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プレゼント

その日以来、しばらく彼が私に声をかけることはしなくなった

目が合うこともあまりない


それでいい、そう望んだことだ、と自分を納得させる

今は辛い気持ちを忘れよう、と思う

泣くのは夜部屋に帰ってからと自分に誓いを立てていた


しばらくすると新しい環境にもだんだん慣れ始めた

しばしば同じ科目をとっている人たちと顔見知りになり、一緒に空き時間に話をしたり、

教室で一緒にご飯を食べたりしていた

たくさんの学生がいる中でなんとなく仲良くなっていく友達

今までは密接な人間関係しか存在しなかった私は新しい友達とのスタンスの取り方に戸惑うことも多かったが、似たもの同士が集まるということだろうか、一緒にいても楽しくてそれほど気を使うということもなかった


彼もまた新しい環境や人間関係が築かれていっているようだ

新しい大学というフィールドで彼はどんどん友人を作りいろんなものを吸収していった

もともと臆することがない性格で裏表も少なく、さっぱりしてるし中性的な目を持つ彼は同姓のみならず異性にも警戒されずにすんなり相手の懐に自然と入っていけた


校内にいるといろんな人が彼に声をかける

彼自身が誰かを見つけて声をかけそのまま一緒にいたり、一緒にどこかへ行ってしまう

そんなこともしょっちゅうだった

彼のいるあたりを時々見ると彼の周りに見知らぬ顔がどんどんと増えていっているように思った

私がいなくなった部分は自然と他の人が穴埋めして行くのだろう

気がつくと彼の傍にはいつのまにか、特定の女の子がいた

よく一緒に授業を受けているようだった

新しい恋人なのだろうか、遠くからみているだけなので判断が難しいが彼の様子ではそんな感じではなかった


私の代わりなのかもしれない・・・すごく仲の良い女友達・・・

じゃあ、もうあそこには私は戻れないんだって考えてしまうと胸が苦しくなる



そんな生活が続いていたが、昔からの女友達とは休みの日には一緒に遊びに行ったり、買い物に出たりはしていた

その日も、部活時代の仲間一同から彼への誕生日プレゼントを買いに行くから付き合って欲しいと頼まれた

今は彼とは仲良くはしてないけど、趣味や好みは一番わかってるだろうから、一緒に選んで欲しいといわれた

友達は優しかった

私がまだ彼に未練があるのをわかって気遣ってくれたのだ

一緒に選んだとはいわないから、と彼女は約束してくれた


初めに行くのはスポーツショップ

彼に似合いそうな、男物のスポーツウェアや用品などを探していたが、これといったものが見つからず、メンズ用の小物が置いてあるショップに移動する

前ほど毎日一緒にいらえる時間が少なくなった分話すことがいっぱいあって

私達はプレゼントを選びながらもおしゃべりはとまらない

夢中で話しながらも店においてあるものを見たり、気になるものは触ったりして物色していく

友達はもう私に選ぶのを任せっぱなしにして大学での出来事や、みんなの今の様子などをどんどん話していた

ふんふんと頷きながらもピンとくるものがなくて隣のセレクトショップに移動する

そういえば、大学に入ってからも高校のときに使ってたかばんを持っていたな、と思い出し、かばんのコーナーに移動する

無難なのはリュックサックだろうか、トラッドでもスポーツウェアでも合いそうなタイプで

教科書とかが入るくらいの大きさで・・・

リュックサックのコーナーへ行くと、壁一面に色違いのリュックがディスプレイされている

20色くらいあるだろうか、その中の一つの色が気になる

手にとってタグを見るとフランスのメーカーのものだった

持ってみると生地は軽い、縫い目はしっかりとしているから早々には破れないだろう

何より色が素敵だ、彼に似合いそうな色だ

日本にはない色だが、派手な感じもしない親しみやすいグリーンがかったブルー

女性が持つこともできそうなその色はやわらかい感じがした

・・・こんな感じの色の服を彼は昔持っていたかもしれない


大きさはどうだろう、彼の持ち物を思い出す

お財布はこの付属のポケットに入りそうだ

ペットボトルはここ、テキストは大きいここに、筆記具などをまとめてるファスナー付きの袋もここ

携帯はサイドポケットに入れればいいかな


大きすぎず小さすぎないこのリュックは彼にぴったりだと思う


友達に「これどう?」と聞くと


「いいんじゃない・・・なんか”らしい”って感じがする」


「うん、なんかこんな色の服、持ってた気がするんだよね」


「うーん、いつくらい?」


「中学くらいかな、なんか外国のおみやげかなんかだった気がする」


女友達は、そんなTシャツ着てたかな~よく覚えてるよね~って言いながらレジにそのリュックを持っていって清算した

店員から、商品を受け取ると


「今日のお役目終わり~、さっお茶しに行こう」

目を輝かせて言う

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