おいしいお店
思わず立ち止まって「なに?どしたの」って聞いてみたけど
前を向いたまま、「ふふふん」って得意げな顔で先に行こうとするから
あわてて歩調をはやめて追いかける
彼の袖をつかんで、もうって顔をしたら、にっこり笑って、歩調をゆっくり合わせてくれた
彼のおすすめの店は
ちょっとこじゃれた感じのところだった
暗めの照明、そしてあちこちに観葉植物が据えられていて
ライトを綺麗に浴びて緑色に輝いている
なんとなく空気もおいしい気がする
なんか落ち着くなぁ
音楽もゆったりしてるし
椅子も座り心地いいし
アルコールのリストはかなりあったので、私の分もオーダーを彼に任せた
私には軽めのビール
自分には苦いビール
その後、おつまみはラーメンの後だから軽めだよねっていいながらさくさく決めていく
そして、私のためのナッツとチョコ
「前、食ったとき、チョコが苦くてナッツがなんかいろんな形があった」
「それは期待できるかな」っていいながら、いつもだけどひっかかる
前に一緒に飲みに行ったとき、そのメンバーの中に女の子もいた?
男の人だけでお店に来て、チョコはきっと頼まないから・・・
そんなことをぼんやりと考えてたら
ビールが来て
改めてグラスを手に持って、彼を見る
「で、今日は何に乾杯するの?」
「お互いの健康とか、前途を祝してとか?」
「なによ、いいことあったんでしょう?そのお祝いに乾杯しようよ」
おもむろに前をみて、正面に座っている彼の顔を見る
もう大分慣れたけど、ほんとは未だにこの位置は落ち着かない
今みたいに、向きあって座ること
学生時代は横に並んで座ってることばっかりだったから・・・
こういう2人席にに座るのって、大学を卒業して、お互い仕事を始めて、外食するようになってからだから、ほんとにここ2,3年だ
最初はなんか気まずいし、照れくさいし、恥ずかしくてしかたなかった
彼のほうは・・・やっぱり最初は戸惑ってたと思う
初めて、二人で出かけたときは、なんか居心地悪そうだった
そんな彼の態度に、このまま、私と彼とのこの関係はフェードアウトかなって一瞬目の前が真っ暗になったくらいだ
まあ、そういう心配はすぐ彼の変わらぬマイペースぶりに消えていったけど・・・
学生時代の彼の顔を思い出す
どこがどう変わって、こんな大人顔になっちゃったんだろう
すこし丸みのあった頬やあごのラインが細くなって
学生のときは真っ黒に日焼けしていた顔色も今は薄い
鼻は昔からすっきりしてるし
私がひそかに気に入っているびっしりついてるまつげは健在
髪は少し長くなって前より、やわらかさを感じる
そして、目・・・
・・・あ・・・
私しばらく彼の顔を見てたみたい
目が合って、気づいた
「これって見つめあってるみたいだな」