彼の思い
中学時代と変わらずこんな風に泣いてるなんて
全然私は成長してないんだな・・・
場所まで一緒なんて
しばらく、彼の胸の中でぐずぐずないていたけど
そう思うとおかしい気分になってくる
でも、まだ離れたくないな
でも、泣いた原因は先輩じゃない
なぐさめてる『彼自身』のせいじゃないか
泣かされて、泣きついてるのか、私は
「前もあったな、こういうこと」
彼が話し出す
くっついた彼の体の胸の上あたりの皮膚が声を出すたびに震える
ここから彼の言葉が出るんだ
彼の心の声を聞こうと耳を押し当てる
「あん時は、すげぇてんぱってた
家に帰ってさ、部長引き継いで間が無いのに、朝練休むって連絡してヒンシュク買うし
女子の3年の先輩を呼びつけるって言うのもハードル高くて
しかもああいう話だっただろ?
放課後はビシバシ別メニューでしごかれて
お前と話しなきゃって家帰ってから飯急いで食ってヘロヘロになりながらバス停行って・・・」
「・・・そうだったんだ」
「あの時は、ファーストキスの相手が女だってショック受けてるの見て
なんとかしなきゃってキスしたけど
全く女と思ってはしてなかった
そういう意味では純粋に好きだったんだな、おまえのこと
男だったら、もっと仲良くなれるし、もっと知り合えるのにって思ってた」
「私もそうだったよ」
「うん、そんな感じに見えたよ、おまえは、最初から」
「席が隣になった時からね」
くすっと笑ってしまった
気も合うし、中性的で可愛かったし、男の子なのに警戒しなくていい感じが嬉しかったんだ
弟より仲良かった、あの時期は
「・・・今、キスしたらダメか?」
ビクって体が震える
急に言われたからってだけじゃない
いつも、そういうことを言われると
怖くなってしまう
思わず離れようとして
察知された彼に逆にぎゅってしめつけられる
「たのむ・・・おれを否定しないで」
息がくるしい
「おまえにとったらどうでもいいことでも
おれにとっては、ファーストキスだったんだ
だから・・・断られると、今のおれが否定されたみたいで・・・つらい」
そんな風に思ってるとは・・・




