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第十六話 新たなる力

 天狐の【九尾・鬼火】に合わせて同じ【九尾・鬼火】を放って相殺を狙う。

 俺は、この世界において、LVの開きがどれ程力の差を生むかは明確には解ってい無い。

 それでも、同じスキルならば込める魔力量で何とか出来ないかと咄嗟に唱えたまでだ。


 何故逃げる事無く攻撃を仕掛けたのか?

 簡単だ、我慢の限界を超えただけだ。

 そして刹那的な行動に、多少後悔もあったが考えないでおこう。

 やってしまったのだから。


 俺の放った【九尾・鬼火】は勢い良く天狐に向かい、天狐の【九尾・鬼火】とぶつかり合う。

 双方の火炎が衝突し、大きな爆風を巻き起こし、派手に火の粉が舞い上がる。

 相殺とまでは行かなかったようだが、何とか攻撃を防ぐ事はできたようだ。


 天狐に狙われていたパステルは、相殺しあう爆風に巻き込まれ吹き飛んでいた。

 直撃は避けたが、ある程度のダメージは食らっているようだ。

 【九尾・鬼火】に焼き殺されるよりはマジかもしれないが、パステルの安否が不安になる。

 不安だかといって、パステルを助けに行く余裕など無い。

 天狐は俺の攻撃に激怒し、新たなターゲットとして睨みつけているのだから。


「イリス!セフィリアを頼む。逃げろ!俺があいつを引き付ける」


「でも!ラルスじゃ・・・」


「仕方が無いだろう?もうやっちまったんだ」


 俺は天狐から目線を外さないように、イリスに言い訳をする。


「迂闊だったよ、でも俺は我慢できなかった、それだけだ。せめてイリスとセフィリアを逃がす事位はしておきたいんだよ」


 俺の言葉に、背後のイリスはどんな顔をしているのか。

 多分、目一杯悲しんでいるか、怒っているのだろうな。

 イリスの悲しい顔や怒っている顔が目に浮かぶ。

 もう見れないかもしれないな・・・


 セフィリもイリスが居れば大丈夫だろう。

 あの子は強い、それにセフィリアなら何があってもイリスを助けるだろう。

 だから、逃げろとしか言葉が思い浮かばなかった。


「兎に角、離れろ。攻撃が来たら巻き込まれるからな」


「・・・解った。でもラルス・・・ラルス・・・死んじゃ嫌よ・・・」


「努力はするよ」


「グス・・・もう・・・せめて生き残るよって言って欲しかったな」


 鼻声で聞こえるイリスの言葉。

 イリスも解っているのだろう、俺では天狐に勝てないと。

 そして、最悪死んでしまう事を。


 それでもイリスは、自分の願いを軽口にして俺に余計な緊張感を与えないようにしてくれる。

 イリスの変らない優しさに、俺は覚悟を決める事ができた。

 かつて、イリスの為になら主を殺してもいいと決断したあの夜を思い出したのだ。


「いけ!」


 俺の言葉に、後ろに居たであろうイリスとセフィリアの気配が徐々に薄まっていく。

 天狐は相変わらず獰猛な顔で俺を睨み続けていた。

 ただ、攻撃は仕掛けてこない。

 訝しげに体を動かし、様子を伺うようにしている。


 もしかしたら、俺が【九尾・鬼火】を放った事で警戒しているのじゃないだろうか?

