閑話
あの子は、泣かなかった
(フィア・ルミナ視点)
――私の名前は、フィア・ルミナ。
レインとは、同じ村で育った。
生まれた時から、隣にいた。
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レインのお父さんが帰ってこなくなった日。
村は、妙に静かだった。
私は母に連れられて、レインの家に行った。
扉は開いていた。
中では、
小さな背中が、剣を振っていた。
「……レイン?」
振り向いた彼の顔は、
泣いていなかった。
怒っても、悲しんでもいない。
ただ、止まっていなかった。
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私は床に落ちていた魔法書を拾った。
「……これ、読むの?」
「うん。剣のあと」
普通は、逆だと思った。
でも、レインにとっては、
どちらも同じだった。
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数日後、私は“魔法”を感じた。
川辺で手を伸ばした瞬間、
空気が揺れた。
怖くなって、
レインにだけ話した。
「ねえ……魔法って、どう思う?」
「……難しい。でも、分かる」
その言葉が、
なぜか、胸に刺さった。
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私は、彼にだけ、見せた。
指先に、小さな火花。
成功とは言えない。
それでも――確かに魔法だった。
「……すごい」
レインは、そう言った。
驚きも、疑いもなく。
ただ、事実として。
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「レインは、剣士になるの?」
「……剣は使う」
「魔法は?」
「……捨てない」
その言い方が、
あまりにも自然で。
私は思った。
この子は、
間違っても、止まらない。
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だから、決めた。
レインが剣を振るなら、
私は魔法を使う。
隣に立つために。




