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第二話 転生チートは何にする

 俺は神に向かって、考えていたスキルを伝える事にする。

 実は異世界にいって自由気ままに過ごす為に、俺にとって必要なものは考え抜いていた。

 

 俺にとって武芸はあまり重要ではない。

 何故か?自分自身が古流武術の家に生まれ、その継承者として育ったからだ。

 子供の頃から嫌って程に剣術を叩き込まれてきたので、余り興味が無かった。


 それと魔法もどちらかと言うと興味が薄い。

 ラノベなんかのテンプレでいけば重要な要素とは思うが、イマイチピンとこないのだ。

 それに明確な魔法のイメージが沸かない事も理由だ。

 だって見た事も聞いた事も無い魔法を、行き成り異世界に行っただけで成功させる自信が無い。


 故に俺は、今まで異世界に行く事があったらと自分に一番良いと思えるスキルを選び抜いていた。

 2つしか取得できないので、考え抜いた中で優先順位を決める。

 

 決めた!

 早速神に俺の思っているスキルに該当するものが無いか聞く。


「まずは見ただけで何でも完全にコピー出来るスキルと、自由自在に何でも作れる鍛冶スキルが欲しい」


 そう、此れが俺の考えていた中で優先されるスキルだ。

 俺にとって、見た事を実践するという行為は馴染み深い。

 剣の稽古や柔術の型も、習う時には必ず【見る】ことが重要だ。

 見稽古という言葉が昔からあるように【見る】ことはとても大切な要素だ。


 だが、見たからと言って直ぐに身に着く事は無い。

 鍛錬を重ね、見たことを体に覚えさせるには時間が掛かる。

 イメージは【見る】事で頭に焼き付けることは簡単だが、体を追いつかせるには難しい。

 だから俺は【見る】事が出来た後の鍛錬期間を無くすコピー出来るスキルが欲しかったのだ。


 後、鍛冶に付いては単純だ。

 どのラノベにもある事だが、トイレや風呂、キッチンなどの近代設備に慣れた現代人には中世の設備は酷く汚らしいと解っているからだ。


 特にトイレ。

 これは切実な問題だ。

 肥溜め式ならまだしも、もっと不衛生な環境もあるだろう。

 また風呂も同様で、体を拭くかシャワーでは生粋の日本人たる俺には耐えられない。

 落ち着いた環境が整うまで関係ないだろうが、此れは譲れない。


 もし何でも自在に作れるなら馬車を改造してトイレや風呂をくっ付けたって良い。

 兎に角、汚い環境が嫌なのが一番大きな理由だ。

 付け加えて武具に付いても、自分の好きなように得意な武器を作っていけることは利点が大きい。

 その場凌ぎの武具では心もとないし、一々武器を購入していてはお金も溜まらないだろう。


 投げナイフや手裏剣などの投擲武器も、その場で作れれば使い捨てにしても懐に優しい。

 投槍や手投げ斧も自由に出来て、戦術の幅も広がる。

 上手く行けば銃なんて物も作れるかもしれない。

 何でもなので、もしかしたら知恵の実とか、力のスクロールとか、若返りの石とか、某迷宮RPGのアイテムも創れる可能性がある。

 鍛冶の凡庸制は非常に優れているのだ。


 自分の考えていたスキルを伝えて神の反応を待つ。

 

「・・・それ滅茶苦茶チートじゃない?」


「そうだけど何か?」


「いやいや世界のバランスっていったじゃない!そんなの駄目だよ!こう~剣術LV10とか無難にしてよ!!!」


「望むスキルを望むLVでって言ったじゃん!」


「言ったけど流石に無いわー、そこまでチートは無いわー」


 神は俺の要求に引いているようだ。

 だが、それでも俺は折れないぞ!


「神なのに言った事を曲げるの?只でさえ夫婦喧嘩に巻き込んでおいて俺に迷惑駆けた自覚があるのに?しかもスキルを否定しないって事は、言ったスキルあるんでしょ!」


「ギク!!」


 神が『しまった!』と漏らす声を聞き、俺は確信する。


「あるんでしょ?俺の言ったスキルに該当するものが」


「・・・」


 無言を貫く神に俺は試しにカマを掛けて見る。

 女神との電話で、神は地球の神との約束と漏らしていた。

 俺の予想では、神々の中で何か取り決めがあり、その約束の上に今の状況があると睨む。


「さあ、地球の神との約束で俺の願いは聞き届けないといけないんでしょ?」


「ギク!ギク!何故それを!」


「うん、吹っ掛けました」


「ちょおおおお!なんだよ君は!!!」

 

 お!意外に良い方向で当たっているぞ。

 もう少し違う取り決めかと思ったが・・・

 何にせよ俺の言葉が当たりなら良しとしよう。


「神の夫婦喧嘩に巻き込まれた哀れな人間ですがなにか?」


「・・・ほんっと君は厭味だね」


「ええ、新しい人生が待ってますから」


「はぁ~~~解ったよ。じゃあ今から言うスキルが該当するからそれで良いか考えてね」


「バランスを崩さない程度のスキルを押し付けないで下さいね」


「ック!解ってるよ、も~~う」


 神は諦めたかのように了承して、スキルを教えてくれる。


「何でもコピーって訳には行かないけど、【ラーニング】ってのがあってね。これは君が見た魔物のスキルを全てコピー出来るものなんだよ。人間同士では効かないけどね。魔物限定ではあるけど、魔法もコピー可能だけどどうかな?」


