花のような思い出
初の短編です。
恋愛……だと思います。
「睦月何してるの?」
「ん~?何も」
私は、二日 睦月。
放課後の教室にいた。
学校があったわけではなく、自主学習に来ていた。
第一今は冬休みだ。
「月葉、いいの?」
「何が~?」
まったりと返事をするのが私の親友の月葉 詩織。
何事もマイペースにこなす。
「大好きな彼氏が校門のとこで待ってるよ」
「うそ!!じゃあ、先帰るね。バイバイ!」
教室から飛び出す。
バタバタと足音が遠ざかる。
私は、教室に残り窓の外を眺める。
月葉は彼氏と付き合い始めて2週間で、まだ日が浅い。
毎日幸せオーラを醸し出してる。
私は彼氏なんて欲しいとは思わないけど。
でも、月葉が幸せでいてくれるならあの彼にも感謝したい。
月葉が帰ったのを見届けてから私も教室を後にする。
階段を降り、下駄箱へ。
「あ、ちょうど良かった。睦月、助っ人やってくれない?」
クラスメイトのバスケ部、佐倉 優希だ。
私は、どの部にも所属していないためよく助っ人として呼ばれる。
特に家に帰ってもすることはないので断らない。
「いいよ。更衣室、開いてる?」
「うん。お願い」
更衣室へ行き、体育着に着替える。
そういえば、今日は男女バスケ部の練習試合だって言ってたっけ。
私は、運動が得意だ。
勉強も嫌いではないけど、運動の方が好き。
「おまたせ!」
「睦月来たから交代!紫下がって」
「はい!」
16点差かぁ。
3ポイント決めればいけるかな。
「お疲れ~」
「うん。お疲れ」
「睦月、すごかったよ!ありがとう」
「女子で3ポイントなんて私、睦月以外に見たことないもん」
「そうかな。ありがとう」
練習試合は、私たちの学校の勝利だった。
これで、私の助っ人は終わり。
「女子もすごかったみたいだね~」
「あ、そのこでしょ!3ポイント打ちまくってたの」
男バスの部長海星 輝と宮谷 結斗。
後ろにもたくさんの男バスの人がいた。
「睦月って言うんです。運動神経がすっごいよくて」
「紫……そんなことないよ」
「いや、男子だったらうちがもらいたかったよ」
「部活には入ってないの?」
「はい。いい部活がみつからなくて」
バスケとかも嫌いではないが毎日となるときつい。
やっぱり家でゆっくりしてる時間が欲しい。
そんな思いから私は部活に入っていなかった。
「新年会と打ち上げ同時にやらない?」
「折角男女勝ったもんね」
「じゃあ、私はこれで」
帰ろうとしたとき腕を掴まれた。
「睦月ちゃんもおいでよ」
「そうだよ!睦月がいたから勝てたんだし」
「いや、でも悪いし」
「いいからきなさい。みんな言ってるじゃないの」
女バスの部長。
部長……先輩に言われたら仕方がない。
「じゃあ、少しだけ」
「どこで打ち上げするんですか?」
「駅前に新しくできたビルの最上階。あそこ、俺の親父がやってるんだ」
部長のお父さんはあの有名な……しかも社長ですか。
最上階ってことは夜景がきれいだろうな。
部長は後輩に呼ばれて大変そうだった。
でも、みんなからとても慕われている。
人気者。
その言葉がよく当てはまる人だった。
って、何で部長が気になってるの?
なんで、部長のこと考えてるの?
部長がどこにいるか探してしまう。
部長から目が離せない。
家に帰った後もまだ部長のことを考えていた。
もう家に着いたかな。
今、何をしてるかな。
部長のことを考えずにはいられない。
そんな気持ちのまま私は月葉に電話をかける。
『もしもし』
「月葉、今日バスケ部の助っ人したんだけど――」
私は今の気持ちを伝えた。
このよく分からないあやふやな気持ちを。
「月葉、何?この気持ち」
『んー、睦月は先輩のことが好きなんじゃない?』
「すすすす好き!?私が先輩のことを!?」
『絶対とは言わないけどさ。私はそう思ったって話』
私は先輩が好き……。
これが好きって気持ちなんだ。
「ど、どうしたらいいの?」
『どうしたらってやっぱり告白じゃない?』
こ・く・は・く!
