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第四十三話 地下への入り口

あけおめです

 朝になり目を覚ます。

 両隣にはイリスとセフィリアがまだ寝ていた。

 毎朝恒例の下半身は、今日に限って大人しい。

 どうやら体がまだ本調子では無いようで、下半身に欲望を集約するにはまだまだのようだ。


 それに、何処と無く違和感が体の彼方此方から感じられる。

 何処が如何とは言えないが、以前の自分とは全く違う感じがするのだ。

 以前の肉体と違う何かを、俺は感じていた。


 そんな俺達からかなり離れた位置には、オイゲン達が同じく就寝している。

 皆、毛布を被って焚き火の周りで雑魚寝をしている。


 其の中で、1人起きているのはジモンだった。

 彼が最後の夜番での見張り役立ったのだろう。

 焚き火の前で座って、辺りに目を光らせている。


 時折こちらを見ている。

 やはり俺達をまだ警戒しているようだ。


 昨日オイゲンと話してから、夕食を済ませ此処で夜を過ごす事となった。

 何時も通り夜番のローテを話していると、オイゲンが話しかけてきた。


「ラルスよ、すまぬが今晩は大人しく3人で寝てはくれぬかの?」


 何となくオイゲンの表情から理由が察しられる。


「えっと、そうさせてもらいます。でも良いんですか?お手伝いしなくて」


「そうじゃの、本来なら皆でやるべきじゃが、皆不安での。すまぬな」


「いえ、皆さんの気持ちは解ります。寝首を掻かれたくはないですよね」


「・・・・」


 こうして、俺達は夜番に参加することなく寝たのだ。

 まあ、疲れていたし寝させてもらえるのは単純に有難かったが、その理由を考えると正直心が痛かった。

 俺達は、出会う人からの親切に慣れきっていたのだろうか?

 こんなに他人に警戒されたのは此の世界では始めてかもしれない。


「ん・・・ん~~~ん。あ、お兄・・・おはよう」


 俺が起きた事に、まずセフィリアが気付き起き出して来た。


「ん、おはよう」


「・・・今日は・・・元気ない?」


 セフィリアの目が下半身を見つめて言っているので慌てて隠す。


「おま!寝起きからソレか!?」


「フフ、冗談よ。・・・お兄♪」


 そう言って、セフィリアは俺の肩に手を置き労るように見詰めてくる。

 どうやら凹んでいないか心配して、茶化しに掛かってきたようだ。

 俺に気を使うセフィリアの姿に、嬉しさが込上げて来る。


「そっか、ありがとうな」


「ん?何のこと?」


 セフィリアは惚ける様にそっぽを向いて立ち上がり、朝食の準備をする為に俺に材料を強請ってきた。

 俺に食材と調理器具をアイテムBOXから取り出すよう催促して、そそくさと受け取る。

 セフィリアは、受け取った材料を手に、慣れた手つきで朝食の準備に取り掛かりに行った。


「うう・・・」


 セフィリアの朝食準備が始まると、向こうでもオイゲン達が動き出していた。

 双方で人が動き出す気配が大きくなり、イリスも起き出してくる。

 だが、何処か気だるそうだ。


「大丈夫?イリス姉」


「ん・・・流石にちょっとしんどいかな・・・」


 昨日は自分の限界を超える回復を俺に施し、疲れても尚献身的に尽くしてくれたイリス。

 体力の無いエルフには、相当堪えたのかも知れない。


「イリス姉、少し癒そうか?」


 俺はイリスの肩に手を置き、魔力を通そうとする。


「!ダメよ、まだそんな事をしちゃ・・・ラルスはまだ体が本調子じゃないでしょ?」


「いや、俺もそうだけどイリス姉も酷そうだ。少しなら俺にも余裕がある。大丈夫」


「でも、でも・・・」


 俺はイリスに有無を言わさず魔力を通し癒しを掛ける。


「・・・ごめんね、ラルス・・・」


 普段ならイリスは俺を跳ね除けてでも拒絶したと思う。

 それをしなかったと言う事は、余程体力が厳しかったのだろう。


 俺も無理はせずに、イリスに対して軽い癒しをかけていく。

 イリスに軽く癒しを掛けていると、俺は自分の変化を実感し内心で驚いていた。

 以前よりも効果も高く魔力の消費も少ない感じだ。

 魔力の通りも良い、凄く馴染む。


 今までにないほどイリスへの魔力が通り、更に肉体の内部まで手に取るようにわかる。

 息遣いや鼓動、肌の張り、何もかもが見える!