「ふ~っむ」


 少し考えて見る。

 何でもとは行かない事はある程度覚悟はしていた。

 所詮向こうの世界の道理に従わなければいけないだろうから。

 魔物限定ではあるが、全ての魔物のスキルというのが嬉しい。

 魔法も含めて使いようが幾らでもありそうだ。

 俺は【ラーニング】を気に入った。


「じゃあ1個目は【ラーニング】で」


「そっか~やっぱそうだよね~・・・」


 神はげんなりした声を俺に向ける。

 余程【ラーニング】を取得させるとバランスに悪いのか?


「もう決めたんだし次に行きましょう」


「うん・・・じゃあ何でも作れる鍛冶スキルだったね。これは該当スキルが2個ある。1個目は核になる材料と少量の魔力さえあれば、その場でスキルを唱えると望んだ武具やアイテムが作れるものでね。魔力さえあれば材料に見合った望むものがその場で出来上がる。ただし材料が無いと出来ないのが欠点ね。2個目は材料が無くても望んだ物が何でも作れるスキル。ただし材料が無いので変わりに魔力を代用するんだ。しかも魔力量が膨大にいるのと、出来上がりまでに時間が掛かることが欠点。で、それぞれが【アルキメイト】と【クリエイト】となっているけど、どうかな?」


 ぬぬぬぬぬ。

 これは誤算だった。

 何でも作ろうと思えば【クリエイト】だろう。

 ただ時間が掛かるという点が悩ましい。


 戦術の幅を広げるには【アルキメイト】だ。

 しかも武具やアイテムなら何でも良いと来る。

 ただ、風呂や便器とか土木系に関しては作れないのが欠点か・・・

 某迷宮RPGのアイテムが作れるのかも疑問だ。


 聞いて悩む俺。

 流石に2個目は即答できない。

 困った末に、俺はミースで土木系スキルはあるか?

 知恵の実とか、力のスクロールとか、若返りの石とか存在するのか?聞いてみた。


「ミースで陶器とか土管なんかの作成スキルってある?」


「ん?あーそれもあるよ。一応公衆浴場や簡易的な下水溝を作れるくらいには技術はあるからね。陶器は残念ながら今のところはないかな。でも木や銅に鉄、金銀で食器などの調度品は加工技術があるよ」


 と言う事は、どうせ暫くお金が溜まるまでトイレや風呂は無縁になる。

 望む綺麗な環境については同じ様に我慢する期間は変らない。

 嫌だけど嫌なんだけど、お金で作ったほうがまだ安上がりかもしれない。


「知恵の実とか若返りの石とか神秘アイテムはある?」


「そんな事考えてるのか君は!」


 神の呆れたように言ってくる。

 だって、そう言った物があれば便利じゃな~~い。


「本当に君は強欲だね~」


「ええ、異世界に夢見てますから」


「はあぁ、神秘アイテム?一応あるけど入手はかなり困難かな?まあ、【アルキメイト】がればポーションという形で完成させる事はできるよ」


 おおおおお!

 聞いてない事まで教えてくれたよ♪

 これで2個目は決まりだね。


「じゃあ2個目は【アルキメイト】で」


「はいよ・・・はぁ・・・全くどうしようもなくチートになっちゃったね」


「そうですか?此れでも俺TUEEEにはまだ届いて無い気がしますよ」


「それだけあればTUEEEだよ!まったく・・・ブツブツ」


 神の叫びは放っておこう。

 俺は2つのスキルを貰えることで、wktkしながら異世界に想いをはせる。


「じゃあ此れで満足できたかな。彰人君には早速私の世界に転生してもらいますね。」


「ちょっと待ってください!」


「まだ何かあるんですか!」


「ええ、転生するのに重要な事が1つ」


「いや、もう何にも特典なんてあげれないよ?!」


「特典では無いですよ」


「ほんとに~」


「ええ、本当に」


「じゃあ何ですか?」


「記憶をそのまま転生して欲しいのです」


「え?」


「記憶ですよ、き・お・く」


「ぐ・・・まあその位なら・・・じゃあもう良いですよね?行きますよ?」


「ええ。喜んで♪」


「たく・・・じゃあ転生してもらいますからね~」


 そう神が言うと俺の体が透け出す。

 すると、俺は此の白い世界から何処か別の空間へと引っ張られていく感覚に襲われ意識が薄れる。

 段々と朦朧とする中、神の最後の一言が俺に向けられた。


「あ、此れだけチートなんだから人生ハードモードスタートでいいよね?」


「ええええ?」


 驚くと同時に俺は意識を失う。

 こうして俺はミースに転生して行った。


「神に文句を言ったんだから此れくらいのお仕置きもありかな♪」


 誰も居無い白い空間に神の独り言だけが響き続ける。


「地球の神に上手く行ったと報告しなきゃ。しかしアレを付けて此方側に送りたいとは変ったお願いだったな。ま、いいけどね。」


 こうして神の声も聞こえなくなり、白い空間もまた消えてなくなったのである。

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