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5、戻ってきてなかった日常

「どうしてそういつも眠そうなワケ?もっとシャキとしなさいよシャキッと!すっごくイイ天気だし!」

「ウルセー。疲れてんだよこっちは」


 次の日の朝。家まで起こしに来た陽と並んで登校していると、朝っぱらからなんともワケのわからない理論を押し付けられる。 


 昨日の放課後も生徒会活動の名の下に桐咲有華は存分にオレをコキ使って下さった。

 その疲労がまだ抜けておらず、陽の言う朝の清々しさなど楽しんでいる体力的余裕は無い。


「生徒会の仕事ってそんなに大変なの?嫌なら辞めればいいじゃない」


 だがそんなオレの事などおかまない無しに、隣を歩く幼馴染の九重陽はしつこく話し掛けてくる。


「そんなことしたらあの女……何をするかわからない……怖ろしい……」

「あの女って副会長さんが?美人で頭もイイし、誰にでも優しいって有名じゃない」

「それがヤツの怖ろしい所なんだよ……」

「……ワケわかんない」


 それはオレも同感だと言いたいところだが、これ以上は話すのも面倒なので口にしないでおこう。それに、どうせ奴の本性を話した所で信用してはくれないだろうしな。


 それから昨日観たテレビがどーとか、今度好きなバンドのライブがあるから行きたいとか、陽のする他愛の無い話に適当に相槌を打ちながらタラタラ歩いていると校門が見えてきた。


 そして、門に立つ教師に軽く挨拶を返し、昇降口で靴を履き替え教室へ向かおうとすると……


「おはようございます。楠木昴くん」

 階段を上ろうとした所で近頃よく耳にする声に後ろから呼び止められた。

「お、おう」


 フルネームで呼ばれることに慣れておらずそれだけで少し驚いて、振り返りながらなんとも情けない返事をしてしまう。


「おはようございます。九重陽さん」

「えっ私?!おはようございます!副会長さん!」


 オレを呼び止めた声の主、桐咲有華はすぐそばにいた陽にも丁寧にお辞儀をしながら挨拶をする。それに対して陽も驚いたような声でぎこちない挨拶を返している。陽は校内の有名人である桐咲有華の存在を知っていたが、まさか桐咲有華が自分の事を知っているとは思わなかったのだろう。


「副会長だなんて堅苦しい呼び方をされなくて結構ですよ。同級生ですもの、名前で呼んで頂けると嬉しいです。よろしければ有華と」


 気を遣わない様にと言っている時点で相当気を遣わせていると思うのだが……


「えっ?あ、アリカ……さん?」

 ほら、やっぱりまだ緊張している。

「はい」

「……アリカさん!」

「はい」


 だが一方が名前を呼び、呼ばれた方が返事をするというまるで異文化間の人間の初めての会話の様なコミュニケーションを取ると、当の本人同士は互いに笑顔で、陽に至っては何故か頬を赤らめてまでいる始末。


「えへへ。じゃあ私の事も陽って呼んで欲しいな」

「わかりましたわ。陽さん」

「うん!アリカさん!」


 今度はお互いに名前を呼び合って笑ってるよ……なんだかちょっと怖い。

だが、この短い時間で随分と打ち解けた様だな。この二人。


 そして二人の様子を若干引き気味に眺めていたら桐咲有華が突然話し掛けてきた。

「そこで見ている楠木昴くん。よろしかったら今、受け取りますよ」

「ん?あぁアレか、ちょっと待ってろ」


 オレから桐咲有華に渡すもの……逆であれば引導という言葉がすぐに思い浮かぶ。一瞬年貢か?とも考えたがこの場に於いては生徒会日誌しかないと考えを改め、鞄からノートを取り出して手渡す。


 昨日の放課後、ほとんど脅迫くらいの感じで真面目に書いてくるようにと念を押されたので、一応今回は昨日の活動に関しての事をちゃんと書いておいた。


「……確かに受け取りました」


 中身にサッと目を通すと桐咲有華はノートを自分の鞄にしまう。どうやら問題無かった様だ。


「なぁに、今の?」


 そのやりとりを近くで見ていた陽が疑問を口にする。果たしてそれはオレと桐咲有華のどちらに向けられた疑問であるかわからなかったが、ただの活動記録でしかない生徒会日誌をそれ以外の物として説明する方法も無いので素直に答えようとすると――


「交換日記です」


「「えっ?」」


 桐咲有華の思わぬ一言に陽とシンクロしてしまう。ちょっと待て桐咲有華!なんだよ交換日記って!?


