ダンジョンはお日柄もよく9
なんとか拘束されている光の鎖から抜け出そうともがいている魔族のプラーク。攻撃に飛ばしてきていた黒い波動などで光の鎖を破壊しようとするものの一切効果がないことに驚愕している。
「無理だよそれは。世界の一部を鎖にしたものだから」
術式の開示はあまり勧められるものでは無いが、ずっと抵抗されるのも面倒臭いので仕方なくだ。
「貴様何者だ」
驚いた顔で聞いてくる。
「通りすがりの旅人だよ」
やれやれと返事をする。抵抗はあきらめていないのか時折鎖を破壊しようとしているが、過去に空の雄牛に引きちぎられた以外は壊されたことがないので魔族程度なら問題はない。
「で、あなたは何をしていたんだい?」
今度はこちらから問いかける。
「人間如きに教えることはない」
強がりか、侮蔑か、よくわからない表情で答える魔族。こりゃあれだな、やっちゃうか?などと不穏な考えが頭をよぎる。どうも戦闘の興奮が抜けきっていないらしい。
「ならこのまま倒させてもらおう」
情報が引き出せないのであれば情けは無用である。
「人に負けるとはよもや我も血に落ちたものだ」
と割と潔かったのでこちらも遠慮なく鎖を引きしぼり魔族を粉々に引きちぎった。鎖には神聖が付与されているためここまで粉々にされては復活はできまい。
「結局何だったんだろう」
かなりの高位の魔族ではあったが、高位の魔族特有の人間を下に見すぎた結果油断につながるという悪癖のおかげであっさりと勝つことができた。だが魔法に関しては防護結界が貫かれたことから考えて、なかなかの使い手であり強者であったとは思う。
ただプラークという名は聞いたことがないので魔族の中の序列が変わるような出来事があったか、新興勢力が魔族の世界の中で台頭してきているのかもしれない。などと仮説を立ててみる。
「佐藤さん魔族の残骸食べます?」
任せとけ!という合図とともに鎖の魔術ごと食べて消化していく佐藤さんを微笑ましく見つめながらこの後どうするかと悩んでいるとリンゴから念話が届く。何やら判断に困る事態になったとのことで片付けが済んだら転移させるから合図して欲しいとのこと。
「厄介ごとの予感がする」
ため息とともにそう呟くと、付近で食事中であった佐藤さんから頑張れと言う想話が届く。
佐藤さんまじ癒し。
プルプル震えながら移動しては周辺の魔物の死骸を捕食して大きくなって分裂する佐藤さんを見ていると和む。
見渡す限り存在したゴブリンの死骸は驚異的な速さで消失していった。佐藤さんのお腹が膨れるのは何よりである。
魔族を退治してからゴブリンの転移も無くなったので、設置していた爆炎壁の魔法陣を解除する。周囲を確認したところ、地面に設置されていた転移の罠は機能を停止したままのようで魔法陣を消失させても私や佐藤さんはは転移することはなかった。
かなり遠くの方にいた佐藤さんからこっちに来れるか問いかける想話が届く。緊急事態のようであるため全速力の飛行魔術で飛んでいく。幾つに分かれたのか数えるのもバカらしくなるほどの佐藤さんが地面を綺麗にしてくれている。
こっちだよーという想話に呼ばれてたどり着いた地点には荘厳かつ剛健な一本の槍が岩に刺さっていた。明らかに厄介ごとの匂いしかしないその事態に私は見て見ぬ振りってどうするんだっけなどと考え始めるのだった。




