愛しの猫耳メイドさんの秘密の世界 04_始まりの家での甘い一日 第7章 第1節
第7章 第1節
始まりの家の庭に、二つの影が舞い降りた。 一人は、純白のローブに身を包んだ聖女アリア。 もう一人は、その影のように寄り添う、妖艶なサキュバスのルナ。
「ご主人様、お久しぶりです」
アリアが、少し緊張した面持ちで微笑む。 その隣で、ルナが艶然と笑い、ご主人様にウィンクを送った。
「やっほー、ご主人様。あたしたちのこと、忘れてないかしら?」
「もちろんさ。アリア、ルナ、ようこそ『始まりの家』へ」
突然の来訪に驚きながらも、ご主人様は二人を温かく迎え入れた。 極楽ハーレム郷での一件以来の再会だ。魂の解放を経て、二人は今、一つの体を共有しながら、互いの存在を受け入れて暮らしているという。
「お招きいただき、ありがとうございます。この場所が、噂の…」
アリアが、感嘆の息を漏らしながら、緑豊かな庭園を見渡す。そこには、様々な世界の植物が、まるで元からそうであったかのように調和して咲き誇っていた。
「ああ。俺と、ここにいる仲間たちの大切な家だよ」
「……素敵、です」
その言葉には、羨望と、どこか寂しげな響きが混じっていた。
「実は、ご主人様。今日は、あなたにご相談したいことがあって、お邪魔させていただきました」
アリアが、意を決したように切り出す。
「相談?」
「はい。でも…その、すみません。もう少しだけ、心の準備をさせてください。今は、この家の素敵な空気を、もう少しだけ感じていたくて…」
俯きがちにそう言うアリアの姿は、庇護欲をそそる儚げな魅力を放っていた。
「分かった。気にしないで。ゆっくりしていってくれ」
ご主人様が優しく微笑むと、アリアは心の底から安堵したような、柔らかな笑みを返した。
「ありがとうございます。…あ、このお花、とても良い香りですね」
アリアは、庭の一角に咲くハーブに気づき、そっと顔を寄せた。それは、リリアナが魔法学園から持ってきた、心を落ち着かせる効果のある『賢者の眠り草』だった。
「ふふっ、本当に落ち着きます…。ご主人様も、いかがですか?」
彼女が、摘んだ一輪をご主人様の方へ差し出した、その瞬間。
「へっくしゅんっ!」
アリアの鼻先を、花の香りがくすぐったのだろう。聖女の口から、子猫のようなくしゃみが飛び出した。
次の瞬間、彼女を包む空気が、がらりと変わった。
「……」
ゆっくりと顔を上げた彼女の瞳には、先ほどまでの清純な光はなく、妖艶で挑発的な光が宿っていた。聖女アリアの意識が消え、サキュバス・ルナが、その体の主導権を握っていた。
「…あら、ご主人様。朝からとっても大胆ですこと」
くすくすと妖しく笑いながら、ルナはご主人様との距離を一気に詰める。さっきまでアリアがいた場所には、もう誰もいないかのようだ。
「この花の香りも素敵だけど…わたくしは、ご主人様の香りの方が、もっと好きですわ」
そう言うと、ルナはご主人様の首筋に顔を寄せ、吐息がかかるほどの至近距離で、その香りを吸い込んだ。
「んんっ…♡」
甘く、蕩けるような声が、ご主人様の耳を直接震わせる。
「ああ、やっぱり…。あなたの魂の香りは、極上の蜜のよう…。この香りを嗅いでいると、もっと深いところまで、味わってみたくなりまして…」
囁きと共に、濡れた舌がご主人様の耳朶をそっとなぞる。
「っ…!?」
「ふふっ、良い反応。…でも、この服、あの子の趣味だから堅苦しくていけないわ」
ルナはそう言うと、アリアが着ていた純白の聖女服の合わせに、自ら指をかけた。そして、ボタンを一つ、また一つと外していく。清純の象徴であったローブは、胸の谷間や、滑らかな太ももを惜しげもなく晒す、背徳的な衣装へと姿を変えた。
「これくらい、開放的にならないと。ねぇ、ご主人様?」
白い肌を大胆に晒しながら、ルナがご主人様の胸に、しなだれかかる。その豊満な感触と、鼻腔をくすぐる甘い香りに、ご主人様の理性がぐらりと揺れた。
「さあ、ご主人様。あの子が戻ってくる前に、少しだけ、悪いことを…」
ルナが、ご主人様の唇に、自らのそれを重ねようとした、その時。
「…んっ…」
ルナの体の力が、ふっと抜けた。 妖艶な光を宿していた瞳が、数回またたき、やがて元の清らかな光を取り戻す。
「…えっ? あれ…? 私、ご主人様に、何を…?」
体の主導権を取り戻したアリアは、目の前の状況が理解できずに混乱していた。 ご主人様とのゼロ距離。はだけさせられた自分の服装。そして、ご主人様の首筋に残る、生々しい湿り気の感触。
「きゃあああああっ!?」
全てを理解したアリアの絶叫が、始まりの家の穏やかな朝の空に、高らかに響き渡ったのだった。
◆ 愛情日誌
【今日のわたし:アリア】
ご主人様へ
今日は、突然お邪魔してしまって、本当にごめんなさい。 そして、ルナが、その…とんでもないことをしてしまったみたいで…本当に、本当に、申し訳ありませんでした! 穴があったら入りたい、というのは、こういう気持ちなのですね…。
でも、ご主人様は、そんな私たちを、優しく受け入れてくれました。 「それも全部、君たち二人なんだから」って。 その言葉が、どれだけ嬉しかったか、ルナには内緒ですけど、少しだけ涙が出そうになりました。
今日、本当はご主人様にご相談したいことがあって、お伺いしました。 私たちの魂を解放してくださった、あの極楽ハーレム郷のことで、少し気になることが…。 でも、この家の温かい空気に触れたら、もう少しだけ、この幸せな時間を味わっていたい、と思ってしまいました。
心の準備ができたら、必ずお話しします。 それまで、もう少しだけ、あなたの側にいさせてください。
追伸: ルナが「あの子は真面目すぎるのよ。でも、結構、大事なことなんだからね?」と、隣で呆れています。分かっています。分かっているのですけど…。




