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逃亡

家の中に入ってドアを閉めて・・・そのままじっとする

門扉をしめようとして彼に声をかける声

弟が帰ってきたんだ

楽しそうに話して別れたようだ

弟が玄関のドアを開ける前にいそいで台所に行って冷蔵庫から水をだしてコップにそそぐ


弟も家に入ると真っ先に台所に入ってくる


「ああ、おれも水欲しい」そういって自分専用のマグカップを棚から取り出して渡すので

水をたっぷり入れて渡す

大学に入ってから、酔っ払って帰ってくることが増えた

そういうのがまだ新鮮で楽しいんだろう・・・なんか懐かしいな、そういうの


「あいつとまだつるんでんだな・・・そこで会ったよ、相変わらずいいお・・・」


私の顔をみた弟の顔から表情が消える

そうだ・・・涙で顔がぐちゃぐちゃだったんだ


「違うって」

泣かされたのか、とは聞かなかったけどそう思ったんだろうな、と思って否定しておく

弟はもう何も言わない

さしだした水をごくごくと飲んで気まずそうな顔をして部屋に上がっていってしまった


弟は彼が好きだった

私と彼が高校生から大学生に入った辺りの頃、弟はやっかいな思春期を迎えていて

家の中は弟の放ついらついた空気にぴりぴりしていたが

そんな弟をほぐしていたのが彼だった


年が近くて、学校の先輩で、部活のOBでもある彼

私も同じなのに、同じ男だからか、それとも兄妹はダメなのか

その数年は弟は私とはあまり口をきいてはくれなかったが

彼とはよく楽しそうに話していたし、悩みを打ち明けたり、

時々は家に行ったり来たりもあったらしい

そのうち性格もまるくなって家族との会話も徐々に増えた


でも、弟は自分が落ち着いた頃から私がしょっちゅう彼のせいで泣いていたことに気づいていたと思う


弟の予備校のある日が私のバイトのある日と重なると同じ電車に乗っていることが多くて、帰宅時間がよくかぶっていた

あんなに一緒に家に帰っていたのに大学に入ってそれがピタリとやんだと思えば

毎日のように、家に入ってから私の部屋からいつも泣き声が聞こえてくる


高校の半ばに彼とキスをして以来

私は彼をできるだけ遠ざけようとしていた

中学生の時に席が隣になった彼と知り合って以来

私は彼が大好きだったし、高校生の半ばまでは本当に兄妹のように仲が良かった

彼に恋人ができても応援してたし、私の恋も見守ってくれていたと思う

でも、私が恋人と別れたその夜から

私は彼を男として好きなってしまった


彼は変わらず私を友達として見ていてれていたから

私が彼氏と別れて自由になったところで

前と同じように2人の距離を縮めようとしていたけど

私はすでに彼のことを純粋に友達としては見れなくなっていた

そしていつか私の気持ちが彼にばれてしまうのではないかと恐れていた


目を合わせるとどきどきするからつい下をむいてしまう

話をすると口から好きだという言葉がこぼれそうになるから気楽に声がかけられない

同じソファに並んで座っていても隣にいる彼のほうには顔がむけられない



そうやって、気をつけよう、と慎重にしていたはずなのに

卒業間際に彼にキスされた時、タガが外れて

気がついたら私は彼のシャツを握りしめていた

頬にあてられただけのキス

それが深いキスに変えようとしたのは、どちらだったのか怖くて確かめられない

もしそれが私のほうからだったら・・・そう思うともう顔を合わせることもできなかった


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