自己紹介
改稿中
ルーの言葉遣いが安定していませんが
仕事中 男勝り、勝気
猫かぶり中 丁寧語、お嬢様風
プライベート フランク
といった感じに使い分けています。
ガリア王国 王都 ~下級区 下町~
日の当たらないスラム街、どんな栄華を誇る国や街にも日の当たらない影が存在するが、この街を照らし日陰者を逃がさぬ光を放つ太陽が今、一人の少年を連れて談笑しながら歩いていた。
見目麗しい、白い美女と少年……
スラム街を間違っても無事に歩ける組み合わせでは無いが、誰も彼女らに手を出そうとしない…いや出来ないというのが正しいのだろう。
彼女の怒りに触れたものが、どのような末路を辿るかをこの街の住人、いや、この国、世界は知っているからだ。
そんな触れてはいけない禁忌の白いアルビノ美女は周りの反応を知ってから知らずか傍らの少年と笑顔でこの国の来歴を話していた。
「……ガリア王国は国内に遺跡、迷宮、ダンジョンが数多く存在する為、騎士団では人手が足らず、有志を募って調査を依頼し、有益な発見や攻略に大きく貢献した者を騎士として叙勲したという歴史があり、冒険者、探索者発祥の国とされている……つまり、平民でも手柄さえあれば騎士、貴族へと成り上がる事が出来る国なんだが理解したか?」
「強ければ偉くなれるって事? ……この国、大丈夫?」
ルーの(子供にとっては)長い説明を聴いてベルゼは自分が住んでいた国が危うい危険性を孕んでいる事を子供ながら理解を示した。
自分が住んでいた田舎でも偉いと思っていたのは文字や算術を教える占いババや村長だったからだ。
「子供の意見は時に真理をつくな。 ベルの言うとおり、この制度だとこの国は荒くれ者だらけになって直ぐに滅んでしまうリスクも孕んでいる。 だがこの国は千年もの栄華を誇る。それは荒くれ者を制御する為に影で動く英雄たちがこの国を守っていたからなんだよ。」
「ルーの事?」
先日、クレアと自身、その他、各地から誘拐し人体実験をしていた悪党達から救ってくれた女神の様な神々しいオーラを放つ白い女性を見てベルゼが問いかける。
「フフフ、私が英雄か。あながち間違ってはいない三分の一正解といったところだ。」
「どういうこと?」
曖昧に笑いながら、「そのうち分かる」そう言ってルーはベルゼとある店の裏口に立ち止まる。
【悪魔の巣】という看板の店へと……
◆◆◆◆
「これから、仲間を紹介する……といっても今は半分仕事で出払っているから、他のメンバーはそのうちおいおい紹介しよう。」
本来なら全員に紹介出来る筈だったのだが、ルーが遅刻した所為で仕事に出かけたとはいうのは秘密だ。 ルーも、入ったばかりの少年に対し威厳は保っておきたかった。
そう言って裏口の鍵を開け、店内へ入ると疲れた印象を与える妙齢の黒髪の女性が出迎えた。
この国ではあまり見かけない黒髪を短く切り揃え、横髪を胸元まで伸ばして先をリボンで軽く結え、白いシャツに黒いパンツを穿き、腰にはポーチと短剣が挿してある。
女盗賊、冒険者といった風情だが小奇麗な格好と綺麗に手入れされた爪先から、これで琴でも持てば吟遊詩人といっても通用するただづまいを見せる。
「遅いお帰りで、ボス……その子が例の新人かい?」
「ああ、彼を皆に紹介する。 自己紹介もその時に」
「あいよ。」
そう言ってベルゼに向けて微笑みながらルーの後についていき、遅れてベルゼもついていく。
裏口から階下へ、降りると酒場になっており、中年の戦士風の男や、眠そうに杖を磨いている魔道士のローブを来た少女が椅子に腰掛け、机の上で装備の点検をしていたが、ルー達が入ると手を止め、視線を向ける。
「遅れて済まない皆。……彼がベルゼだ。」
「……」
そう言って、ルーは横にいるベルゼを紹介するが、紹介された本人は沈黙したままだ。
10代前半とは思えない凄み、気配を漂わせる少年に興味を向ける面々だが、ここのメンツは全員、一癖、二癖もある人物である為、さして驚きはしなかった。
外見や年齢で判断して強さを測る様な愚かな真似をする人間は早死にするということをこの場にいる全員が理解しているからだ。
そうしてルー以外の三人が思い思いに新入りを観察していたが、中年の戦士風の男が口を開いた。
「俺の名前はゼノン……坊主、これからもよろしくな?」
「アルマだよ、この店では歌姫、ここの仕事では後方支援担当かねぇ」
「ミアータ……、それで君は口が聞けないのかな?」
年長者のゼノンとアルマは全く喋らないベルゼに苦笑いしながらも自己紹介するがルーを姉のように慕魔道士の少女ミアータはベルゼの立ち位置と年上、先輩に対して、無愛想な態度を取る少年に苦言を呈する。
「こらこら、喧嘩するな? ミアータ、彼は少し特殊な環境下にいたから世間知らずな所があるのは許してやってくれ。そこのところはこれから皆で矯正していけばいいしね。ベルゼも彼らは君の新しい家族であると同時に仕事においては先輩なんだから失礼の無い様にね。 彼らのように出来るね?」
何もベルゼは反骨精神で無愛想を装ったのでは無い、心を許した大人は今は亡き良心と自分を救ってくれたルーだけであり、施設にいた大人は悪人ばかりだったため、大人に対して人見知りに近い警戒心をあらわにしていたのだが、ルーが言うなら新しい家族には挨拶しなければならないのだろうと理解を示し、素直に挨拶をする。
「ベルゼです……これからよろしく。」
「おう! よろしくなベル坊!」
「こちらこそよろしく。ベル君。」
「……まぁそういう事情なら仕方ないわね。 よろしくねベルゼ。」
生意気で無愛想といった印象を持っていたが、根は素直であるといった事を理解する面々。
ミアータも少々大人気なかったと反省し、バツが悪そうにしながらもベルゼに笑いかける。
「後、二人仲間がいるけど、先に仕事に出てる。 アルマさん?私らの仕事は?」
「盗賊とグルになってつるんでる奴隷商と、その顧客の始末、誘拐された人物の保護だね。 顧客の方はベインとクリフが行ったよ。私らは奴隷賞とその護衛を務める盗賊の捕縛、因みに生死は問わずだね。」
そう言ってアルマは手配書、人相描きを机に広げる……
手配書には如何にもな脂ぎり肥えた商人と、眼帯が特徴の盗賊の頭の人相が描かれている。
「この二人の顔を頭に叩き込んでくれ。 盗賊は殺して構わないが…商人は私が指示するまで殺すな。
少なくても口の聞ける状態にはしておくこと。」
“始末する前に拷問する”
そう言外に告げ、作戦内容を語るルー。
「ミアータ、騎乗できる魔獣を2体召喚して、ゼノンと組んで私のバックアップ。 ベルは私について来い……アルマはここで待機して【遠見の水晶玉】と【念話石】で目標を補足、後、情報支援をお願い諸君らの迅速な働きを期待する……それではオペレーション・スタート!」