ep0-2
あー。死んだ。あっさり死んだ。まだプロローグなのに。
「ここが死後の世界か」
周りを見回しても何もない。真っ白な空間だ。
ホント、何もない。自分の身体も見えない。
「うーん……え? もしかしてずっとこのまま? 」
これなら地獄の方がマシじゃないか?
「おーい! 誰かいないのかー! 」
とりあえず走る。
自分の身体とかは見えないが、とりあえず走れた。
「やべっ。泣きそう! 誰かー! 」
これが死ぬっていうことなのか?
「パンパカパーーーン!! パッパッパパンパカパーン!! 」
「うわびっくりした! 」
「どうも! 初めましてだね! 子孫君! 」
振り返るとそこには真紅の髪をポニーテールにし、光り輝く鎧を身に纏った少女がいた。
「え? どなた? 」
「初代勇者です! 」エッヘン
申し訳程度に膨らんだ胸を逸らす少女。
「うん? 初代勇者? 」
「そそ! 魔王を封印した人」
「へー。女の人だったんだ」
あまりの超展開についていけないが……そりゃ死後の世界だもん、御先祖様くらいいるよな。
「そう! こんな美少女が勇者だったのよ」
自分で言ってるよ。こんなのが俺の先祖かよ。
「いやー。30人がかりで魔王をボコったのは楽しかったわー。あのね、まずは私が勇者に…」
聞いてもいないのに武勇伝を語りだした初代。
「てか君さ、なんかこうやけに素直じゃない? 」
武勇伝を右から左に受け流していると、初代は首をかしげた。
「ん? そうか? 」
「ウン。普通だったらお前が初代? 嘘付け! とか。ここから出せ! とか言わない? 」
「うーん。素直っていうか、安心してるだけだ」
「あ、安心? 」
「ああ。この死後の世界に俺1人だけかと思ってたからさ。初代がいてくれて安心してるんだ。だから、あんたが本当に初代かどうかなんてどうでもいいんだよ」
なんかこの人の元気っぷりを見たら余計に安心してしまったしな。
「あー。なるほどね。でも、ここは死後の世界じゃないよ」
「え? 俺死んだぜ? 」
それはもうあっさりとね。
「あーうん。確かに君は死んじゃったんだけど、死後の世界に行く前に私がここに連れて来たのよ」
「へー。ありがとう。じゃあここは何なんだ? 」
「超☆勇者空間」
だっせぇ。しかもそれだけじゃ全く意味がわからん。
「じゃー一刻も早く出してください」
天国に行きたいです。
「いやいや、ここでハイドウゾーって行かせたら何の意味もないじゃない」
「つまり、俺をここに連れてきたのは大きな意味があると」
「そゆこと」
「その意味とは? 」
「君にもう一回魔王と戦ってもらうためよん」
つまり……?
「俺は生き返れるってことか! 」
「うん。まぁ……そうだね」
若干反応が悪くないか? まぁいいや。
「じゃあ早速オナシャス!! 次は負けない! 」
「あー。なんかいきなり魔王と戦う気満々? 」
「そりゃもう! ボコボコにしてやるよ! 」
「どこから沸いてくるのよその自信」
「全身! 」
堂々を答えたのに初代はジト目で俺を見ただけだった。
「……まぁ君をこのまま生き返らせても確実に魔王は倒せないから、君にはもう一回人生をやり直してもらうよ」
「!? そ、そんなラッキーがあっていいのか? 」
「むしろ、魔王と戦ってるところで生き返っても仕方ないよね? 」
「そりゃそうだ」
ま、まぁ本気を出せばワンパンで余裕だけどな。
「私は君、というか、私の子孫の勇者をずっと見てきたけど、その中でも君はずば抜けた才能と潜在能力を持ってるんだよ。だから、魔王が復活した時にも特に心配はしなかったんだけど」
「いやぁ、そんな」
いきなり本当の事を言われると照れるな。
「でもねー。まさかレベル上げもしないし、仲間も作らないしで、魔王に挑むとは思わなかった」
「あ、はい。すみません」
「だから、今回は特別にやり直せるチャンスをあげるけど、絶対にしくじらないでよ? 」
「おっけい。任せろ」
「本当にだよ? 2回目はないからね? 」
「おう! 普通は1回目もないんだ! そのチャンスを棒に振るような男ではないぜ! 」
心配性な勇者さんだな。
「あと、記憶とレベルは引き継ぐから、くれぐれも調子に乗らないように」
おおっ。つまり。
「いわゆる強くてニューゲームだなっ! これなら勝てる!! 」
「お願いだよ。私が大好きな世界を護ってね。それから、ごめん」
「え? なぜあやま」
初代の顔が悲しみに歪んだ理由を聞こうとしたのだが、聞く前に俺の意識は黒色に染まった。
【勇者】カロン Lv28