告白したら何か変わるのかなぁ。
『でも、次に会えるのは休み明けだよね。自習できるのも今日までだし』
「ううん。新年始まってすぐに会える」
『え、何で?デート?』
「いやいやいやいや。バスケ部の新年会に誘われたの」
何言い出すのこの子。
いまどきの若い子は恐ろしいわ。
『チャンスじゃん!その時告白しちゃいなよ』
「……したほうがいい?」
『もちろん』
「分かった……。がんばってみる!」
『がんばれ!応援してるよ!』
「ありがと。じゃあ、またね」
「おやすみ」
ベットに入り瞼を閉じる。
瞼を閉じると思いのほか早く眠りにつくことができた。
「お母さん出かけてくるね」
「気をつけて」
「はーい」
私は駅に向かって歩き出す。
1月ということもあり、道には雪が積もっていた。
周りを見ながら歩いているとちょうど駅前に着いた。
ビルの前には先輩が立っていて、私に向かって手を振っている。
「あけましておめでとう、睦月ちゃん」
「おめでとうございます」
「じゃあ、入ろうか」
私と一緒にビルの中に入る先輩。
ビルの中は白がメインで天井にはシャンデリアが輝いていた。
「エレベーターはこっち」
指をさしながら案内してくれる。
嬉しいんだけど、先輩も一緒に入っちゃっていいのかな。
「もしかして、私最後ですか?」
「そうだよ。……あ、でも、気にしないでね。まだ集合時間前だし、みんなが早いだけだから」
エレベーターを降りると目の前には大きな扉。
その扉の前には男の人が2人おり、先輩が声をかけると扉を開けてくれた。
「「「「「あけましておめでとう」」」」」
「おめでとうございます」
入ると同時にパーティーが始まった。
だけど、私はあることに気付く。
私以外、みんな正装をしていた。
この空間に合うように。
「来て早々悪いんだけど、睦月ちゃん隣の部屋で着替えてきてくれる?」
言われるがまま私は隣の部屋に行く。
部屋の中は全てドレスだった。
私はたくさんのドレスから一番心をひかれた藍色の地に大きな白いリボンがついているものを選んだ。
着替えはしたものの……。
恥ずかしい。
違うものに着替えなおそうとしたその時、部屋の扉が叩かれた。
「睦月ちゃん決まった?入るよ」
いや、入ってこないで。
そんな願いもむなしく扉が開く。
私は咄嗟にドレスとドレスの間に隠れる。
「睦月ちゃん?」
部屋に入ってくる。
私の隠れているところの前に立ち
「見つけた」
私の腕を掴み立たせる。
「何で隠れたの?」
「みんなと違って私には似合いませんから」
「そんなことないよ。すごくよく似合ってるよ。可愛い」
と、先輩が言う。
真顔で言われると余計照れる。
私は当然顔を赤める。
先輩を見ると先輩の顔も赤かった。
「あんまり見るなよ」
その顔は反則だと思います。
先輩の照れた顔はとても可愛かった。
今なら……。
そう思ったとき、先輩が私のことを真っ直ぐみた。
「あのさ……俺、睦月ちゃんのこと好きなんだけど付き合ってくれない?」
「な……んで……」
「なんでって初めて見たときから気になってたんだ」
先輩が私のことを……?
