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相談

友達を見つけて、助けをもとめようと口を開きかけた



今の出来事を話そうとして・・・


でも、すごく重かった・・・話すとすごく大事になりそうで・・・


部活の先輩、つまり私だけではなく、今目の前にいる友達の先輩でもある訳で

先輩のこと、知ってしまったら、1,2年生はどう思うんだろう


みんなが知ってしまったら・・・なにがどうなってしまうんだろう・・・



うかつにはいえない気がした・・・



とりあえず、落ち着いてから・・・考えよう・・・


でも、怖い・・・


「すごい早かったね~どうだったの?」


「・・・あっいや、引継ぎの話だった、待っててくれてありがとう、早く帰ろう」


そういうと友達たちとまたがやがやいいながら歩き出す



早く、早く、行こう・・・先輩に追いつかれる前に・・・


心の中でそう唱えながら、黙って歩いた






家に帰って、シャワーを浴びて、ご飯を食べる為にダイニングテーブルの席に着く


いつもは台所で立ち働く母親を追い掛け回すようにして、さんざん学校の出来事を話すけど、今日はできない


席についても顔が上げられない


どういっていいかもわからない



「ほら早くご飯食べないとバス間に合わないわよ」


「うん」


ほんとはご飯なんて喉を通らない、だからどうしてもお箸がすすまない

なんとかお味噌汁だけ飲む

 


「姉貴が食べられないなら俺が食ってやるよ」


弟がそういいながら、私のお皿に乗っている肉団子を取って食べる

特に抵抗はしない・・・そんなことどうでもいい



「何?マジで食わないの?」



いつもと同じ風景、同じ団欒、でも・・・

私の頭の中はいろいろうずまいてて

とても平静なフリができない



「・・・行ってくる」


「パン持ってく?途中でおなかすくでしょう」


「いい」


態度悪かったなって罪悪感が走る

玄関まで出てきた母親に振り返って目をやると心配そうな顔をしている

でも、なんとなく家にいづらくて外に出る。

バス停までいってしばらくすると、彼がやってきて


「あれ?今日、早いじゃん、めし、ちゃんと食えたのか?」


能天気な様子でやってくる彼


目だけ彼のほうを見て、また地面に視線をおとす


「なんだよ、なんか怒ってんのかよ」


「違う、考え事してるだけ」


そういうと、「ふうん」っていいながら

めずらしいな、勘で生きてるお前が考えることもあんのか・・・って付け足す


でも、やっぱり私はそんなからかいにのってもあげられなくて・・・

ずっとバスを待っている間、私は顔を上げなかった


バスの中も教室もなんにも言えなかった

授業内容はうわすべりだし




私は先輩のこと好きだったけど、そういう好きじゃない

でも私はそう勘違いさせるような態度をとったのだろうか・・・

先輩は悪い人じゃない

でも私はもう先輩の前で無邪気にはなれない・・・




塾が終わってバスを降りて

そのままのろのろと家に帰ろうとしたとき


「なんだよ、なにがあったんだよ、今日おかしいぞお前」


彼が怒った風にいう

あんたはいいよ、心の中で毒づく


純粋で無邪気で


穢れなくてさ


あたしなんてこの事でなんかすごい汚された気がするんだ



「俺に言えないことなのかよ!!いえよ!!」


叫ぶように彼が言った


私は悔しくなった


なんであんたに怒られないといけないんだ


「うっ・・・」


唇を噛んで泣くのを我慢しようとしたけど、ダメだった

声をこらえようとしてしても奥からこみ上げてくる嗚咽はとまらない



「なっ泣くなよ!どうしたんだよ」



彼のおろおろした声が聞こえた

さっきまで怒ってたくせに


急に慌てふためいた彼の態度が情けない


・・・もうダメだ・・・と思ってしゃがみこむ


ひたすら、泣く・・・


しばらくしたら、影が動いて

目の前に彼が立ったのがわかった

私に合わせて、ゆっくりとしゃがんで

ハンドタオルを私の顔の前に差し出す

私は奪うようにそのタオルを取ると顔を隠すようにした


「うっうっ」


彼の手が背中にあたる・・・しばらく、そのままさするようにして

ゆっくり自分のほうに引き寄せて・・・


彼の胸に顔をうずめてる自分がいた

しばらくじっとそうしてた

彼の息遣いが頭のほうでして、私の髪が揺らされる



更にどんってひきよせるから

私の体重が彼にもろに重なり

勢いで彼が地面にしりもちをついてしまう



思わず彼と目を合わせて

なんか笑ってしまう・・・



「遅くなったし、お母さん心配してるだろ?お前ん家行くから、話聞かせろよ」


そういいながら立ち上がって、服についた土を払うと、まだ地面に座り込んでいる私に手を伸ばして

立ち上がらせて、私の足についた土も払ってくれる


「うん」




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