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ラーニング(改訂版)  作者: ペンギンMAX
白銀の円盤編
62/67

第六十二話 焦りと焦燥

 ウセル共和国首都ゲーリング。

 その共和国を動かしているのは10人の評議委員だ。


 商人を中心に、議会が国政を決め、其の方針に従い国家の運営を行う。

 一見議会制民主主義に見えるが、政治や文化が未発達な此の世界では、只の合議制が大きくなっただけの形態である。

 10人の評議委員も、ウセル共和国において有力な商人や武人が、己の力を背景にその地位に付いているに過ぎない。

 

 一応、評議委員の交代は議会の承認という形をとるが、実際は財力の低下や新興勢力で力が増した者が自然と交代してくる。

 特に商人の場合は、議会に食い込む事で国家の公共事業を左右できる利権が伴う為、相当熾烈な裏工作が行き交う。

 その裏工作を制した面子が、この評議会で牽制を振るっているのが現状だ。


 ゲーリングでの評議会は、商人だけで構成されている訳ではない。

 建前上、6人の商人と4人の騎士団長が議会を構成している。

 商人だけでは内政と外交は出来ても、軍事では他国に遅れをとってしまうからだ。


 其の為、軍事面での協力者として金に物を言わせ取り込んだ騎士団が幾つかある。

 その騎士団の中でも、特に有能な騎士団に限り評議委員を勤めさせている。

 ただ、あくまでも騎士団は商人たちの護衛的側面が強く、国政には口を出す事はあまりない。

 其の証拠に議員対比を5体5にしないのも、此の国に対してウセル共和国が商人の国であると認識するよう、内外に知らしめる為だ。

 

 そんなウセル共和国を左右する評議委員の中でも、ちょっと変わり者の男が居る。

 3ヶ月前からこの国に入り込んだラルスに、特に目を付けた男がそうだ。

 其の名をカスパル・バッハシュタインという。


 彼は評議員となってまだ日が浅い新座者だが、代々評議員の一角を担う商家の跡取りであった男だ。

 先代の評議委員であり、バッハシュタイン家の当主ブルーノ・バッハシュタインから家督を受け継いで現当主になり3年目となる。


 カスパルがラルスに目を付けた切欠は、至極些細な出来事からだった。

 常に報告される様々な情報の中に、奇妙な冒険者の記述を見た事が始まりだ。


 記述、それはあらゆる情報を報告書にまとめて提出されるカスパル専用の諜報活動の成果だ。

 商売において、情報は最も大きな利益を生み出す武器となる。

 だから此の国で、商人はあらゆる情報を欲する。


 町の流行や、人気の食材。

 果てはどこぞの夫婦の喧嘩内容まで、ありとあらゆる内容が逐一報告書で上がる。

 ともすれば何の役にも立ちそうにない情報でも、必ず必要な時が訪れる。

 だからその機会を逃さず、有効に使う為にもカスパルは報告書は必ず全て目を通すのだ。

 

