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第九話 一時の休息

 森を進む事1週間。

 その間にゴブリンに襲われる事数回。

 出来るだけやり過してはいたが、戦闘になることも多かった。


「森はね、比較的魔物の住処になっていることが多いのよ。それにケースリーはライド王国の辺境地帯だしね。まだ未開の森といってもいいから気をつけるのよ」


 この1週間でパステルから、この辺の地理や魔物の種類を教えてもらっていた。

 パステルは元冒険者でランクは低いがそれなりにやっていたそうだ。


 何故奴隷になったかと聞くと。


「その内容を教えるには、まだラルスには男女の機微は早いから無理ね」


 と窘められた。

 どうやら男女間のトラブルが奴隷落ちの原因なようで、俺に話せないようだ。

 男女の愛憎劇は子供の俺には早いと言うことと納得し、それ以上は聞かないことにした。

 兎に角、パステルは培った冒険者の経験を生かして、俺達を守ってくれている。

 パステルの経験がなかったら、俺達はとうに死んでいたかもしれない。

 

 今の所、魔物との戦闘はさして脅威ではない。

 これはパステルが、相手を先に見つけるからであり、決して戦闘が楽だとは誤解していはいない。

 先に相手を見つけ、奇襲することで戦闘が此処まで有利になるとは思っても見なかった。

 俺だけだったら、魔物との遭遇戦が殆どで今のような余裕は無いだろう。


 後、森を進むに当たって長距離の移動は困難だ。

 何よりも食料を持参していないため、食事が出来ないと力も出ない。

 食べなければ餓死してしまうのがオチだ。

 だから出来るだけ森の恵みを利用する。


 兎に似た魔物など食べれる肉は倒して確保。

 木々に実る果物を取り、食料にする。

 肉も果物も見知っていなければ、どれが食用か判断付かない。

 その点でもパステルの知識は大いに助かった。

 俺の【鑑定】では食用かどうかは表示されることはないのでありがたい。


 そして、食料の中でも一番苦労しているのが水だ。

 水がなければ人は生きていけない、亜人も妖精族も一緒なのだ。

 果物の果汁で水分を補給出来るが、水そのものがどうしても欲しくなる。


 水魔法が使えれば、そう言った事も解決できるが生憎そんな便利な魔法は誰も持ち合わせてい無い。

 森に入り、日が昇ると水を探して移動する事が多い。

 運よく湧き水を見つけた時は皆で大喜びした。

 

 鼠の皮は暇があれば蓄えていたので沢山ある。

 俺は【アルキメイト】で皮の水筒を作り、予備も含めて水を入れる。

 100個は作っただろうか、水の入った水筒をアイテムBOXに放り込んでおいた。


 食料になる肉や果物もアイテムBOXに放り込んでいる。

 このアイテムBOXだが、中に入れたものは劣化しない。

 5歳の時、投擲で鼠を仕留めたときから確認してある。

 神にもらったチートBOXだし、劣化しないのは当たり前なのだろう。


 俺の奇妙なスキルとアイテムBOXに付いては、皆に説明はしておいた。

 アイテムBOXは比較的使用者が多いようで、俺も使えるからといって不思議には思われなかった。

 生まれ持って持つ物も多く、ここぞとばかりにアイテムBOXは十分に活躍させている。


 問題は【アルキメイト】だ。

 【ラーニング】も持っているが、どう説明しようか悩んだ挙句。

 畑仕事でセフィリアのために石を加工していたら出来る様になったと説明。

 

