森の周りは騒々しくて1
結局急ぐ旅でもなし、とのことで村の中で回収できる非常食や食材などを集めて付近の探索をしつつ街道を進むという方向でリンゴと一致した。
村から街道とは反対側にとりあえず出発する。魔族が来た方向であることと、村内の破壊具合からして火の魔物のきた方向が一致しているからだ。
村から少しの間は畑や背の低い草が生えた草原が続いている。森までは大人の足で2時間ほどかかったが、森の中に入って分かったことがある。
木が燃えていない。
火の魔物は確実にこちら方向から村に侵入したのは分かっている。被害を受けた建物の位置からしても確実だ。なのに木は燃えていない。
「燃えていませんね」
頭の上に謎の力で張り付いているリンゴが呟く。
「そうだなー。
あの規模の火の魔物が進んできたにしては不自然だな」
結構な速さで森の中を進んでいるが、いまだに焦げ付いたり燃えた木には遭遇していない。
「街中に自然発生するとかありうるか?」
まさかなぁと言いながらリンゴに問いかける。
「あの規模の魔物が自然発生するには条件が整っていませんでしたよ」
リンゴは答えながら頭の上で転がる。
そんなやりとりをしつつ森の中を進む。魔素の偏りを調べつつ魔素の濃い方へと駆けていく。
「凍れ」
短杖で空中に魔法陣を描くとその魔法陣から氷の息吹が吹き出し、目の前にいた大きな猪が一瞬で凍りつく。
身体を捻って真後ろに向くともう一体の猪がこちらに向けて土の塊を打ち出そうとしていた。魔猪が好んで使う土魔法だ。
腰に刺した短剣を抜き出し多めに魔力を込める。抜き出した勢いそのままに土の塊、魔猪をかなり離れているがまとめて水平に薙ぎ切る。距離があったために、刀身を伸ばした影響であたりの木も斬り倒してしまった。
斬り倒した木と凍らせた魔猪を亜空間に回収する。斬り倒した猪は肋付近の肉を切り取り、今から食べれそうにない量の肉は凍らせてこちらも亜空間に回収。その際に魔石を取り出してみたが、ほぼ真球に近かった。魔猪の魔石としてはこんなもんだろうと思う。
切り出した肉を木に吊るして可能な限り血抜きをしていると、大きな猿がのそりと現れた。
「あまり森の奥ではないのに賑やかですね」
リンゴがのんびりと言う。
「あー確かにこの頻度は異常かな?
いや、でも森の中ならこんなもんかな?」
腰に戻した短剣を抜きつつ逆手に構え威嚇してくる大猿に向かって睨みを利かす。猪をどうやって料理しようかと考えながら。




