ入った足の方向のまま廊下へ吹っ飛んで倒れる。

かなり決まってしまい、苦悶の表情が浮かんでしまう。


「油断したな、敵は一人じゃないことを忘れたか。その顔だとまた甘い話でもしていたのだろう」

それだけではない、既に敵として佇んでいるレオの姿を信じたくなかったのもまた、気持ちを沈ませている。


「レオ…もしかして、誰かに操られているの?誰かに弱みでも握られたの?それなら私が助けて…」

しかし遮って、レオが言う。

「だから人が殺せないんだ、平和ボケした戦闘員ガーディアンなど俺の敵ではない。ショーンとは違って、誰であろうと全力で倒す主義だからな」

「っ…なら私も、レオを…友達を全力で止めます!」

「やってみろよ」


レオの手の動きとともに床から岩山が姿を現し、行く手を阻まれる。

「室内まで岩があるんじゃ、どこに行っても彼の本拠地ホームだわ。一体どうすれば…!!」

「大理石でできた床が功を奏したよ、この学校でよかった」

「やめてよ!どうしてそんな…そんな言い方するのよ!」

立ち止まって、必死にレオへ語りかける。


「そんな台詞聞きたくない…私は結衣と、レオと仲良く高校生活を送りたかったのに…どうしてこうなっちゃうのよ!!」

するとレオも、手を止めた。

「悪いな、俺にそんな気は、最初から無かった」

両手をぐっと握ると、無数の岩山が私を取り囲んだ。そしてレオの視界から、消えた。

「後悔があるとしたら…お前らと、もう少し仲良くなりたいと思っちまったことだな」

岩の中で串刺しになっているであろう少女を頭に浮かべ、一歩ずつ近づく。


「…い。」

「なに?」

岩でできた壁の向こうから声がする、すっかり聞き慣れた甲高い声。

「絶対、許さない!」

トンファーを握り締めた未来が、岩山を砕いて現れ、同時に伸びた先端がレオを狙う。

「バカな、あの攻撃を避けきったのか?」

「攻撃は最大の防御、ですよ!」

軌道をすへて視認し、当たる先端だけを一つずつ、トンファーで砕いた。またも土壇場の賭けが成功した。

「ちっ…バケモノめ…」

レオは口元が緩んだのを感じた、本気の勝負に心から喜んでいることは、そのあとに気づいた。

「いいぜ、高校でできた最初の友人と凌ぎを削るのも、悪くない!」

「ハァァァァアッ!」





校舎から聞こえる騒がしい音に、アーサーは退屈を感じていた。

「いいねぇ〜楽しそうで。こっちも、早くかくれんぼを終わらせたいんだけど…」

わざと大きな声で呟いてみた、しかし周りからの反応はない。

「どこに行っちゃったのかな?まさか逃げたとか…」

「今だ!」

その言葉に振り返ると、かなり遠くの、校門から姿を現した八束、梓弓は…結界を張るアプトへ襲いかかった。

「ありゃ、そうきたか。でもいっか、だって

アプト君も強いし…」

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