「私と楠木くん二人だけの……」


 そんでどうしてちょっと恥ずかしがってる感じ出してるの!?


 桐咲有華の思わぬ発言に驚いて言葉を失っていると、陽が明らかな疑いの眼差しを向けてくる。


「ちょっと昴、どういう事?」

「ちげ―よちげーよ!そんなんじゃないって!」


 何故陽さんは若干怒っていらっしゃるのでしょうか?そしてどうして私は慌てて言い訳しているのでしょうか?あれは生徒会日誌だから!ただの生徒会日誌!……ですよね!?


「あら?陽さんは楠木くんの事をお名前で呼ぶのですね?」


 陽にいきなり問い詰められ、今にも理不尽な暴力を受けそうになっていると、桐咲有華の唐突で、何でも無い質問が横切った。その前に先ほどのあなたの発言の説明を求めたいのですが?


「へっ?あぁ……うん」


 陽もまさかこのタイミングでこんな事を聞かれるとは思わなかったのだろう、一瞬だけ驚いた素振りを見せたが、聞かれた事に対してハッキリと頷きながら答えている。


「そうですか……」


 すると桐咲有華は腑に落ちたのか落ちていないのかよくわからない相槌を打ち、そのまま続けた。


「お二人は仲がよろしいのですね。とても素敵な事です。それではお二人とも、またお会いしましょう」


 そう言って丁寧に一礼すると、桐咲有華は一人階段を上っていった。


「アリカさん、またねー」


 陽はそう言いながら桐咲有華の背中に手を振って、オレはその背中を無言で見送った。


 一体桐咲有華は何を思ってあんな質問をしたのだろうか。まぁおかげで陽も生徒会日誌に関する一連の問題発言の事を忘れてくれたようなので良しとしておくか……。


 いつまでも突っ立っていても仕方が無いのでオレと陽も自分たちの教室がある三階へと階段を上っていく。


 すると二階に差し掛かったあたりで陽が話し掛けてきた。


「で、さっきのなんなのよ?交換日記って?」

 そう簡単に忘れるはず無いですよね。ニワトリじゃないんですから……


「だから生徒会日誌だって言ったろ」

 それでも、いくら追及されても事実は事実でしかないのでオレにはこう答える事しかできない。


「そういう名前の交換日記なんだ?ふーん……嫌がってたクセに随分とお楽しみなのねぇ?」


 だがオレの言い分に陽は納得いかないようだ。


 それからも歩きながら「ちゃんと説明してよ」と言われ続けたが、同じ答えしか持ち合わせていない為、途中から黙って陽の言葉を受け止めていたらいつの間にか教室に着いた。


 よし。教室に入ってしまえばどうせ扉のすぐそばにたむろしているバーバリアン達に声を掛けられてこの話もうやむやになって終わるだろう。


 そんな期待と共に勢いよく扉を開け、陽より先に教室に足を踏み入れる。


 すると……


「おぉ!我らがロックスターのご登校だ!」

「ヒョー!マジハンパねぇ!」

「またやってくれよ!ライブ!」


 教室に入ってきたオレの姿を確認するや否や、突撃してきたのはやはりバーバリアン三兄弟だ。計画通り……!


 と言いたいところだが、何やらこいつら聞き捨てならない事を言ってやしないか?