 そこに、連日図書館に足しげく通う、変わった冒険者が居る事が書いてあった。

 しかもその冒険者は、図書館の開館から閉館まで居続け、更に町の情報屋からも情報を買いっていた。

 必要に情報を集める貪欲な姿に、なにかカスパルは親近感を感じずにはいられなかった。

 カスパルは、自然との奇妙な冒険者に興味を持ち、自身の好奇心を満たす程度の軽い気持ちで身辺調査を行った。


 だが、この結果が思わぬ収穫をもたらした。

 彼の素性が解るにつれ、カスパルは個人の興味を超え、商人としての興味をそそられるまでに至った。


 何故なら、彼を追うに従い【エリクサー】の競売を知ったからだ。

 今まで集めた報告書を見る限り、彼が探索過程で【エリクサー】を入手した形跡は無い。

 なのに当たり前のように探索で手に入れたと【エリクサー】を3本も競りに掛けたのだ。

 当然、彼が本当に【エリクサー】を出したのか興味を引かれ、競りに赴き【エリクサー】を買い付けようと試みる。


 だが、その試みは意外な横槍により苦戦を強いられた。

 【エリクサー】に落札を挑む挑戦者は、それこそ相当数のライバルが犇き、しかもカスパルと競り合う事が出来る面子が異常だった。

 代理人も複数人居たが、それ以外にも身なりやんごとなき面子が勢ぞろいだったのだ。


 中には代理人を立てずに来る他国の貴族がそのまま居るのだから驚きだ。

 後で知る事になるが、帝国やアルティナ国はもちろん、カリウス王国やライド王国などが絡んできて【エリクサー】にではなく、あのラルスという男の冒険者に対して何らかの意図を持っている事が解って驚いたものだ。


 思わぬ事態に、カスパーは思考を巡らせる。

 冒険者の男1人に、此れほどまでに動く国々の意図に。

 絶対に何かあると考え、カスパルは当面この落札に全力を注ぐことにした。


 カスパルは財力に物を言わせ、何とか最後の【エリクサー】を競り落とす。

 落札者の情報も、自身の素性がばれない用に言い訳も用意した。

 病気に苦しむ娘の為に、どうしても欲しい商人の代りにと・・・

 まあ、直ぐにバレてしまうだろうが、暫しの猶予は稼げるだろうっと。


 競りが終わり、【エリクサー】は其々の手に渡った。

 2本を手に入れたであろうアルティナ国は、早々に動き出していた。

 彼との体面に向かって、直ぐに行動を開始したのだ。


 手に入れられなかった国々は違う接触方法を模索し始めている。

 直接接触を含め、各国家はラルスに取り入る為に本国から手土産を用意する国まで現れた。

 カスパルはそんな国々の動向に驚きつつ、更に情報を集める。

 

 そして、集めた情報から、カスパーは1つの推測を立てる。

 それは、ラルスと呼ばれる冒険者の男は【エリクサー】を初め、此の世界において貴重な物を作りだせる能力があるのではないかと?


 彼の妹なる人物は、あらゆる素材を買い込んでいた。

 彼女の買い込む素材は多種多様に及ぶものの、一貫して法則性がある。


 買い込まれた複種類の素材をよくよく吟味するに従い、其れに伴う完成するべき存在が導き出される。

 それらは全ては、貴重な物であると理解する。

 オリハルコン、ミスリル、各種高位ポーション・・・


 これはカスパルの想像だけで、憶測に過ぎない。

 実際にラルスには確認もしていないし、その証拠も確認していない。

 だが、カスパルには自信があった。

 根拠はないが、久々にカスパルを惹き付けて離さないラルスに執心しているからかもしれないが。


 カスパルは、ラルスという存在を見出せたことに感謝している。

 どうにかして接触を試み、彼を自身の懐に入れ込もうと思ったのだ。

 それから、カスパルはラルスを篭絡する為の準備を行う。


 ただ、カスパルの行動がもう少し早かったらよかったのだが・・・

 カスパルがラルスに対し行動を起したその時には、既にラルスは町を出ていた。

 事前に『ガイド』の話も知り、有能な人材を用意したつもりだったが上手く行かなかった。

 所詮は商人であり、冒険に耐えうる信頼できる人材が、他者より少々劣っていた。


 金に任せれば有能な人材も用意できる。

 だが、金に転ぶものはまた金に転ぶ。

 信頼を置けるかと言うと、どうしても頼りないのだ。


 カスパルは後手に廻ったことを後悔しつつも、次の機会に向けて策を弄する。

 ラルスが探索から戻った時を想定して。

 各国もそうするだろう。

 だからカスパルはラルスの帰りに備える。

 他国に先んじることが出来るようにと。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 俺の知らぬ間に、周りが慌しかった事など露知らず、俺は4つ目になる『静寂の迷宮』を踏破し終え迷宮入り口まで戻り野営をしている。

 夜の帳の中、焚き火を前に今日も成果が無かった迷宮踏破結果に俺は落胆していた。

 セフィリアも少し落胆の色を見せていたので、気分転換にお茶を飲むことにした。

 

