表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/67

第一話 死んで異世界行きをGETしたぜ

 眩い光が辺りを包み、俺の視界が塞がれる。

 一瞬にして白い空間が広がり、俺は意識を刈り取られた。

 気を失ってどの位経っただろう。


「こ・・・此処は??」


 気が付いてみると見知らぬ空間。

 全てが真っ白な世界に只1人俺だけがいる。


「おーい、誰かいませんか~~~っている訳ないか」


 だって見渡す限りの白・白・白。

 何処を見ても真っ白で地平線らしき存在も見えない。

 だって真っ白なんだもん。


 途方に暮れるほどの真っ白い空間で呆然としていると、突然背後から声が聞こえる。


「あ、気が付いたんですね」


「うひょ!」


 突然声を掛けられてビビる俺。

 不意打ちを食らったのだから仕方がない。

 予想しない事態は誰だって驚くもんさ。

 だから、決して俺が臆病なわけではないですよ?


「お、驚かなくっていいですよ?彰人君」


「・・・だれ?」


 俺は勤めて平静を保ち声の主を探す。

 聞こえてくるのは後ろの方からだが、姿が見えない。

 

「えっと、貴方達の言う所の神とでも申しましょうか」


「へ~~神なんだふ~~~ん」


 神と名乗る声の主に気のない返事を返す。

 声を掛けられた時は驚いたが、今は冷静に反応できる。

 この状況に、神の声、これは待ちに待ったアレじゃないかと。


 返事を返してから、俺の思考はフル回転している。

 これこそ待ちに待った、憧れの転生ものじゃないかと。

 何時も読むラノベにありがちな展開は、今の状況にそっくりだ。

 

 俺は沸き起こる興奮を抑えるように自分に言い聞かす。

 失敗は許されない。


 転生前のこの状況は、千載一遇のチャンスだ。

 新しい世界で望む生活を手に入れるためには、此処からが正念場だ。

 もし仮に俺の考えが当たっていれば、チートを頂く過程が重要だ。


 神の言う事を吟味して、己の欲望を満たせる転生を勝ち取らなければ成らない。

 そんな俺の思考を他所に、神は少し困惑した声で尋ねてきた。


「神と言って、驚かないんですね?」


「これでも驚いていますよ?」


「ですか?」


「ですよ?」


「神ですよ私」


「神なんでしょうね~」


 意味もなく復唱しあう神と俺。

 一応驚いているが、もし此れが転生ものだった場合は想定の範囲だ。

 ずっと脳内シュミレーションを行ってきたのだから取り乱す訳がない。


 妄想乙とか中二病とか言われても気にしない。

 それ程までに俺はこの状況を待っていたのだ。


「兎に角、彰人君はちょっとした事故により死亡されました。その事故の償いの為、此処にお呼びしたのです」


「はい」


「って死んだんですよ??」


「ええ、死んだんでしょうね~」


「こ・・・此処まで驚かれないと私の方が吃驚です」


「そうですか、続きをどうぞ」


「・・・何だか釈然としませんが」


 神はブツブツ言いながらも俺に事の顛末を告げる。


「それで・・・その死亡原因ですが、彰人さんはお皿の直撃で頭を割られて死んだのです」


「お皿??」


「はい、お皿です」


 色々なシュミレーションをしていたつもりだが、お皿で死ぬとは思っても見なかった。

 俺の最後の記憶は光に包まれたところ。

 その前は部屋で机に向って勉強していたはずだ。


 此れでも高校2年生。

 試験もあるので真面目に数学を解いていた。

 つまりお皿が飛んでくる状況がない。


「どうやってお皿が飛んできて死ぬんでしょうね?」


「それは、妻と夫婦喧嘩になりましてね。妻は怒ると怖いんですよ。そこで咄嗟に地球に退避したんです。ランダムに移転したらそうだっただけなんですがね。ですがそれでも見付かってしまって、ハハハッハ。怒り狂った妻が私に、お皿を投げたんですよ。女神の放つお皿の威力を想像したら怖いでしょ?だからひょいっと避けたんですよ。っで、後ろを見たら彰人さんの頭が吹っ飛んでいて・・・妻も手加減していたんですがやっぱ女神じゃないですか。威力がね・・・テヘペロ」


