賞味期限
短いのを少しずつ出していこうと思います。
・・・遅い、勇者一行が一向に現れない。
俺の名前はノア。
魔王軍 東方司令官だ。
魔王様の命により東方部辺境でダンジョンを構え、我が精鋭を率いて怨敵の勇者一行を待ち構えていたのだが、一向に勇者が現れなかった。
おかしい。
魔王様率いる魔族正規軍に匹敵する逸材、練度を誇る配下を揃え、俺、自ら設計された完璧な地下ダンジョン、ありとあらゆる罠に魔物を配置し、私財を投じて各所に金銀財宝、名剣、魔剣、聖剣、ミミックの宝箱を設置し、その情報を近隣の村、街に広めたため、欲に駆られた冒険者や勇者を誘い込む情報操作までし、果には回復の泉の地下水脈を掘り当て、俺の部屋(ボスの部屋)の前にまで設置した親切設計までした最高傑作のダンジョンをなのに最深部の俺の部屋は愚か、部下の報告では第一層すら攻略されていないそうだ。
いや、優秀な俺の精鋭達の働きと、俺の采配が優れているという証にほかならないが、こうも来客が来ないとかなり退屈だ。
だが退屈だからといって怠けていては軍人の名が廃る。
魔王様に下賜されたこの領地をより発展させるため、ダンジョンの拡張と強化、配下の練度を上げ、レベル上げに勤しむ毎日。
最近の新しい軍事訓練は地下で取れる食料の根野菜、茸の品種改良と収穫、薬剤の調合だ。
そんな感じで、いつ勇者一行が来ても万全の状態で迎え撃つ為に日々努力してきたのだ。
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・・・・・・だったのだが、その努力を無にしかねない情報が俺の耳に入って来た。
「・・・・・・報告します! ノア様! 魔王様が勇者に敗れ、魔王軍は敗戦しました!!」
瞳に涙を溜めて部下のスライム娘が報告した。
「・・・・・・は?」
俺たちに一度も出番が無いまま、このダンジョンに気づかれないまま、世界に平和が訪れてしまった。
気がついたら人間側のハッピーエンド。