「え?お前ら何言ってんの?」


 思った疑問をそのまま口にする。すると、バーバリアン達は申し合わせたようにまたしても赤坂、岩崎、中島と順番に話す。


「いやー最高だったぜ!プッ!」

「新しいロックスターの誕生を見たぜ!プッ!」

「鳥肌やばかったぜ!色んな意味で!プッ!」


 それぞれ吹き出しながら言い終えると、今度は一斉にギャハハハ!とタイミングを揃えて大笑い。朝も早よから元気な三人であるが、オレには何がそんなに可笑しいのか理解できない。


「だからその……どういうこと?」

 またしても思ったままに疑問を口にすると、笑い過ぎて目に涙を浮かべている赤坂が涙を拭いながら説明してくれた。


「観たぜ、新入生歓迎会の映像。いやー出来れば生で観たかったが映像だけでもかなりやばいなアレは!」

「なん……だと……?」


 新入生歓迎会ってまさか……


「あれ本当に校歌か?あんなイカレた校歌聴いた事ねぇぞ!」

「お前軽音部の先輩にどんな脅迫されたんだよ!」

「……お前ら、あれ見たのか?」

「「「うん」」」

「な……あれって一年しか観れないんじゃないの?」

「知らねーの?歓迎会って言っても部活紹介的な意味もあるから当日観れなかった人向けに撮影してるんだよ、あれ」

「知らねーよ……ってオレ、そんなにやばかった?」


 とりあえず映像の中のオレが大変な事になっているのはコイツらの様子から伝わるのだが、その時の事を覚えていないので逆に質問してしまう。


「自分の事なのに覚えてないのか?まぁそれっぽくて良かったんじゃねーの?」

「あの感じなら元々軽音部の部員って言われても違和感はねーな」

「でもアレは……プッ!」


 三人は言い終えると、またしてもワザと合わせているかのように、同じタイミングで再び爆笑する。


「そんなにアレだったの!?全然覚えてねーからわかんねーんだよ!」

 そんなオレの必死の叫びも三人の笑い声に掻き消される。

「だからどういうことなのよ!?生徒会日誌って!」


 そして陽!このタイミングで混ざってくんな!つーかまだその話引っ張るのかよ!


「もう勘弁してくれぇえええええええええええ!!!!!!!!」


「「「おぉ!!これがあの伝説のシャウトか!!!!」」」


 どうにも収集がつかなそうな現状を嘆くように叫ぶと、バーバリアンの三人も拳を振り上げて叫んだ。


……この様子だとオレは大分やらかしたっぽいな。


 その後、休み時間に問題のライブの映像を自分でも確認したのだが、画面に映っているのは本当に自分なのか、自分でも疑わしい……というか、疑いたくなるようなオレの姿だった。


 あの映像を見た生徒は意外に多いらしく、校内を歩いていると見知らぬ生徒からも「あっ、パンクの人だ」なんて指差されるようになってしまった。そう呼びたくなるのもわかるが、せめてその呼び方は止めほしい。それだと毎年お中元の季節になると現れるハムを届けに来る人みたいだから。


 それにしても、今までは全くそんな事は無かったのだが、このたった数日で学校のどこにいても誰かから指差されてしまうようになってしまった。それもどちらかと言うと悪い意味で。こうなってしまうともう、教室の隅で楽しくやっていただけの平穏な日々はもう戻らないかもしれない。


 それもこれもどれもあれも、卒業式で桐咲有華に目を付けられた事から始まった事で、出来る事なら時を戻して真面目に先輩の卒業式に出席し直したい。いや、もっと遡ってクラスでのジャンケンで勝つまでやり直したい。どうしてもそんなことばかり考えてしまう。


 だけどそんな事が叶ったら、映像で見た大島達軽音部や時折映る聴衆たる新入生が楽しそうにしていた事も無かった事になってしまうのかと思うと、オレ自身がその時の事を無かった事にしてしまうのはオレ自身がしてはいけないと、そう思う事もある。

 


 そして放課後。またしても教室を出た所で桐咲有華に腕を掴まれ、名も知らぬ生徒達に後ろ指さされながら生徒会室に連行される。


 いらぬ注目ほど鬱陶しい事はないので、気を紛らわせる為にも桐咲有華に話しかける。


「そういえば歓迎会の時に言ってたよな?オレを生徒会に入れたもう一つの理由がなんとかって……教えてくれよ」


 軽音部の演奏が始まる直前、そんな聞き捨てならない事を言い出したので詳しく聞こうと思ったのだが、いきなり手を引かれ、そのままステージに転がり出てしまったのだ。


 ここまで結局聞きそびれてしまっていたのだが、最初に言われた時からずっと気になっていたのだ、オレを生徒会に入れたもう一つの理由を……そしてそれを既に話したと言う事を。