 もし俺なら自分の放ったスキルが見知らぬ相手から、同じ様に繰り出されたら驚くだろう。

 しかも初見の相手ならなおさらだ。


 この予想が正しいなら、少しは時間も稼げそうだ。

 なら、相手にもっと驚いてもらって警戒心を煽ってやろう。

 俺は、睨み続けている天狐に向って、【五尾 雷光】を放つ。


 【五尾 雷光】は受けた効果から、対象の周辺1M位を中心に放たれる雷の嵐と考えられる。 

 出来るだけ魔力を最小限にとどめて、天狐を標的に打ち込んでみた。

 なによりも、離れているとはいえパステルに当たらないようにしなければならないので、【五尾 雷光】を使ったのだ。

 スキルを唱える終わるとと、天狐の上空に暗雲が立ち込め、【五尾 雷光】により稲妻が雨霰と落ちる。


 俺の放つ【五尾 雷光】に、天狐は驚きの表情で俺を見やったあと、直ぐに何かを唱えた。

 すると、俺の頭にスキル名が浮かぶ。


 【三尾 水鏡】


 雷が天狐に降り注ぐのは変らないが、当たる直前で薄い膜のようなものが出来上がり、其の幕に雷が弾かれていた。

 どうやら其の薄い膜は【三尾 水鏡】のようで、降り注ぐ雷を全て防いでいる。

 そうか、【三尾 水鏡】は攻撃系スキルの防御壁として使うのか。

 攻防において全ての効果を持つ尾のスキル。

 天狐の強さを改めて思い知った。


 続けて【二尾 岩弾】を放つ。

 自分のスキルを寸分違わず放つ俺を、脅威と思わせる為に。


 【二尾 岩弾】を唱えると、俺の頭に幾つもの岩がイメージされる。

 1個から複数まで、最大10個は飛ばせるみたいだ。

 岩の強度も変えれる様で、個数と強度を選択すると【二尾 岩弾】が天狐に向って放たれた。

 もちろん岩の数は10個で強度は最大だ。

 天狐を驚かすためなのだから。


 【五尾 雷光】が降り注ぐ中、天狐は【二尾 岩弾】が放たれた事に驚き、咄嗟に姿勢を低くして地面に蹲る。

 すると、今まで天狐を守っていた【三尾 水鏡】の膜が消え、雷を其の身に受けだした。

 苦悶の表情で雷に耐えながら、【二尾 岩弾】により打ち込まれた岩を迎えるように尻を上げ前傾姿勢をとる。

 すると、天狐に当たった岩が見事に弾かれ砕けていく。

 たぶん【一尾 金剛】を使ったのだろう。

 パステルの攻撃に合わせて使用した時に、俺が【ラーニング】出来たので間違い無いと思う。


 一連の攻撃で、天狐のスキルに1つの弱点を見つけた。

 どうやら1回に1個のスキルしか発動できないようだ。

 もし、同時に使用できるなら【三尾 水鏡】を消す理由が無い。


 俺は【ラーニング】の効果で、この制限が無いと見える。

 なら、おれの魔力が尽きるまで、天狐にスキルを使い続ければいい。

 イリスとセフィリアの逃げる時間がかなり稼げるだろうから。


 俺は再度【五尾 雷光】を唱え、天狐に向って放とうとした瞬間。

 天狐は雷と岩弾を受けながら立ち上がり、あろう事か俺に向って突進してきた。

 天狐の突然の行動に、俺は【五尾 雷光】を打つ事が出来ず回避するに留まる。


 回避すると、天狐は俺など居なかったかのようにそのまま突き進み、俺から離れていく。

 不審に思い、起き上がって天狐の向かう先を見て、俺は愕然となった。

 其の先には、逃げるイリスとセフィリアが恐怖に慄いた顔で必死に走っている。


 天狐は面倒な俺との戦闘を避け、逃げるイリスとセフィリアを先に片付けようとしたのだ。

 俺は今にもイリスとセフィリアに襲い掛かりそうな天狐に向って【八尾 月読】を唱える。

 【八尾 月読】の効果により、俺は木々の陰から天弧の影に瞬間移動した。

 

 襲い掛かろうとしていた天狐の腹下に現れた俺は、直ぐに小太刀を抜き、天狐に【スラッシュ】を放つ。

 無防備な天狐の腹とはいえ、高LVの魔物だ。

 幾ら奇襲で条件が良くとも、俺の攻撃では傷1つ負わせる事無く天狐の白毛に小太刀が阻まれる。

 

「っく!」


 力を入れようともビクともしない。

 どれだけ肉体を強くしても、どれだけ【身体強化】をしても、所詮は10歳児なのだ。

 

 天狐の腹下で攻撃姿勢で固まる俺は、天狐を見上げる。

 見上げた先では、天狐が満足げな笑みを浮かべて俺を見下していた。


 ああ、そうか・・・嵌められたのか。

 天狐の思惑を理解して、俺は自分の失態に舌打ちする。

 俺の守るべき相手を攻撃する事で、天狐は直接攻撃の範囲に俺も誘い込んだのだ。

 しかも、俺は守るべき存在により天狐に強力なスキルは放てない。

 詰んだな・・・


 天狐は腹下の俺に向って、前足を振り下ろす。

 当然【一尾 金剛】を使うも、其の衝撃は凄まじかった。

 オリジナルの天狐には到底及ばないのだろうか?

 胸の辺りが引き裂かれ、近くにあった木にぶち当たる。


「ぐは!!!」


 当たった衝撃で背中に激痛が走る。

 木の根元に落ち、蹲る俺。

 体中に激痛が走り、思うように回復も出来ない。

 地面に這い蹲りながら、顔を上げ天狐の方を見る。


「あああ・・ああ・・・・・」


「ラ・・・ルス・・・助けて・・・」


 俺にはもう興味が無いとばかりに、天狐はその狙いを2人に向けていた。

 腰を抜かしているイリスとセフィリアに獰猛な笑みを向けて。

 イリスは俺を見て泣いている。

 助けてと何度も口が動くのが解る。


 セフィリアはただ呻くばかりだ。

 その2人に天狐の前足が振り上げられ、其の命を絶とうとしている。


 俺は自分の無力さを呪う。

 迂闊な行動をした、しかしどうしても我慢ならなかった。

 そして、何よりもこれ以上俺は家族失いたくなかった。


 どれだけ頑張っても天狐を倒す力が無い。

 幾らスキルを【ラーニング】出来たとしても、天狐の攻撃を上回ってはい無い。

 だって天狐は傷を負ってい無いのだ。


 どうすればいい?