 皆沈黙する中、湯気を上げたお茶が振舞われる。

 このお茶を入れてくれたのはヴィオラさんだ。

 結構美味しいお茶を入れてくれるので、俺としては嬉しいガイドを雇えたと満足している。


 手に持ったお茶を飲むと、温かい飲み物が体を心芯から温めてくれる。

 焚き火を囲んで、俺達は食後のお茶をゆっくりと味わうように飲む。

 一口一口飲むたびに、暖かい温もりが焦る気持ちと焦燥感を振り払うようにカジワジワと体に染み込んで行く。


 時折、囲んでいる焚き火がパチパチと立てる音が響く。

 皆無言で火を見詰めながら、静かにお茶を飲む時間が過ぎてゆく。

 お茶のこうばしい香りが精神を落ち着け、温かい温もりが心を落ち着ける。


 ふと、此の世界で当たり前になっているお茶を振り返り、飲み続けるお茶に目を落とす。

 此の異世界においてもお茶は存在している。


 キリエで、エルナさんとお茶会をした事でも解る様に、普通に此の世界にお茶は普及している。

 ただ、前世と同様にこの世界にも様々なお茶の種類がある。

 緑茶・抹茶・紅茶・ハーブティー・中国茶、名前は違うが味は同じだ。


 世界が変わって、名前も違うがお茶はお茶だった。

 元々お茶というものは緑茶も紅茶も、製法が違うだけで茶葉は同じものだ。

 だから、当然緑茶も紅茶も、烏龍茶なるものまで全て存在しているのは当たり前なのかもしれない。


 此の世界のお茶も、結構庶民でも買える程度には安い。

 だからと言ってホイホイ買える程に安価なものでも無い訳で。

 今回、高くはないお茶を持参で来る機会に恵まれたのも、単に【エリクサー】が高値で売れた幸運からだ。

 だから資金に物を言わせてお茶と言う趣向品を珍しく買い漁った持参したのだ。


 俺は今回の旅で、落ち着ける雰囲気と時間取る事を重視した。

 何故なら迷宮や塔を攻略しても、此の旅路では町に帰る事を想定してい無い。

 精神的に疲弊する事を避ける為にも、日々の野宿を快適にする工夫を凝らしたいと思ったのだ。

 コテージ内での就寝には寝袋ではなくベットを使用するくらいだ。

 後、隠し玉として簡易野外風呂って言う名のユニットバスがある。

 強化プラスチック製の湯船と魔石によるシャワーを備えた簡単なものだ。

 魔力を通せば魔石が反応してお湯を出す。

 これが湯船にシャワーとして降りかかるようにしているので、こうやって旅をしていても体を清潔に保てるようにしている。

 暖かい食事に安眠できる寝具、いつでも汗を流せる環境。

 心身の疲労をなるべく癒せる環境を今回の旅では整えている。


 この世界の移動は非常に過酷だ。

 食べ物は保存食で硬く不味い物が多いし、寝るのも地面に毛布だったりする。

 お風呂なんてあるはずもなく、体を拭く水も惜しいので垢にまみれていく。

 今みたいにゆったりとお茶を飲むことすら出来ないのがこの世界の旅の常識だ。


 だから、こうやってお茶を飲みながら焚き火を囲み、のんびりしていると気持ちが落ち着いてくる。

 24時間気を張り続ける普通の旅とは違い、俺達は今安心して気を緩められるのだから。

 ほら。

 暗い気持ちも薄れてきて日常に戻ってくる。


「はぁぁぁ~~~~~~~~~~もう、此の野宿の方が家より快適すぎて、戻っても日常が送れるか心配いになってきますよ・・・」


 ヴィオラが溜息共に何時もの愚痴を言い始めた。


 旅を始めて3週間ほど過ぎたのかかわらず、今だにヴィオラはこうやって愚痴をこぼす。

 愚痴といってもこの旅路の事ではなく、本人の生活面での愚痴だから聞いていて面白い。

 そんなヴィオラの愚痴に、セフィリアが合の手を入れて女性の会話が盛り上がるのが日常だ。


「ん~そんなにヴィ~たんはこの野営風景が珍しいの?」


「ええ、普通に考えて、旅の途中でこんなにも贅沢が出来るなんて普通無い事なんですよ?」


「・・・そうなのかな~確かにセシリーも食事や飲み物なんかは良い物になったと思うけど、準備出来るなら普通に出来る事じゃないのかな~」


「そこ、そこですよ!準備が出来たからといってホイホイ簡単に、美味しい食べ物や飲み物なんて出てこないですよ?ラルスさんが【アイテムBOX】持ちだからって、こんな発想は今まで誰も思いついていなかったですよ?」


