森の周りは騒々しくて2
大きな咆哮で威嚇をしてくる。
威嚇はしてくるが近づいてはこない。明らかに警戒している。
「去るなら見逃すが」
言葉が通じるわけはないが一応声をかける。何が何でも戦いたい戦闘狂ではない。
こちらの言葉が通じたのであろうか大猿の魔物はくるりと踵を返し森の奥へと去っていた。
「賢い魔物だったね」
リンゴが言いながら頭の上から飛び立ち血抜きしている肉の様子を見にいく。
しばらく辺りを警戒しながら構えを解き小剣を腰へと戻す。
「肉の感じはどう?」
背負っていた背嚢を地面に下ろしながらリンゴに問いかける。
「いい感じだと思うよー?」
リンゴは明滅しながら返事をする。
指先で地面に軽く魔法陣を描き魔力を流す。地面が盛り上がり焚き火台のような竈門のような調理台が完成する。
辺りを散策しながら枯れ木を集め、竈門に入るサイズに折りながら調理の準備をする。
移動中にする食事であるため現地調達が基本である。果物があれば果物を、肉が取れれば肉を。今回は肉が手に入ったのでシンプルに焼いて食べる。
「リンゴは食べるかい?」
頭の上で調理の風景を見ているリンゴに聞いてみる。
「脂っこいものはちょっと」
ご遠慮しますとのことなので一人でいただくことにする。乾燥したパンなどもあるが先を急ぐために肉だけで済ます。味付けは塩のみという潔さ。
焼けた部分からナイフで削り塩につけて口に運ぶ。しっかり脂が乗っていてうまい。身体強化の術式を使って走っているため、かなりの距離を走れているがその分体力と魔力をそれなりに消耗する。カロリーは正義であると言うことだ。
骨についた身まで綺麗に食べ終わると骨ごと竈門を火炎魔法で焼却する。脂で汚れた手を水魔法で洗い流すと、水分補給も忘れない。
背嚢を背負い直し再び森の奥を目指す。このまま進むと小さな山にぶつかるので、とりあえずその付近を目的地に設定する。何となくだがあの山の麓に何かしらありそうな気がしてならない。
「何があると思ってるの?」
リンゴが器用に頭の上に張り付きながら聞いてくる。
「魔素の濃い方向に山があるから何かしらあると思うんだよね」
森の中を走りながら答える。
強い魔物か、魔素が噴き出す地穴か、もしくはダンジョンか。ダンジョンがこの付近で発見されたと言うことは聞かないので、強い魔物かなと思っている。まぁそれでは魔族や火の魔物の説明がつかない。まさか偶然発生したとは思えないしな、と思考を巡らせながら一般人が見たら驚く速さで森の中を駆け抜けていった。