「さて?何の事でしょうか?記憶に御座いませんが……」


 だが桐咲有華はシレっとした顔で覚えていないと言い放つ。少しの間も置かずに答えた当たり、本当は覚えているのだが誤魔化そうとしているに様にしか見えない。


 ならば、これは追求する以外にない。


「つーかちゃんとた理由があるって事は、この学校の生徒に相応しくないとかなんとか言ったのは何だったんだ?」

「それも事実ですよ」

「あ!今『も』って言ったろ!てことは別の理由もあるんだな?これは推薦された人間として知る権利があるはずだ!教えろ!」


 揚げ足を取るという姑息な手段を取っている事は承知しているが、未だに生徒会役員になった事には納得していないのでここはなりふり構っていられない。


「廊下で騒がしくしないで下さい。どうせあなたに説明してもお分かり頂けないでしょうからこの件に関しては発言を控えさせて頂きます」

「てめぇ逃げんのか?ズルいぞ!」

「だから静かにして下さい。ほら、皆さん見ていますよ?恥ずかしくないのですか?」


 桐咲有華は歩く速度を一切緩めず、そしてオレの方を見向きもしないので完全にこの話をうやむやにしようとしているようだ。


「じゃあ静かに聞くから教えろ。今更見られてるとかどうでもいい」

「本当に口の減らない人ですね……そうだ、言わなくても私の気持ちはわかるのでは?どうぞご自由に心をお読み下さい」

「この前ちゃんと言わなきゃ伝わらないって言ったのはお前だろ?」

「別に、私はあなたに伝える気はございませんので」

「……てめぇも相当口が減らねぇ奴だな……」


 何を言っても結局相手にしてもらえず、最後はオレの小言を無視して桐咲有華は歩くスピードを速める。


 そのまま腕を取られたまま進み、桐咲有華がいきなり立ち止まったと思ったらそこはもう生徒会室の扉の前だった。


 制服のポケットから鍵を取り出し、解錠するとそのまま部屋に入る桐咲有華。突っ立っていても仕方がないので遅れて部屋に入ると、何故か桐咲有華は扉のすぐそばでこちらを向いて立っていた。


 まさかそんな所にいると思わなかったので、思いがけず急接近してしまう。


「な、なにこんな所で突っ立ってんだよ。早く座れって」


 少しでも動けば身体と身体がぶつかってしまいそうな距離感。それが恥ずかしくて部屋に入って右奥の、桐咲有華の指定席を見ながら言う。


 だが桐咲有華はオレの言う事など聞かず、何故か逆に近付いて来たではないか。


「なんだよいきなり!近い!寄るな寄るな!」


 そして、その大きな瞳で真正面から、至近距離でオレを射抜くと……


「こういう事ですよ。もう一つの理由」


 そう言って、妖しい笑みを浮かべながらいつもの席に向かって行った。


「……いや、どういう事だよ……」


 桐咲有華は何故か得意げに言い放ったが、一体何がもう一つの理由だったかなんて全くわからんのだが……前に一度話したとも言っていたけど全く思い出せないし……。


 もうこの話は一旦忘れる事にしよう。このまま生徒会にいればいつかわかる時が来るかもしれないし……そんな事を思いながら桐咲有華の座った対角線上の席に腰を下ろす。


 すると同時に、生徒会室の扉の方からコンコンコンと数回音がした。


 それにすかさず反応した桐咲有華がどうぞと声を掛けると、失礼しますと言いながら何やら困り顔をした一人の女子生徒が入ってきた。


 生徒会以外の人間……即ち桐咲有華と実に不本意ながらオレ以外の人間がこの部屋を訪れる理由は一つしかない。


「こんにちは。あのー……手伝って欲しい事があるんですけど……」

「こんにちは。もちろん、どんな事でもお手伝いさせて頂きますよ。だって私達は、友達ですから」


《私達》という言葉を妙に強調して言うので視線を送れば、バッチリ桐咲有華と目が合ってしまう。その何か含みのある笑顔……これは今日も面倒な事に巻き込まれてしまいそうだ……