突然のことすぎて思考が追いつかない。
「いつから?」
「今年……じゃなくて、去年の3月から。そのときの女子の助っ人として来てたでしょ」
確かに3月頃にも助っ人をしていた。
でも、そんな前からだったなんて――。
「ずっと好きで、目の前でしゃべれて本当に嬉しかった。だから、俺と付き合ってください」
「私で……いいんですか」
「もちろん」
「よ、よろしくお願いします」
思わず涙があふれる。
本当に付き合えるなんて思っていなかったから。
先輩から告白してもらえるなんて思っていなかったから。
「泣かないで」
「わたっ……私も大好きですっ……」
幸せすぎてもう死んでもいいと思った。
よしよしとやさしく頭をなでてくれる。
「敬語やめような?」
「……うん」
「それともうひとつ。俺は先輩だけどその前に輝だからな?輝って呼んでくれ」
「輝……」
「そうそう」
私に無邪気な笑顔を見せる。
「2人ともまだー?」
ぞろぞろとバスケ部の人たちが来た。
「睦月、すっごい可愛い……って何してたの?2人とも顔真っ赤だよ」
「あ、告白した?」
優希が私たちをさして言う。
続いて結斗が輝に言う。
輝のこと知ってんだ。
「結斗、言うなよ」
「ふられちゃったの?」
「ふられてねーよ」
「じゃあ、おめでとー」
ノー天気に言う。
私が輝をふるなんてあるはずがない。
「睦月と部長付き合ってるの?」
「さっき……」
「そうだよ。俺が告白したの」
輝が言う。
はっきりと言い切った。
「おめでとう!」
「よかったねー」
みんなが祝福してくれる。
嬉しかった。
ピルルルルルルル
私の携帯が鳴る。
「ちょっとすいません」
みんなから少し離れて電話に出る。
相手は月葉だった。
「睦月、今どこ?」
「駅前の新しくできたビル……」
「分かった。今行く」
それだけ言って切られた。
すぐにかけ直したが繋がらなかった。
「友達がこっち向かってるらしいのでちょっと行ってきます」
「俺も行くよ」
「じゃあ、私も」
「俺もー」
みんなが次々という。
部長はあきれたように
「もう、みんなで行こうぜ」
そんなこんなで全員で玄関に移動。
70人はくだらないから足音がすごい。
外に出ると当然のことながら寒かった。
なので、みんなで玄関ホールで待つことにした。
しばらくして月葉が来た。
輝やバスケ部の人をみて驚いていた。
「もしかして、今日新年会だった?」
「うん」
「ごめん、邪魔しちゃって。どうしても今日中に渡しておきたくて」
月葉は持っていた紙袋を渡してきた。
中を見ると手袋とマフラーが入っていた。
「前、出かけたときずっと見てたでしょ」
「うん。ありがとう。でも、どうして?」
「どうしてって、今日誕生日でしょ」
「「「「「え」」」」」
輝たちも驚いていたが私自身も驚いていた。
言われて見れば今日は私の誕生日。
二日 睦月。
1月2日生まれ。
私の家族はみんな2日生まれで名前で月を表している。
「誕生日だったの!?プレゼント用意してないよ!先に言ってよ!」
「珍しい名字だと思ったら単純だった。早く聞いておけばよかったね」
「自分でも忘れてた。でも、今日は最高の誕生日だよ。輝に好きって言ってもらえた日だもん」
そう、今日は最高の誕生日。
初めて好きになった人に告白された日。
「良かったね、睦月」
「月葉のおかげだよ。ありがとう」
「睦月、誕生日おめでとう」
「ありがとう、輝」
「じゃあ、私たちからの睦月へのプレゼントは部長ってことで」
爆笑に包まれる冬の日。
私はこの日を忘れない。
月明かりが雪を照らす。
雪がひとつひとつ光を放ちお花のよう。
一面のお花畑。
真っ白なお花たちは私たちのこれからの人生のようだった。
友達の誕生日にあわせ投稿いたしました。
私自身、恋愛経験がないので分かりにくかったかも知れませんが最後まで読んでいただきありがとうございました。