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そうだ、これが、これが僕のセックスだ

 最後まで読み終わり、事を終えた深夜1時。冷静な頭で今後の事を考える。   

 キャプテンが僕にお姉さん系を依頼した意味がよくわかる。この物語は邪悪な男たちに女性が淫らに、『調教』される物語だった。キャプテンが求めるエッチで余裕のあるお姉さんは登場しない。これはこれで良いものだが、キャプテンが心から欲するエロではない。

 だがそれでも、僕にとっては得るものは多かった。全体の割合としては微々たるものではあったものの、愛し合う、いわゆる普通のセックスの描写は存在した。そして何よりプロの官能小説を学ぶことが出来たのは中学生の僕にとっては得難い経験だ。


 プロの官能小説を読んでみて実感した。作品の中でヒロインは男達の調教を受け、否応なしに、より淫らに、『成長』し、『完成』していく。それに比べて今僕が書いている物語には、前にK君から指摘を受けた通り、物語上のゴールが無かった。セックスの中での成長、これに関して真剣に考えなければならない。


 この他にも僕の課題点はいくつも浮かび上がった。語彙力、表現力の乏しさ、セックスそのものに対する理解の薄さ、テンポ感。足りないものは読めば読むほど浮かび上がる。これを解決するために僕がすべきことは一つだった。




片っ端から真似をすることだ。




 模倣なくして創造なし。未だ何も知らない僕に出来ることは真似することだ。でも、ただの真似じゃない。

「真似をするなら、骨の髄まで……」

 自分に言い聞かせるように、一人呟く。深夜1時、明日は休みだからといって中学生は寝る時間だ。稽古の疲れも残っている。それでも、こんな物を見せられて滾らずにはいられなかった。

 まず一歩目、それは模写だった。ベットを飛び出し、僕は机に向かう。ノートを広げ、右手に鉛筆、左手に小説。ひたすらに情景を思い浮かべ、書き写す。

 機械のように写すのではない。これは咀嚼だ。含み、味わい、噛み砕き、胃と腸を通して全身に行き渡らせるように、このセックスを身に行き渡らせる。頭で理解するだけではなく、全細胞で理解をする。

 血走った目で、一粒も残さずに、この行為を舐め取る。思考が加速していく。




自分の思考に鉛筆がついていかなくなったその時、自然と身体が動き出した。




 書き写すだけでは足りない。左手に本を持ったまま、僕は行為をこの身で再現する。この身体でプレイを再現する。

 掛け布団を丸め、それを相手に見立て、受け手も攻め手も自分で実演する。この体位のとき僕の体はどうなる?それがどれほど辛い体勢か?覆いかぶさられたとき、相手のことはどう見える?

 

 拙い再現だ、色褪せた青の掛け布団が女体の代わりになんてなるわけがない。だがそれでも何かが掴めると信じて、必死で布団を抱きしめ、キスをして、腰を振る。深夜2時、草木も眠る丑三つ時に。

 汗で張り付いた髪の毛の手触り、自分の髪の毛を触り代用。

 耳にかかる吐息、自分の息で代用。

 汗ばんだ胸の感触、自分の尻で代用。

 正気ではない、だが正気ではたどり着けない。自らの尻を鷲掴みにし、必死で行為を再現する。



 そうだ、これが、これが僕のセックスだ。これを、僕は描くんだ。



 再現した行為も佳境に入る。書面で加速する行為に合わせ、僕もまた加速する。物語の彼女が絶頂に至るその時僕も、




「アンタ、なにやってんの?」




 深夜3時、血走った目で全身をまさぐる息子を目撃した母は一体、どんな気持ちだったのだろうか。

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