 俺は、イリスの体を癒しながら己の感じる感覚と、イリスの変化をつぶさに観察した。

 

 イリスを癒し終わり、自分がとんでもなく魔力による癒しが強力になったことが解った。

 其の効果も抜群で、イリスもけだるさが抜け今は起き上がっている。


 2人が完全に起きた時には、セフィリアの朝食も出来上がっていたので3人で済ます。

 向こうのオイゲン達も食事をしてるが、此方にかまってくることは無かった。


 朝食が済むと、片付け中の俺にオイゲンが話しかけてきた。


「ラルスよ、ちょっと良いか」


「はい、なんでしょうか」


 片付けをイリスとセフィリアに任せて、オイゲンと少し離れた場所で話し合う。


「お主達は、これから如何するのじゃ?」


 当然の質問だろう。


「体調が整い次第、出来れば直ぐに帰りたいとは思っています。暫くは此処で野営しなければならないかと思うのですが、また何時襲撃があるか解らない以上ゆっくりとはしてられないとは思いますが・・・オイゲンは如何するのですか?」


「そうか、ワシらは此処ルート荒野にとある調査依頼に来ておる。故にこのまま依頼に戻るんじゃが・・・多分此の建物をまずは探索するっことになるじゃろう」


「此れですか」


 俺とオイゲンは側にある屋根状の建物を見上げる。


「うむ。此処は今までに冒険者からの報告が無かった建造物での~調べる価値がありそうじゃ。あそこの入り口らしき場所から中に入れるようじゃし行く事になるじゃろう。本当はおぬし達を連れて帰ってやりたいのじゃがの・・・すまぬな」