「アホか!!!!!!」


「うひぃ!」


「ありえない!ありえないわ!流石に予想してないわ!」


 流石の俺も声を荒げて抗議する。

 動揺を隠せないというか、まず神の夫婦喧嘩に巻き込まれて死ぬ状況は想定外だ。

 まさに現実は小説よりも奇なりとは言うが、この事態は想像の斜め上を行っていた。


「つか何で夫婦喧嘩に俺巻き込んでんですか!」


「いやはや面目ない」


 声の雰囲気から、かなりりしょげている様子だ。

 神と聞いたので、俺の知識から想像する神々しく威厳に満ちた姿を想像していたが・・・

 今は、しがないサラリーマンの姿が頭に浮かぶ。

 哀愁漂う背中が頭に浮かぶと、さっきまで上がっていた血圧も下がってくる。

 流石に可哀想になり、俺も言い過ぎたかと大人しくする。


「それでなんだけど、彰人君にはお詫びとして特典付きで、私の世界に転生させようと思うのですがどうですか?」


 怖ず怖ず聞いて来る所がまた哀愁を誘う。

 仕方が無いので、取り敢えず神との会話を恙無く進めることにした。


「私の世界って?地球じゃない所ですかね?」


「ええ、神々はそれぞれ管理する世界を幾つか持ています。私はミースという世界を中心に幾つか管理してましてね。其処へご招待と言うわけです」


 願ってもない話だ。

 哀愁漂うリーマン神への同情が沸き起こるが、此処は心を引き締めなければ。


 元々異世界に行く事は問題ない。

 むしろ、この話の肝は特典の方だ。

 特に今回のケースは神の失態による所が大きい。

 出来得るだけ特典を引き出し、様々なチートにより転生先で俺TUEEEを実現したい。


「解りました、お世話になりたいと言いたいのですが・・・」


「ですが?」


「特典が気になりますし、何よりもミースの事を知った上で無いと特典の良さが解らないです」


「あああ、そうですね。では簡単にミースについて話しましょう」


 ミースは地球と良く似た環境の星で、公転周期や自転周期もほぼ同じ。

 つまり1年365日で1日が24時間。


 星を覆う陸地は3対7で陸・海となっていて地球と然程変らないそうだ。

 気候も地球同様で赤道付近が暑く、極点に行く程寒くなる。


 ミースに存在する知的生命体は様々だ。

 人族・亜人族・妖精族・魔族・竜族などが存在する。

 亜人は人族に野生動物の遺伝子が組み込まれた者達で、犬や猫を筆頭に色々な種族に分かれている。

 妖精族はそのまま妖精さんだ。

 エルフやシルフ、ゴブリンやドアーフも妖精族に該当する。


 魔族はちょっと区分が難しい。

 オークやコボルト、吸血鬼に魔人などは魔族に分類される。

 竜族は俺達で言うところの爬虫類が該当する。

 ドラゴンを筆頭に恐竜みたいなのやリザードマンも竜族だ。

 その他族で括れない者も沢山居て、ファンタジー要素満載になっている。


 言語はそれぞれの種族で違うが、公用語として人族の言葉が標準語となっている。

 一番数が多いし、ミースの何処にでも居るので自然とそうなったらしい。

 国については沢山ありすぎて割愛するが、俺が転生する先はアルティナ国と決まっているそうだ。


 これは人族最大の国家であると同時に、比較的多種族の国家と友好的であること。

 多種多様な人種が、安全に過ごせるのが良い点が転生先として最適と判断した結果だそうだ。


 文明レベルは地球の中世レベルかそれ以下。

 科学文明は全くといって発展していない。

 その代り魔法が発達していて、生活の様々な所にまで魔道具が発展している。

 神の方針により、世界は魔物で溢れていて、戦う事で競争力を高め進化を促している途中だと言う。


 戦う為には力が要る。

 故にミースでは誰もがスキルを使う事ができるようになっている。

 後、解り易く数値化してあり、スキルLVに応じて威力が増す。

 魔法も武芸も全てスキルになっているし、生活における料理や洗濯までスキルだそうだ。


 ステータスもそれぞれ数値化されていて、腕力や知力が具体的に解ってしまう。

 ただスキルもステータスも成長に合わせてランダムに決まるので、自分で数値を弄る事はできない。

 最後にステータスは見る事ができる。

 見る方法は色々あるが、一番簡単なのがギルドに登録した際にもらえる登録証が最たるもので、これは現地で実感して欲しいとの事。

 