「え~~~お兄なら昔からこんな感じだったけど・・・」


「昔から・・・って、ほんっとお~~~に2人は解ってないですね・・・【れーしょん】でしたっけ?この食事もそうです。作って直ぐの物を【アイテムBOX】に入れて持ち運ぶ発想。そしてこのお茶だってそうです。入れたてホヤホヤをポットに入れて【アイテムBOX】に入れる。そうすれば、何時でも何処でも食べたい時に温かい食事が出来るなんて、まさに贅沢極まりない事ですよ。誰でも考えそうですが誰もしてこなかった事です。確かにそうすれば、腐る事も無く入れた時そのままの状態が保てる【アイテムBOX】ならではの使いかたですもの」


「ふ~~~ん、便利だから良いんじゃない?そんな大げさにしなくっても?」


「はぁぁ~~~流石は兄妹ってことでしょうか・・・」


 ちょっと呆れているヴィオラ。

 まあ、聞いている俺でもセフィリアの反応には苦笑してしまうからな。

 ヴィオラの言う普通が常識であり、セフィリアの感じている感想こそが異常であってこの世界ではおかしいのだ。

 まあ、俺がそういった常識外れな事をしてセフィリアの感性をおかしくしたのかもしれないけどね。 


 何時も話される遣り取りだが、毎度それがお馴染みとなれば恒例化する。

 此の後の会話も、また何時も通りになるだろう。

 変わらない日常風景が戻ってきて、俺は気持ちが楽になっていくのを感じる。


「まあ、食事は置いておきましょう・・・でも此れは無いです。こんな安全な夜を迎える野宿なぞ聞いたことはありません!」


「ん・・・そこは認めるけど、安心して寝れるから良いじゃない~」


「いや・・・そうですけど・・・これ売りに出したら一儲けできる代物ですよ?」


「売れないよ~」


「う!売れますよ!解ってないですね!このテント?コテージというものは快適すぎて怖いくらいです。ベットまで常設って・・・非常識極まりないですよ~~~わ・・・私の部屋のベットよりもフカフカ・・・で暖かく柔らかし、すっごい良い匂いがするんですよ!!……って、ゴホンゴホン。一般的な宿よりも快適な寝具を完備しているなんて緊張感の欠片もないですよ!」


 うん、安眠できるようにアロマ効果を思いついて、布団に御香おこうの匂いを少し付けているんだよね。


「え~すっごく寝心地良いのに・・・」


「ええ。寝心地は最適で・・・ってそれはそうですが、普通其処まで快適に寝てしまえば、夜中に魔物が襲ってきたら対処できないでしょ!危険が迫ってくるのも気付けないほどに快適過ぎなんてヤバイです!」


「うん、すっご気持ちよく寝れるよね~~」


「ええ、本当にフカフカ・・・モフモフしていてもう極楽で・・・♪」


「でしょ~~~♪」


 2人とも物凄く幸せそうな顔してるな……


「って『でしょ~』じゃなくって、危険です!」


「でも、お兄の結界魔法石で安全じゃん」


「・・・それも異常ですよ。ラルスさんの結界魔法石なんて此の世界ではお目にに掛かった事がありませんよ!むしろ此れは神具といわれても仕方が無い位凄い物ですよ?魔物が寄り付か無くする効果に、結界の範囲内には入り込むことすら出来ない仕組み。それも人や魔物問わずなんて・・・本当に旅の常識が覆ります。どんだけ非常識なんですか…」