 どうやってこの状況を打開する?


 俺は、苦痛に悲鳴を上げる体に鞭打ち、必死に立ち上がった。

 フラフラになりながらも、何とか立ち上がった俺を天狐は一瞥する。


 ニヤリ


 まさにそんな顔だったろう。

 天狐は俺に見せ付けるように、更にゆっくりと前足を振り上げた。

 俺は、そんな光景に更なる怒りを覚える。


 誰が悪い?

 俺だ。

 

 何故倒せない?

 俺が弱いからだ。


 だったら強くなればいい。

 そうだ!全てを命をかけて全てを使って!!


 天狐の振り上げた前足が、勢い良く振り落とされようとした時。

 俺は腹の底から叫ぶ。


「俺の家族に手を出すな!!!」


 俺の声に、一瞬止まる天狐の前足。

 其の隙に、俺は持てる全てのスキルを使おうと体中にスキルを込める。


 【九尾 鬼火】を唱え、何も持たない右手には【三段突】。

 空いている左手には火魔法LV5の【ファイアーアロー】。

 体中同時にスキルを纏わせ、最大限に魔力を込める。


 それら全てを一気に放とうとした瞬間!

 俺の頭に浮かぶスキル名


 【九尾 鬼炎三連】


 纏った全てのスキルが融合し、一個の強大な火炎となって天狐に向う。

 しかも其の炎は続け様に3個連なっている。


 俺の放った新たなスキルに驚愕した天狐は、振り上げた拳を下ろし咄嗟に【三尾 水鏡】を唱えるが・・・

 其の行為は無駄に終わった。

 天狐を守るように出来た薄い膜の【三尾 水鏡】はその効果を発揮する事無く打ち破られたのだ。

 何の防御も無く、天狐は諸に【九尾 鬼炎三連】を浴びる。

 

 此れまでの戦闘で、一切傷を負わなかった天狐が見る見る焼け爛れ酷く苦しんでいる。

 其の隙に【八尾 月読】でイリスとセフィリアの側に行き、二人を抱えて再度【八尾 月読】で遠くに移動する。


 安全な位置に2人を届けた後、今度はパステルを同じ様に移動してイリス達に預ける。

 何とかパステルは息をしていたが、虫の息だ。

 俺は、更なる怒りを胸に、天狐の元に向かい決着を付けるべく対峙する。


 天狐は初めて傷を負った衝撃から怒り狂い、猛然と俺に攻撃を仕掛けてきた。

 俺は、再度【九尾 鬼炎三連】放ち、天狐を炎で包む。

 その隙に、また体中にスキルを纏い天狐に打ち込む準備をする。


 頭で【九尾 鬼炎三連】、右手に【スラッシュ】左手に【ファイアーアロー】。

 だが、左手に込め様とした【ファイアーアロー】が発動しない。

 何度も試したが一向に込められる気配が無い。


 もしや!

 融合してしまった事で火魔法が無くなったのか!


 俺は、咄嗟にそう思い、改めてスキルを込めなおす。

 頭には【四尾 氷雨】、右手には【毒針】、左手には水魔法LV4の【アイスウォール】。

 すると今度は前と同じ様に、新たなスキルが頭に浮かぶ。


 【四尾 毒氷雨】


 天狐の頭上から凄まじい圧力で放たれる水の槍が降り注ぎ天狐の体に穴を空ける。

 しかも空いた穴は禍々しく焼け爛れ、腐っていくのが見える。


 更にもう一度【九尾 鬼炎三連】を放って止めを刺す。

 満身創痍になった天狐は、【四尾 毒氷雨】の攻撃を受け体中に穴を開け毒に犯される。

 更に【九尾 鬼炎三連】で焼かれながら、二つの攻撃で舞い上がる毒の霧に包まれ、口から泡を吐いてのたうっていた。


「ガ・・・ギャ・・・」


 断末魔の声を発し、天狐はその場で息を引き取った。

 俺は全力で出し切った魔力の枯渇と、胸を切り裂かれた痛み。そして背中から来る苦痛と流れた血により朦朧となっていた。

 天狐の最後を見届け、魔力を振り絞り【八尾 月読】でイリス達の下へ行く。


 フラフラになって現れた俺に、間髪入れずイリスが飛びつく。

 俺を抱きしめ、愛おしそうに撫で回しながら泣き崩れた。


「ラルス・・・ラルス・・・生きて・・・生きて・・・グス」


「ああ、天狐は倒したよ」


「えええ?まさか・・・」


「まさ・・・か・・・・さ・・・後は・・・まか・・・せ・・・た」


「ラルス!ラルスーーーー!!!」


 俺はイリスに抱きつかれながら、気を失った。

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