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紅と黄金

作者: みあ

-----------紅の湖には黄金色の魚が泳ぐ。

美しい赤に浮かぶは安らかなる死相。

少女は床に溜まった暗くて赤い水たまりを眺めていた。

腕から滴りおちる雫がその水たまりを少しずつ少しずつ広げていった。

窓から入る木漏れ日が水面に反射して、涙で滲んだ少女の淀んだ瞳に少しの光を投げかけた。

その光は瞳の奥の底知れぬ闇に吸い込まれては消えていった。


少女は思いはせる。

この深淵なる美しき赤の中には私のすべてがはいっている。私の生きた証。

こんなにも綺麗な深紅の中を金色の魚が泳いでいたらどんなに素敵かしら。

目を閉じながら心に描く。

私の手の平よりももっと小さな金色の魚がまるでゆらめくように静かにでも確かにこの私の証の中を泳いでいく。生きているのにまるで作り物のように不自然なくらい美しく艶に。

そんなことを考えていたら自分が涙を流していたのが呆けて感じるほどに楽しくなって少女は涙の痕が残る顔に満面の笑みを浮かべた。

悲しいことなんて何もない。お母さんもお父さんも知らないこんなに美しい私がここにいるの。どんなに外側が汚くたって醜かったって私の内側はこんなに綺麗。何も怖くない、恐れることはないんだ。


いつのまにか眠ってしまっていた少女は小さな水音で目を覚ました。

小さな池のようになった赤い水たまりの中で、金色の小さな魚が数匹、尾びれをひらひらさせながら泳いでいた。時折水面に上がってきては餌を欲しがるように口をパクパクさせる可愛らしい姿に少女は愛おしさと共に哀しみを覚え涙を零した。この魚たちは今までの私と同じようにこの池から出られずにここにとどまらなければならないのだろうか。私が望んだばかりに。しかし涙に濡れた目を擦り、もう一度池を見るともう魚たちはいなかった。よかったみんな自由になれたんだね。私もこれから自由になるんだよ。



厳しい冬の寒さが去りやわらかな日差しの中で花々の蕾がゆるみ始めた春の初めごろのある日、閑静な住宅街の一軒家で家族全員死亡しているのが発見された。検死の結果、死因は父親が入浴時に浴槽に電動剃刀を落としたことによる感電死、母親が階段の最上部からの転落時に頭部を強打したことによる事故死、一人娘が自ら切ったと思われる腕の傷からの大量出血による失血死であると判明した。その後の調査で、少女は長年にわたり父親から性的暴行を日常的に加えられていたことが明らかになった。母親はそれを知りながら黙認していたようだった。



お父さんもお母さんも私に優しくしないから悪いんだよ。でも大丈夫。もうみんな自由になれたでしょう?

稚拙な文章をお読みいただきありがとうございました。

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