「いえ、依頼のある中俺の事で時間を取って下さっただけでも十分です」


「そう言ってくれると助かるの」


「それよりも、中に入れるんですか?」


 俺は此の建物に入れなかったことを思い出し、オイゲンに確認してみた。


「うむ、入れたぞよ?何か知っておるのか?」


「ええ、俺達が魔物との戦闘になったとき、真っ先に此の中へ逃げ込もうとしたんですけど、中に入れずに応戦しなければならなかったのです」


「ふむ、中に入れなんだのに、今は入れるようになっておるのか」


「ええ、俺達は入れませんでした」


「ワシ等とおぬし等で違いがあるということか・・・何が違う・・・」


 オイゲンと俺は、一抹の不安を覚え建造物の入り口を見詰める。


「オイゲン、一度俺達が入れるか確認しても良いですか?」


「ふむ・・・いいじゃろう。中を偵察した限り危険はなかった事じゃし、一度確認してみるかの」


 こうして、一度俺達が建造物の中に入れるか確認する事になった。

 オイゲンはクロード達の元に戻り、中に入って探索する準備を始める。

 俺はイリスとセフィリアに、オイゲンとの話を伝えて入り口に入れるか確認する事にする。


 一同、各々の準備をして、建造物の建物の前に集合した。


「では、ラルスよ試してみてくれるかの?」


 オイゲンの指示に従い、入れなかったあの入り口に向って進んでいく。

 イリスとセフィリアも後ろから続き、3人が其々確認していった。


 ゆっくりと近付き、入り口に足を踏み入れる。

 前は見えない膜のようなもので弾かれて入れなかったのに、今すんなりと足が入っていった。


「え?」


「お兄!入れるよ!」


「ラルス?!どういう事?」


 俺達は皆驚きの声を上げて、建造物の中に入った。

 それを見届けたオイゲン達は、続け様に其々入り口を通って中に入ってくる。


「ラルス、通れたようじゃの」


「ええ、何故でしょうか?俺達は此処に来た時は入れなかったのに・・・」


 建造物の中を、何故と言う疑問をさぐるように見渡す。

 中は学校の体育館並みの広さと高さがあり、薄暗く空気が冷たい。

 全て石のブロックで作り上げられたような構造で、所々に石柱が立ち並び天井を支えている。


 薄暗い割には視界が効く。

 どうやら石のブロックが淡く発光している為、暗闇で覆われる事はないようだ。


「ふ~っむ、此の感じは・・・迷宮に近いのじゃが・・・それにしても建物的にはそういった感じには思えないのじゃが」


 オイゲンは、中を見渡した感想を漏らしている。


「オイゲンよ~もう良いだろう?さっさと行こうぜ」


 クロードが面倒くさそうにオイゲンを急かす。

 ビアーチェも俺を見て、嫌悪の顔色を浮かべて先に進もうとしている。


「うむ、そうじゃの。ラルスよ、すまぬがわし等は行く。此処でお別れじゃ、また会おうぞ」


「はい、ご迷惑を掛けました。またお会いしましょう」


「オイゲン、皆さん。ありがとう御座いました」


「オイゲンに皆~ありがとう~またね」


 俺達は去り行くオイゲン達に頭を下げて見送る。

 オイゲンだけは振り返り、手を振ってくれたが他のメンバーはそそくさと先に行ってしまった。


「ごめんな、イリス姉、セフィリア・・・俺のせいで嫌な想いをさせたね」


「ううん、大丈夫よ。ラルスは気にしなくて良いわよ。私はラルスが居ればそれで良い。だから何も気にして無いわ」


「セシリーも何も気にして無いよ。お兄こそ気にしすぎ、あんまり気を使いすぎるとストレスで背が伸びないよ♪」


「ん、ありがとう」


 去り行くオイゲン達を見て、俺は今後の事を考える。

 取り合えず、建造物の中に入れたことで、外で襲撃に警戒しながら野営をすることは無くなった。

 そこで、此処で暫く英気を養い体力を整える事にする。


 早速、適当な場所に野営セットを設置して食料を確認する。

 アイテムBOXには十分過ぎるほど食料があり、当面の問題は無かった。

 水も問題なく、タオルや服の着替えも問題ない。


 たらいを出し、体を拭く事が出来るようにする。

 体を拭いた後の着替えも用意しておく。

 イリスやセフィリアは結構戦闘や俺の看病で汚れていたので、先に体を拭くことから始まった。

 2人は下着を交換し、脱いでいた汚れた装備の点検を始める。


 破損していたり、汚れがこびり付いた物は俺が【アルキメイト】で再構築して新品に換える。

 服も予備の布と合わせて、此れもまた【アルキメイト】で再構築する。


 鎧等は比較的損傷が無かったので、ちゃちゃっと直す。

 セフィリアの大剣も刃こぼれ等を直して、完璧にする。


 俺の分の装備は・・・正直なかった。

 いや、ぶっちゃけオリハルコンの装備が溶けてなくなっていた。

 俺自身のスキルでそうなったとは言え、オリハルコンが溶けるとは思いもしなかった。

 其の為、予備でアイテムBOXに収納していたインゴットから再度【アルキメイト】で作り出す羽目になっていた。


 俺が装備に掛かっている間に、イリスとセフィリアは中の探索と安全確認。

 どうやら此処には魔物が沸くことは無かったようで、一安心と共にゆっくりとする。


「お兄、装備とか食料は問題ないけど回復アイテムは如何しよう」


「そうよね~ラルス。もう予備も無いのよね・・・」


 野営や戦闘に問題は無いが、帰路で何かあった場合の回復系アイテムが一切無い事が悩みになる。

 此処ルート荒野に来る時に、全ての材料をポーションや丸薬に変えて持って来ていたのだ。

 アイテムBOXに相当放り込んでいたのだが、まさか無くなるとは夢にも思っていなかった。


「なにか良い方法はないかしら」


「んー、荒野には草花が無いからね・・・」


「だよねー道中でそれらしいもの見つけたこと無かったもん」


「まあ、ゆっくりと考えよう。雨露を凌げる良い場所は確保した事だしね」


「そうね、焦っても仕方が無いわ。落ち着いて考えましょう」


「うん♪そうしよう」


 俺達は、まずは傷を癒すことに専念して対策を立てることにした。

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