 一通りの説明を受け、俺は内心喜びを隠せない。

 だって、待ち望んだ転生に加え、想像していた通りの世界が待っているのだ。

 だからこそ、ここで重要な特典を吟味していかなければならない。


「ミースの事はある程度解った。それを踏まえて特典はどんな感じですか?」


「じゃあ言って行くね。特典なんだけど、異世界での言語を全て取得済みにする事」


「ふむ」


「容量無限のアイテムBOXを付ける事」


「ふむふむ」


「あらゆる物を見透かす鑑定スキルを付ける事」


「ふむふむふむ」


「以上で~~~っす♪」


「はああああ!!!!」


「うえぇえええええ?何か不満があるの??」


「当ったり前じゃないか!!何処が特典だよ!!それ普通に必須もんじゃないか!!」


 あまりにもお粗末な特典に思わず唸ってしまった。

 最初に此処が肝心と冷静に神から色々貰ってやろうと思っていた俺は何処へやら。

 予想とは大幅に違いすぎて怒り心頭だ。


「ええええ!言語に不自由しないんだよ??しかも好きなだけ物を入れれるアイテムBOXも付けてるし、何でも見透かす鑑定もあるんだよ?なのに何が不満なの??」


「不満だ!不満だらけだ!!せめて最強スキルとか目も眩む大金とか、神のお供とかあってもいいじゃないか!」


「いやいや!それあげたら世界のバランス崩れちゃうじゃん!」


「崩れて結構!その位のお詫びくらいくれや!夫婦喧嘩の被害者だぞこっちは!」


「っぐ・・・痛いところを・・・まあ非は此方にあるけど・・・」


「だろう?だったらもう少し考えて誠意ってもんを見せてもらいたいわ!」


 どう聞いてもクレーマーですハイ・・・

 冷静なやり取りを考えていたのにどうしてこうなった。

 自分でもちょっと言いすぎかとも思ったが、此処は引けない。

 やっちゃった経緯はもう戻らない。

 後は強引にでも何かを勝ち取らなければ。


「仕方ないな・・・じゃあ望むスキルを1個望むLVでどう?」


「1個だと?何言ってんの1個じゃどうしようもないじゃん」


「いや、1個でも無茶してるよ?世界のバランス的にね。流石にこれ以上の譲歩は出来ないよ」


 神の声はさっきまでと違い強い意志を込めているのが伝わる。

 本当に1個しか無理なのか・・・

 しかし、俺は諦め切れない。

 1個でも望むLVで貰えたら、それはそれでチートではある。

 だが1個では俺の欲望は満たされない。

 

「わかった、神の分は1個で良い」


「そっか~ほっとしたよ~これで私のミスも彰人君の望みを叶えると言う事でプラマイゼロになる。管理者としての不均衡を招かなくって済んだよ~」


「おい、待て。俺は神の分はと言ったろ?」


「ふえ?」


「女神の分、もう1個追加する事忘れないで欲しいな!」


「うぇぇええええ???」


「当然だろ?神と女神の夫婦の喧嘩に巻き込まれたんだろ?神1個、女神1個で我慢するよ」


「ちょ!ちょっとまて!1個だけって言ったじゃん」


「だから神の分はね!つか嫁の投げたお皿が原因なのに、嫁の責任は無しかよ?それは余りにも無責任すぎやしないか?」


「っぐ・・・ちょっと待て・・・電話するから・・・」


 またもや凹んだ声を出してくる神。

 ついつい俺は噴出してしまった。


 電話って神が何言ってんだか。

 神々との交信が電話という機能である事に俺は腹を抱えて笑っていた。

 そんな俺の笑い声を無視して、白い世界に神の小声が聞こえてくる。

 

「なんだよ~うん。うん。でねハニーの責任を問われてさ・・・うん。うん。でも彼の言う事は無視するにはちょっとね。それにね、地球の神との約束上無視できないんだよ。うん。うん。でも。・・・だから・・・うんうん。じゃあそれでいい?うん。うん。怒っちゃ駄目だよ、穏便に穏便に。そうそう、うん。ごめんねハニー。うん。うん。もちろんハニーは悪くないよ?うん。うん。上手く話を纏めるから、じゃあ。」


 どうも神は俺には聞こえてい無いと思っているだろうか。

 コホン、と咳払いをして電話の終了を告げる。


「終わった?」


「ああ、女神もたいそう心を痛めていてね。彰人君の為に同じく1個授けるってさ」


 いやどう聞いていても怒っていると言っていたのに。

 俺には慈悲深く優しい女神像を押し付けてくるのか。

 笑えね~ジョークだよ神よ、尻に敷かれすぎじゃね?


 しかし、これで少なくとも2個はチートを確保した。

 後はサービスと言う名目で何処まで引き出せるかだ。


「解った。スキルはそれで手を打とう」


「良かったよ、じゃあどんなスキルが良いか言ってくれる?リストを見せようとも思ったけど多すぎるしね。聞いた内容に近いものを説明するからそれで決めてくれればいいよ」


「じゃあ俺の望むものは・・・」


 俺はずっと考えていたチートを神に向かって要求した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