表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/34

セカンド・・・

翌日、朝練のとき、彼はいなかった

終わって教室に入ったときはすでに席にいて

彼は部活の友達に朝練さぼったことで騒がれていた

放課後きっとかなり走らされるに違いない


私が席に座ったとき

こっちを向いた彼と目が合って、わかった


もう話したんだ

・・・そうか・・・

わりとせっかちだから

気になることはすぐに行動にうつすタイプだしな・・・


でも目が合ったときの彼は

少し傷ついた表情をしていた

きっとすんなりは行かなかったんだろう



授業の合間とか、部活の前とか、話すことはあったけど

みんなと一緒だったり、時間がすくなかったりで

きちんと話せない

目が合うものの口からそういう言葉が口から出なくて

彼もそうで・・・


友達と話してても

お昼ごはん食べてても

目が合う

話がしたい

でも、話せない


こういう時って

呼び出したら、とも

声をかけたら、とも思うけど

二人でこそこそ話してるって、やっぱり目立つし

友達たちもなんの話だ?って入ってくる可能性もある

たとえ、そのとき入ってこなくても、後でどうしたのって周りに聞かれてしまうだろうし


でも、いつもみたいに一言で済ませられる話じゃないし・・・





廊下の前を歩いてた彼がちらっと後ろを向いて

でも、私が友達と並んで歩いてるのをみて、躊躇して

顔を前に戻す


「ラブラブなの?あんたたちは」


ふいに友達が言った、私と前を歩く彼を見て

顔が固まる・・・何?


5時間目の休み時間だった

次は音楽だなってばらばらとみんな移動教室に向かっている


「お互い目が離せないって感じだよ、なんなの急に?これ、今朝からずっとじゃない?」


言葉で混乱する

話せない、目が離せない?

離したい?ううん、違う

話したい、だけ


うわ、そういう風に見えたんだ、すごい恥ずかしい・・・

顔がかあってなってしまう

すごく気をつけてたつもりなんだけど

みっ見れない、もう見れない、彼の顔は



「・・・何言ってんの、全然、気になっただけ、朝練休んだって聞こえたから」


「ああ、めずらしいよね、男子もさぼりには厳しいのに・・・ありゃ放課後しぼられるだろうな」



私のせいだよな・・・わるいことしたな・・・


「あいつ、そういうのきっちりしてんのにね」


「うん・・・」


今日はもう学校では話せないな

塾のバス停に早めに行こう・・・


部活に先輩はきてなかった

会うのが怖かったからほっとした

それにもともと彼女のことは嫌いじゃなかった

尊敬してた、いい後輩でいたかった

でも私の中に被害者意識があって、その気持ちが消せない

そんな態度も先輩に見せたくない


バス停には彼も早めに来ていた

バス停の前にある金網に並んでもたれる


「あれから部活の連絡網見て、先輩にメールしたんだ、で、朝、話した」


そうか、連絡先彼は知ってるんだ、部長だから・・・チビだけど

同じ高さに顔がある彼を見る


「先輩も眠れなかったって顔をしてて、なんか話してても泣くの、我慢してるって顔しててさ」


「うん」


「なんか可哀想なことしたなって思った」


「傷つけたのは私だよ」


「そうだけどさ・・・先輩っていつもはああいう感じじゃないって言うか、なんかもっとしっかりしてて、さっぱりしてて」


「うん」


「だから、なんかな・・・難しいよな、こういうのって、俺、わかんねぇわ」


私もそうだったよっ心の中でつぶやく、今でもそうだよ


「先輩、キスしてごめんって言っといてって、きっとお前のファーストだろうからって」


急にサーッと血の気が引く

そうか、私のファーストキスって先輩なんだ

最初の相手は女・・・になったんだ


「・・・私・・・やだ・・・最初が女の人なんて・・・」

いくら先輩でも、これはキツイ

唇の感触を思い出す・・・やわらかくて小さくてふわっとしてて・・・

ダメだ、ありえない


硬直した私を見て彼があわてる


「しっかりしろって、キスなんて犬とかフランス人とか挨拶でするから、大丈夫だから」


私の肩を手で押さえてすぐそばにくる

顔が近い、1cmくらいしか隙間がない

彼の顔で影ができるくらい

真剣な顔だ、彼らしいな、やさしいよなこいつやっぱり

まつげ綺麗だな、ばさばさして・・・

ショックを受けてるはずなのに

いつになく近い彼の顔を見て、意識のどこかでそう思ってる


「俺は全然平気、犬でも・・・友達でも・・・」


1cmはあった彼との隙間がなくなる


唇が重なる、一瞬だけ、頬にも片方ずつキスされて

彼の唇が上をむいたので目を閉じる

両目にも鼻にもおでこにも髪にも

ホンの少しだけ

触れているだけみたいに、でも

次々と・・・全部に・・・隙間埋めるみたいに・・・


しばらくしたら、それがとまった

視界が明るくなったのが目をつぶっていてもわかる

ゆっくりと目を開けたら

すこし離れたところに彼の顔

まだ真剣で、でもどこか心配そうで・・・


「大丈夫だから、な?」


言い聞かせるように・・・


「これは・・・」


どういうつもりって、聞きたくなったけど

黙ってた

本気で心配してるのがわかるから

水をさしてしまいそうで・・・

ほんとはかなりうろたえてるけど


「うん」


そういうと、彼はホッとしたようにうなずいた



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