 あの後、思った通りに《挨拶のその先運動》の名の下に色々とコキ使われ、疲労を引きずったまま帰宅。そして食事や入浴など諸々を済ませてベッドに横たわり、昨日と同じように思い出して生徒会日誌を開く。


 汚い字で『思っている事はちゃんと言う』と書かれたページをめくり、一番新しいページを開くと、オレが昨日書いた隣のページには桐咲有華からこう返事が書かれていた。


『昨日は進路指導室の資料整理ご苦労様でした。それにしても今日は随分とお疲れのようでしたね。』


 一体どの口が言って……いや、この場合はどの手が書いていやがると言うのが正しいか。とにかく、疲れているのも何も全部お前のせいだろうが。チクショウ……弱みさえ握られていなければこんな目に遭う事も無かったのに……


『でも、友達の力になる事が出来るって素敵なことでしょ?』


 友達……桐咲有華や《挨拶のその先運動》を提唱したいつかの生徒会長の言う所では挨拶を交わせば誰でも友達との事だが、果たしてそれだけで本当に友達と呼んで良いものだろうか。  


 そういえばその事を桐咲有華に言ったらすげぇ怒っていたよな。見た事も無い様な恐い顔で。


 それだけじゃなくてもアイツ、ちょいちょい学校中の人間から言われている完璧な優等生とは思えない態度や行動を取る事があるよな。この日誌に関してもそうだけど。奴の本性を見れば憧れる人間なんていなくなると思うのだが……オレ以外の人間には本性を隠しているってことか?いや、何が奴の本性かなんて知ったこっちゃないけど。


 オレだけが知っている桐咲有華か……知らなかった方が良かった気がするのは気のせいか?


『もっと沢山の素敵を私がこれからも感じさせてあげるから覚悟しておくように。またマシュー先生に抱っこされないように今日は早く寝ることね。』


 それにしてもオレの嫌がる事をピンポイントに突いてきやがる。折角忘れていたのに今ので全部思い出しちまったじゃねぇか……マシューのぬくもりを。


『それと、明日からあなたの事をクズノキくんではなく、間違えて(すばる)と、下の名前で呼んでも許して下さいね。あと、これからは特別に私の事を有華と呼ぶのを許可します。ご希望なら様を付けても構いませんよ。』


何をいきなり言い出して……って、そもそもクズノキってのが間違っているんだが。それにどうして名前を呼ぶのに許可がいるんだよ。どういう神経しているんだ?しかも様付けって……誰が呼ぶかよ。


 にしても一体何の宣言なんだこれは?まぁアイツの考えている事なんて本人の口から聞いたとしても理解できなさそうだから気にしないでおこう。


横になりながら日誌を眺めていたら段々と瞼が重くなってきた。まだ日付も変わる前だが今日はもうこのまま寝てしまおうか……


『それでは、おやすみなさい。』


「はいはい、おやすみ……って……」


 文章の最後に今の状況に対してピッタリな言葉が書いてあり、そのあまりの自然さに何も考えずに挨拶を口にしてしまい、自分で言った事に自分で恥ずかしくなる。


 独り言とはいえこんな事を口走ってしまうなんて……ここ数日、桐咲有華や陽に口うるさく挨拶の事を注意されていたからだろうか?いや、やっぱり疲れているんだ……これはもうこのまま寝てしまおう。そう決意して部屋の電気を消す。


「やべ……今日の分の日誌を書かないと明日桐咲有華に怒られる……よな……だけどもう……眠過ぎ……」


 目を閉じる寸前に大事な事を思い出したが、もうこれ以上何かを成す体力は残ってない。


 まぁ桐咲有華に怒られるのももう慣れたからな……っていつも怒られてしかいないか。だから大丈夫。 目覚まし時計のセットもしていないけど……陽が起こしに来てくれるから大丈夫。だから寝てしまおう。そうじゃないと……明日のオレが大丈夫じゃない。                 

最後までご覧いただきありがとうございました!もしかしたら続きが・・・あるかもしれません!それを読みたいと思ってくれる方がいたら幸せです!

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