 細かな部分は自分でも解らないと、子供の姿を利用して強引に納得させる。

 イリスとセフィリアは凄いと簡単に納得していたが、パステルは怪訝な顔をして考えこんでいた。

 だが、何か納得したようにアレから何も言わなくなった。


 これが森に入って1週間の出来事だ。


 ようやく俺達は落ち着けそうな場所に辿り着く。

 少し小高い山の岩壁が聳え、岩棚が幾重にか階段のようになっている。

 その岩棚の1つには岩壁に窪みがあり、洞窟とまでは言わないが隠れるに最適な場所があった。


「ここで暫く様子を見ましょう。皆疲れたでしょう、休んでいいわよ」


 パステルの指示で、俺達は心底休める事に喜んだ。


「母さん、此処大丈夫?」


「絶対ではないけど、隠れるには良いわ。後見晴らしもいいから襲撃も気付きやすいしね」


「パステルさん、休んだ後何をすればいいですか?」


「そうねイリスは食事の用意かしらね、セフィリアはお手伝いね」


「「はーい」」


 イリスとセフィリアはこの1週間で自分の出来る事を出来る時にするようになった。

 生きて行く為に努力する事を、本能で知ったのかもしれない。


「ラルス、串とか枯れ木を出しておいてね」


「はい」


 言われた通り調理に必要な物を出す。

 拾っていた石で串を作り、肉や果物を切る包丁も作成した。

 枯れ木は歩きながら拾い集めた物で、森の中では比較的集めやすい。


 火をおこす準備を始める。

 これはぶっちゃけ力仕事だ。

 火魔法も無ければ、ライターすらない。

 だから木を使った、原始的な方法を取る。


 まいぎりと言われる方法で、木の板に棒をこすり付けるのだが、紐を使って棒を回すのだ。

 棒先には丸い遠心力を生む板を取り付け、別の短い棒の両端に1本の紐をくくりつける。

 紐の中央を、擦る棒の上に開けた溝に挟み、くるくると上下に短い棒を操作する。


 俺は、早速火を起こすべくクルクル棒を回して摩擦を大きくしていく。

 次第に煙が上がり、火種が出来てきた。

 落ち葉を集め、燃える火種に息を吹きかけ落ち葉に飛ばす。

 少しずつ燃え広がり、落ち葉が燃えたので枯れ木を投入。

 暫く空気を通すように枯れ木を組めば、焚き火の出来上がりだ。


「おおお、お兄~焚き火~♪」


「ありがとうラルス、後は見ておくわ」


 火が起こると、セフィリアははしゃぎ、イリスは食事の準備をしだす。

 休憩も短いが、必要なことは先にしておいた方がいい。


「じゃあ後はお願いするよ」


「ええ、任せて」


「やっとく~♪」

 

 2人に後を任せ、俺はアイテムBOXから剥ぎ取った武具を取り出す。

 魔物で武具を装備していたのはゴブリンだけだ。

 他の魔物は、猪ぽいのや兎みたいなので装備品はない。


 並べた武具を前に、早速新しい武具を作成する。

 まず、パステルにはロングソードを作成した。

 イメージを固め、使い勝手がいいように真っ直ぐで幅も均一な物を。

 束は長めに両手で握れる長さに作り上げる。

 【鑑定】をつかい出来栄えを見る。


 武具名:無名のロングソード

 強化値:+19

 攻撃力:+395

 属性値:無

 【一般的な騎士が使う刀剣の一種。製作者はラルス】


 上出来だ。

 これならパステルの使い勝手もいいだろう。

 

 次に俺には再度小太刀を作る。

 前の分はパステルの予備として持っていてもらう。

 2回目なので比較的イメージも早く、出来栄えも良い。


 武具名:無名の小太刀

 強化値:+31

 攻撃力:+391

 属性値:無

 【東方の島国で発達した刀剣の一種。製作者はラルス】


 少し強化値が上がっている。

 作れば作るほど強化値が上がるのかもしれない。

 2度目なので、小太刀は確認しただけで次に移る。


 ナイフの補充だ。

 20本は作ったが、全部使ってしまった事と、回収しても痛んで使い物にならなかった。

 その為、鉄製のナイフは一度の使用が限界と諦め、数を多く確保しておく事にする。

 

 小太刀の様にいい物を作っても、紛失したんでは勿体無い。

 使い捨てと割り切り、数を作っていく。


 防具に付いては食事の後にしよう。

 サイズをしっかりと把握しないといけないだろうから。

 ゴブリンの着ていた皮鎧を中心に、再構築する事を考える。


 ナイフを作り終える頃には、食事の準備は出来ていた。

 串に刺した肉もいい加減に焼けている。

 皆で集まり、串焼きの肉を齧りながら話し合う。


「暫くは此処で様子を見ます、食料や水の確保は全員で移動しましょう。下手に分かれて何かあったら駄目だしね。危険な場合は直ぐに逃げる事。ここで落ち合うのが基本だけれど、ここも危ないと解ったら違う場所を目印にします。今はまだ違う場所は指定できないけど決まれば直ぐに覚える事。いいわね」


「「「はい」」」


「見張りだけど、必ず交代で行うわ。私とセフィリア、ラルスとイリスね。力を均衡にするから此れが良いと思うわ」


「「「はい」」」


「最後に、生き抜く為にも皆に訓練を行います。少しでも生き延びる可能性を見につけて欲しいの。いいわね」


「「「はい」」」


 こうして、パステルの指導の下、この森で生きていく術を学ぶ事になった。

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