ある晴れた昼下がりの3
教会から外に出ると村はさらに燃え上がっていた。気配遮断の術式を解くと同時に短杖で辺りに氷の礫を撒き散らす。
ジュッという音と共に金属を擦り合わせたような悲鳴が響く。ゆっくりと火の魔物の気配のするほうに向かい歩を進める。どうしても解せないのは何故火の魔物だけがここにいるかということと、四日前に立ち寄った村では村を廃棄するという話は伝わっていなかったことだ。
この世界には正確な地図もない。尚且つ大国も存在しない。精々都市国家レベルだ。この村の名前はわからないが四日ほど離れた隣村に廃村が伝わっていないことなどあるのだろうか。
頭で考え事をしながらも手は器用に術式を描き続け、燃えている建物や火の魔物などに氷の礫や水でできた球をばら撒き続けていく。戦いが始まって二十分ほど経っただろうか。教会と村の入り口を結んだ中間地点にたどり着いた。割と派手に殲滅をしていたためか、私にはわからない方法で仲間がやられたことを察してか残りの火の魔物が一箇所に集まっている。
どこにこれだけ潜んでいたのかと思うぐらいの数だ。そしてこれだけ一箇所に集まったということは
「合体か」
集まった火の魔物同士が寄せ合い、溶け合い、どんどん大きくなる。そして、1つの魔物になった。その大きさは百八十センチほどある私の三倍はあろうかという大きさだ。
「デカくてもねぇ」
律儀に合体していく様を指を咥えてみているはずもなく、短杖で少し難しい術式を描き続けていた。
「凍れ」
巨大な火の魔物が大きな腕を振りかぶって殴りかかろうとしてくる。そこにカウンター気味に描き終わった魔法陣を振りかざす。
燃え盛る音が一瞬で無くなる。暑かった周囲の空気が一瞬で吐息が白く見えるまで下がる。雪が知らぬまに降り始めている。
「・・・」
力加減を間違えたのを自覚しながら氷の彫像にすらなれずに細かい氷の粒と消えた火の魔物がいたところに向かう。
大きめの魔石が地面に落ちていた。あの規模の魔物が落とすにしては大きすぎることを不審に思いながら拾って亜空間に放り込む。
「何となく嫌な予感がするなぁ」
廃村を知らない隣村、いるはずのない魔物の集団、大きすぎる魔石。普段ののんびりとした旅路が終わりを告げようとしているのをうっすらと感じながら教会への道を戻ってゆく。帰り道で風呂になりそうな大きな樽を見つけたので引きずりながら。