「まあまあ、解ったから~もう難しい話は止してお風呂入ろうよ~?」


「はぁあ~~もう、お風呂ですか。良いですね~石鹸って本当に素晴らしいですから♪そうですね入りましょう♪」


「うん♪じゃあ一緒に入ろうね~」


「ええ♪・・・汗を流さないとスッキリしませんものね♪ではラルスさん、申し訳ありませんがお先にお風呂頂きますね」


「お兄~行ってくるね~♪」


「おう」


「・・・ホント・・・お風呂まで野宿で入れるなんて・・・ブツブツ・・・一介の冒険者には過ぎたる環境ですよ・・・」


 一介の冒険者ね~

 其の言葉に、俺は苦笑いを禁じえない。

 ブツブツ言いながらも、セフィリアと共にコテージの横にある別棟の天幕へと消えていくヴィオラを見送る。


 今回の旅用に新調したコテージは、モンゴルの遊牧民が使うゲルを参考に大天幕を中心として3つの小天幕を連結させた変則コテージだ。

 小天幕は、其々1つは風呂、1つはトイレ、1つは調理場となっている。

 大天幕は仕切りがあり、其々にベットが設けられていて寝る為にある。


 快適にと張り切りすぎて大きくなってしまったコテージだが、必要な事なので妥協出来無かった。

 ただ、此の大きさの物が【アイテムBOX】に入るか心配だったが、手で触れて【アイテムBOX】と念じたらすんなり入った。

 出す時も手を翳し、【アイテムBOX】から【コテージ】と念じれば出るので俺の心配は杞憂に終わる。


 コテージを中心に結界魔法石の効果により、直径30mの安全圏も確保されている。

 2人が安心して風呂にいけるのも、この結界魔法石のお陰だ。


 お湯は俺が事前に風呂桶に張っている。

 本来はシャワーだけで済ますように考えていたが、やっぱりお湯に入って温まる方が嬉しいと思い毎回お湯を張るようにしている。

 だから風呂に行った2人は、直ぐに湯につかることが出来る。

 見送ると直ぐに、風呂の小天幕で姦しい声が聞こえ、今日一日の汗を流してるのが解った。


 そんな2人の風呂上りまで、俺はヴィオラさんについて考える。

 『ガイド』として雇ったのは、その豊富な知識と迷宮の情報の有益さからだ。


 さらに、ヴィオラさんの持つ武に関する力も考慮したことが大きい。

 だって、募集に来た全員が何らかの国や諜報機関の関係者だったから・・・

 どうせそういった人々に関わるなら、もういっその事能力優先で良いかとなった為にこうなった。

 まあ人間性の考慮は一番重要な要素として選んだけどね。

 

 彼女は隠匿魔法を有した魔具により、身分を隠している。

 俺達にはそれが暴かれていないと思って安心しているようだが・・・

 俺の【鑑定】の前ではなんの効果も発揮しなかった。


 【名 前】ヴィオラ・ブリアーネク

 【L V】19

 【年 齢】18才

 【種 族】人族

 【職 業】聖騎士(アルティナ国所属) 

 【H P】190/190

 【M P】105/105

 【能 力】S19・V15・I10・P18・A15・L15

 【スキル】剣術LV5・神聖魔法LV3

      算術LV2・ミース言語LV5

      礼儀作法LV5・舞踊LV4


 うん、バレバレである。

 名前に性があるし、何より職業が聖騎士になっている。

 一介の冒険者ガイドではない事が解ってしまうのだ。


 ヴィオラの【鑑定】に際し、新たに【職 業】欄が追加されている。

 どうやら正式に職業として認められているものには此の欄が出るようだ。

 実際、『ガイド』募集に来た人々の全てにこの欄があった。

 

