ある晴れた昼下がりの1
男が歩く先にはこの世界では一般的な魔物の姿があった。小さな街道沿いではあるが人の往来は割合ある方である。そのような街道でもこのように魔物が出るということは大発生の時期が近いということだろうかと考えながら歩く。
ゴブリンと一般的に呼ばれる小鬼は何やら汚い声でこちらに向かい威嚇している。三匹ほどがボロボロの剣だかなただか分からないもので武装しているがあれで切られることを思うとゾッとする。切れ味の悪い刃物ほど痛いからだ。
「氷の礫よ」
上着の内側から抜き出した短い杖を用い力ある言葉と共に簡単な陣を空中に描く。
杖の先の魔法陣が光ったと思いきや目の前の魔物は頭を吹き飛ばされてその場に崩れ落ちた。
街道沿いではあるが魔物の死骸などはそのうち獣にでも喰らわれるであろうから放置して先を急ぐ。ここのところ野宿が続いているのでなるべくなら村へと辿り着きたいのだ。
「しかしこの規模の街道で魔物とは」
先ほど疑問に思ったことがなんとはなく口から出る。
「ケイトそりゃ仕方ないと思うよ?」
上着のフードの中から小さな光の玉が浮かび上がり頭の上に乗りながら話しかけてくる。
「起きたかリンゴ」
「寝てませんけれど」
そういうと光の玉はゴロゴロと頭の上で転がって抗議の意を示す。痛くはないが髪が乱れるからやめてほしい。
「ごめんて。で、どういうこと?」
「受け入れた。ここら一体のというか、世界規模で魔素の量が増えてるからね?自然発生する魔物の量は普段より多いんではないかしら」
「何それ怖い」
そう言いながら大袈裟に身震いして見せる。魔法や魔術を扱う私としても気が付いてはいたことではあったが精霊のリンゴに言われると妙に納得してしまう。
「原因はなんでしょうか精霊のリンゴ様」
と頭の上でバランスを取っている光の球に聞いてみる。
「んーよくわからないけれど向こう側で環境破壊でも進んだんじゃない?」
のんびりした声で適当な返事が返ってくる。
「それはいけないね」
のんびり会話しながら歩いていると遠くに煙の上がる村を見つけた。久しぶりの集落の発見で、リンゴに対する私の返事もずいぶん適当になったことは言うまでも無い。街道沿いの村が遠くとはいえ視界に入ってきたので俄然進行速度が上がる。前の街から四日目ともなれば人恋しくもあるし、何より温かいご飯と共同浴場が恋しいのだ。




