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第7話

抗戦都市の門


壁は、思っていたよりも高かった。


石を積み上げただけのものではない。

金属が混ざり、文様が刻まれ、

ところどころに光が走っている。


防衛魔法陣。


抗戦都市は、

ただの街ではなかった。



門の前には、人が溜まっていた。


旅人。

避難民。

傭兵。


誰もが、疲れ切った顔をしている。

だが、列は乱れない。


乱れた者から、

弾かれるからだ。



「止まれ」


門兵の声は、低く、冷たい。


鎧は揃っていない。

だが、無駄がない。


――強い。


レイン・グレイブは、直感でそう思った。



一人ずつ、前に出される。


名前。

出身。

武装。


そして――

魔力と気力の確認。


門兵の一人が、水晶板を掲げる。


触れた瞬間、

淡い光が走る。


「……魔力、微量」


「子供か」


視線が、フィア・ルミナに向く。


「……制御、安定している」


小さな声だが、

確かに評価だった。



次に、レイン。


水晶に触れる。


一瞬、光が揺れた。


「……?」


門兵が、眉をひそめる。


「魔力と……気力?」


「……混ざってないか?」


別の兵が近づく。


「同時使用か?」


「……いや。切り替えだ」


短い沈黙。


「厄介な型だな」


それ以上は、言われなかった。



ガルド・ヴァルムが前に出る。


大盾を下ろし、水晶に触れる。


光は、重く、安定していた。


「……前線兵」


即答だった。


「まだ動けるか」


「盾なら」


「それでいい」



全員の確認が終わる。


門は、まだ開かない。


代わりに、

別の兵が現れた。


黒い外套。

装飾のない剣。


目だけが、鋭い。


「……選別だ」


静かな声。


「ここは、避難所じゃない」


「戦えない者は、外へ回す」


列が、ざわつく。


泣き声が上がる。


だが、

判断は変わらない。



名前が、呼ばれていく。


「――フィア・ルミナ」


一瞬、空気が変わる。


「魔法使い候補。後方支援区画」


フィアは、小さく息を吐いた。


「――ガルド・ヴァルム」


「前線盾兵。即時配置」


「――レイン・グレイブ」


少し、間があった。


「……保留」


「……?」


「戦闘力は足りない」


胸が、わずかに痛む。


「だが、

 使い捨てにするには惜しい」


その言葉は、

褒め言葉ではなかった。



門が、開く。


重い音。


中から、血と鉄の匂いが流れ出す。


抗戦都市は、

生きていた。



中は、静かだった。


悲鳴も、混乱もない。


その代わり、

張り詰めた秩序がある。


負傷兵。

走る伝令。

補給箱。


すべてが、

戦いのために配置されている。



フィアが、小さく言った。


「……ここ、怖い」


「……うん」


レインも、同じだった。


村とは違う。

逃げ場がない。



別れの時間が来る。


「……またな」


ガルドが、盾を背負う。


「死ぬなよ」


「……そっちこそ」


短い言葉。


だが、重い。



フィアは、後方へ案内される。


振り返る。


「……レイン」


「……大丈夫」


根拠はない。


それでも、

言わなければならなかった。



レインは、一人、残された。


黒外套の兵が言う。


「ついてこい」


「どこへ」


「……使えるかどうか、試す」


抗戦都市では、

それがすべてだった。



剣を握る手が、汗ばむ。


まだ、幼い。

まだ、弱い。


それでも。


ここまで来た。



抗戦都市は、

守ってはくれない。


だが。


戦う場所は、与えてくれる。


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