 ヴィオラの聖騎士はもちろん、外交官や諜報部員、近衛兵からメイドまで様々だ。

 ただ、冒険者に付いては職業が表示されない。

 風来坊で定職でもない冒険者と言う職業は、一般的には認められていないようだ。

 だから当然、【職 業】欄の記述により、誰が何処の何に関係しているかハッキリと解るのだ。


 ちなみに今まで【鑑定】で正体を見破れなかったのは、アリスの従者となったアドルフだけだ。

 あの場合、アリスの魔力により、従者として蘇ったアドルフのステータスが見えてしった為、生前のステータスが見れ無くなるようで、まんまと騙された訳だ。


 話を戻すが、ヴィオラをガイドとして雇うのはかなり悩んだ。

 正直、アルティナ国の人間に、もう一度関わるかどうか本当に考えたのだ。

 でも、ヴィオラの持つもの知識が圧倒的に他者を凌駕していたし、なにより人柄がよかった事と、出来るだけ早く動きたかったので、ヴィオラを雇う事に決めた。


 さっきの会話からも解るように、兎に角素直で天然な人柄が俺達を癒してくれる。

 俺の特異な行動に、一々驚きはすれども怖がることもせず、絶えず受け入れようとしてくれるのも嬉しかった。


 そして、俺達の行動に少なくとも注意を呼びかけてくれるのだ。

 損得抜きで言ってくる言葉が、凄く心に染み込む。

 これは、ヴィオラの人柄が成せる事だろう。

 本当に、ヴィオラを『ガイド』にして良かったと思う。


 そうでなくては、セフィリアも懐かないだろう。

 まあ、お姉さんのようなヴィオラにイリスの面影を見ているのかもしれないが・・・


 そこでふと、イリスへの魔力供給を思い出す。

 旅に出てから、何時もは2人が寝静まってから、1人で魔力供給をしていた。

 安全とは言え、野宿では夜番を一応行っている。

 俺が最初で明け方までで、明け方近くに2人が夜番を行うことが決まりとなっている。


 魔力供給を思い出すと、イリスの姿を見たくなる。

 出きるだけ我慢はしているが、イリスの事になるとやっぱり平静を保てなくなる。

 

 早く生き返って欲しい。

 早く言葉が訊きたい。

 早く・・・あの笑顔が見たい・・・


 俺は徐に、イリスの棺を取り出し魔力供給を行う。

 セフィリアとヴィオラがお風呂から出るまで、ずっとイリスの顔を見ていたいと思ってしまったからだ。


 棺から見えるイリスは、あの時と変わらない。

 あれからずっと棺の中で目を閉じ、眠っているイリス。

 そんなイリスを見ていると、つい独り言が漏れる。


「イリス姉・・・早く俺の名を呼んでよ・・・」


 言ってもせん無き事なのに、言わずに入れない。

 今日の『静寂の迷宮』も空振りに終わった。

 明日からはまた移動して次の目的地まで移動しなければならない。


「やっぱ、そう簡単にはいかないよね・・・覚悟を決めるしかない・・・かな?・・・」


 確認するようにイリスに問いかける。

 返事は返って来ないと解っていても、言葉に出さないと落ち着かない。

 

 イリス復活の為に、満を持して迷宮攻略に挑んでも、成果がこうも現れないと焦りもする。

 期限まで、刻々と日が無くなっていっている事も焦りの原因だ。

 俺は、次の攻略目標を変更しようか悩むのだった。


 次に行く予定の迷宮は『腐食の魔窟』だったが・・・

 此処で時間を費やすよりも、早々に大物に挑んだ方が良いのかも知れない。


 だから・・・

 イリスの棺をしまい、2人がお風呂から出てくるのを待つ。

 次の目的地を変更するかどうか、セフィリアに確認したくなったのだ。


 風呂から上がったセフィリアに向って、直ぐに俺は目的地の変更に付いて話し出した。


「次の目標は、『渓竜の谷』に挑もうと思うがどうだろうか?」


 俺の言葉に息を飲む2人。


「ええええ!!あの地に行くんですか!!??ってかムリムリムリ!!」


 セフィリアに変わって、ヴィオラが絶叫しながら答えてくる。

 当然だろう、此の世界最強の種、ドラゴンが巣食う前代未聞の迷宮挑戦だ。

 

「ああ、もともとドラゴンとはやるつもりだったしな」


 俺は真剣になって2人に説明を始めるのだった。

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