ダンジョンはお日柄もよく1
噂には聞いていた。未発見のダンジョンに一番最初に潜る際に抵抗があることを。入り口に薄い魔力でできた膜のようなものが貼られていて、未通か侵入済かはっきりわかるのだと。
「確かに膜のようなものを破った感覚はあったね」
隣にいるリンゴにそういうと
「初体験でよかったね」
のんびりとした調子で答える
軽い抵抗があったので勢いをつけて侵入した。飛び込むような感じだったかもしれない。
「まさかいきなり転移罠とかないわー」
踏み込んだ門の先にあったのは、転移用の魔法陣であった。
「しかもいきなりこれじゃぁねぇ」
リンゴが言うこともわかる。転移先で私は今胡座で自然落下中である。
目の前には見渡す限りの青空、はるか下に見える大地、ぐんぐん近づいてくる転落死の結末。
「初見殺しにも程がないこれ?」
器用に私の落下速度に合わせて一緒に落下しているリンゴに問いかける。
「飛行や浮遊の魔術って一般的だっけ?」
「いや、そこまでかなぁ?
軽い荷物を浮かせる魔術ならあるけど」
どんどん地面が近づいてくる中で、短杖で描いた魔法陣に魔力を流す。自然落下が止まり空中に静止する。
「ケイトは簡単そうに使うのにね」
リンゴは定位置の頭の上にもどる。
「まーこれでもそれなりの人だからね」
足元の魔法陣をリアルタイムで変更させながらゆっくりと地面に向けて降下しつつ、周辺の状況を確認する。草原と、森と、遠くに湖があるのは確認できた。人工的な建造物はなし。
「とりあえず地面に降りてから湖を目指そう」
リンゴにそう言うとりょと軽く返事が返ってくる。
リンゴが充電モードになったことからも、ここはダンジョンの中なのだとわかる。どれだけ広大に見えても、どれだけ自然に見えてもここは外の世界ではない。ダンジョンという仕組みのわからない世界の中であることを再認識し、気を引き締める。
落下中に魔物に襲われることもなく、無事地面に到着する。
そして、再び転移の魔法陣が発動し意識が一瞬途切れた後に目の前には青空が広がっていた。
「・・・どういうこと?」
自然落下アゲインの最中に口から疑問が出ても仕方ない。まさかの転移罠。それも落下を回避したところに同じ罠を仕掛けるという非道っぷり。
「・・・すぴー」
魔素密度の高いダンジョン内で居心地がいいのか、リンゴさんは安らかなる充電に入った。口から出た疑問の声は青空へと溶けていった。




