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眩い光

一刀は、静を巻き込まずにこの場を切り抜ける唯一の方法を探した。それは、一瞬の隙を作り出し、静を山間の町へ逃がすこと。

「松本巡査! お前は欲望という名の毒に、いや、猛毒にやられているぞ! そんな偽りの出世で弟の願いが叶うと思うのか!」

一刀は叫び、静の身体を背後に庇いながら、ゆっくりと光の義手を前に突き出した。その義手は、もはや短刀ではなく、最後の武器だ。

「猛毒だぁ?んなもん知るかよ! くだらねえ能書き偉そうに垂れやがって。てめえはもう終わりだ!」

松本は怒号を上げ、手下の巡査たちに一斉攻撃を命じた。

「かかれ! 出世の邪魔はさせねえぞ!」

松本と四人の手下が一斉に斬りかかってくる——その時。

一刀の右腕に装着された光の義手が、昨日までの比ではない強さで、白銀に光り輝いた!


その光は、周囲の薄暗い峠道を一瞬で昼間のように照らし出し、周囲の木々までが影を消した。松本と手下の巡査たちは、突然の強烈な閃光に目を眩ませ、反射的に刀を振り上げるのを止めた。

それは、神具が持つ、次の宝への強い共鳴なのか。あるいは、静の純粋な願いに応えた守り人の力か。

一刀は、光り輝く義手を見つめ、驚きながらも、その力を利用する一瞬の好機を逃さなかった。


「静!いまだ、逃げろ」

一刀の右腕の光の義手から放たれた強烈な閃光は、松本と取り囲んでいた巡査たちを直撃した。

「ぐわあッ!」

松本と共にいた四人の手下は、その強力な光をまともに受け、制帽を吹き飛ばされながら目を押さえて地面に倒れ伏し、意識を失った。

松本もまた、強烈な光と衝撃で激しい目眩を覚えた。彼の脳裏には火花が散り、足元が揺らぐ。しかし、彼は歯を食いしばり、出世への執念と弟への誓いを燃料に、かろうじて刀を杖のように突き立てて踏ん張った。

「ちくしょうが……小細工しやがて……!」

光が収まり、峠道が再び薄暗闇に戻る。一刀は、閃光が効いた一瞬で静を道の脇へ押しやり、松本を睨みつけた。


膠着状態。一刀は消耗し、松本もまた、精神力だけで立っているような状態だった。


(あいつには迂闊に近づけねえ。目眩ましされたんじゃ刀もまともに振れやしねえ。使いたくはないがコイツに頼る事も考えとかねえと……)

松本は制服のポケットに収まっている銃に手をやった。

その時、地面に倒れていたはずの手下どもが、呻き声を上げながら再び起き上がり始めた。彼らは朦朧としているが、松本の号令を待っている。

しかし、彼らに声がかけられることは二度となかった。

「役立たずどもが」

峠道の奥から、冷たい声が響いた。小松少警部だ。彼は、優雅な足取りで峠道に入ってくると、倒れていた手下たちを一瞥し、一切の感情を込めずにその言葉を吐き捨てた。


小松は、その手に何も持っていなかった。だが、彼が視線を向けただけで、立ち上がろうとしていた手下どもは、突然全身を激しく痙攣させた。

次の瞬間、彼らの制服の胸元から、激しい血飛沫が噴き上がった!

「ぐ、ああ……!」

彼らは短く悲鳴を上げる間もなく、内臓を鋭い刃物で引き裂かれたかのように、大量の鮮血を吐き出してバタバタと倒れ伏した。彼らの命は、小松少警部の一瞥だけで、瞬く間に刈り取られたのだ。

凄惨な光景に、静は息を呑んで震え上がった。一刀もまた、人知を超えた小松の力に、強い戦慄を覚えた。

松本は、その場で小松に向かって怒鳴りつけた。

「小松! テメェ、何しやがる! 部下を……俺の部下を殺しやがって!」

松本の顔は、出世への執着ではなく、部下を無駄死にさせた者への純粋な怒りで歪んでいた。

小松少警部は、その場に散乱する血と、死体となった部下を一顧だにせず、冷静に松本を見つめた。

「俺の部下か。随分とかわいいものの言いようだな、松本鞍馬巡査。確かにお前の部下だ、このゴミどもは。と、同時に私の部下でもある。このゴミどもは何も分かっていない。『契約』とは、常に報酬と代償で成り立つ。役立たずのゴミどもに、代償を支払う必要はない。君は、神具の回収という最高の役目を担うはずだったが、二度も失敗した」

小松は、一歩一歩松本に近づいた。その足取りは、まるで死神のようだった。

「神具の回収だと?何のことだ。それに報酬だの何だのと……」

「なあに、こっちの独り言さ。君には関係のない事だ。役立たずのゴミである松本鞍馬、貴様にはな。君の夢みた出世は、ここで終わりだ。安らかに眠りたまえ」

松本は、弟との約束が、小松という冷酷な悪意によって踏みにじられたことを悟り、咆哮した。

「てめえの事情なんざ、知るか! 部下たちのカタキだ!」

松本は、最後の気力を振り絞り、刀を小松少警部めがけて、渾身の力を込めて振り下ろした。


松本が渾身の力で振り下ろした刀は、小松少警部の身体に届くことはなかった。

小松は、その攻撃をあざ笑うかのように、一歩も動かずに静止した。次の瞬間、彼の整った制服の継ぎ目、特に胸元と脇腹から、まるで生きた鞭のように細く、黒い針のような触手が何本も弾け飛んだ。

「ぐ、うわあああ!」

松本の刀は、その触手に絡め取られ、鈍い音を立てて弾き飛ばされる。剣と銃。二つの武器も同時に飛ばされる。そして、小松少警部の人間の姿は、見る間に崩壊していった。

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