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愛しの猫耳メイドさんの秘密の世界線 シーズン02 第1章4節:蝕まれていく楽園と誓いの抱擁

#本編 #シーズン2


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第1章4節:蝕まれていく楽園と誓いの抱擁

窓の外は、激しい雨。 雷鳴が、時折、部屋を青白く照らし出す。


ソファの隅で膝を抱え、小さくうずくまるミミの背中は、か細く震えていた。 もう、見て見ぬふりはできない。 壁紙の色。家具の配置。そして、この止まない雨。 愛するご主人様と二人で創り上げた完璧な世界は、確実に、何かに蝕まれている。


「…私の、せい…」


ぽつり、と漏れた声は、雨音に掻き消されそうなくらい、小さかった。


「私が、ご主人様ともっと冒険がしたいなんて、我儘を言ったから…。私の願いが、この完璧な世界を、歪ませてしまったんだ…」


涙が、ぽろり、と一粒、彼女の白い手袋の上に落ち、小さな染みを作る。 その染みは、まるで、この世界に生まれた歪みそのもののように見えた。


その時、背後で、静かに書斎のドアが開く。 ご主人様が、心配そうな顔で立っていた。


「ミミ…? こんな暗い部屋で、一人でどうしたんだ?」


「ご、ご主人様…!」


ご主人様の優しい声に、張り詰めていた糸が、ぷつり、と切れた。 ミミは、嗚咽を漏らしながら、ご主人様の胸に飛び込んだ。


「ごめんなさい…ごめんなさい、ですにゃ…! ミミの、ミミのせいで…!」


「…ミミ」


ご主人様は、ミミの震える体を優しく受け止めると、その瞳をまっすぐに見つめた。


「…全部、話してごらん」


ミミは、しゃくりあげながらも、これまで気づいた全ての異変を、ご主人様に打ち明けた。 自分の我儘な願いが、この世界を壊しているのかもしれない、という恐怖と共に。


全てを聞き終えたご主人様は、何も言わず、ただ静かにミミの頭を撫でた。 そして、ふっと、優しく微笑んだ。


「…なるほどな。それじゃあ、ミミ。俺と、じゃんけん勝負をしようか」


「…え…? じゃ、じゃんけんですか…? こんな、時に…?」


「こんな時だから、だよ。さあ」


ご主人様は、有無を言わさぬ力強さで、ミミの手を取った。


【サービスシーン: タイプH】


(ご主人様は、どうして…?)


ミミは、戸惑いながらも、ご主人様の前に立った。 ルールは、いつもと同じ。ご主人様は、必ず『グー』を出す。


(今のミミは、どうしたい…?)


もう、何も考えられない。 頭の中は、不安と罪悪感で、ぐちゃぐちゃだった。 ご褒美も、フルコースも、今は考えられない。 ただ、ご主人様に、このぐちゃぐちゃな心を、全部受け止めてほしい。 全てを、委ねてしまいたい。


「いきますにゃ…! じゃん、けん…!」


ご主人様が、ゆっくりと「グー」を出す。 その瞬間、ミミが出したのは…。


「ぽん…」


力なく差し出された、か弱い 「チョキ」 だった。


「…ミミの、負け、ですにゃ…」


ミミは、俯いたまま、小さな声で呟いた。 お仕置きを、ください。 ご主人様の罰で、このぐちゃぐちゃな心を、上書きしてください。


「…ああ、そうだな。それじゃあ、お仕置きだ」


ご主人様は、そう言うと、ミミの震える体を、腕が砕けるほど、力強く抱きしめた。


(お仕置き:君のせいじゃない、と囁き続けながら、力強く抱きしめる)


「ご、ごしゅじん、さま…?」


「これが、お仕置きだ。いいかい、ミミ。これは、君のせいじゃない。断じてだ」


ご主人様は、ミミの耳元に、熱い吐息と共に、囁きかける。 その声は、どんな魔法よりも甘く、官能的に、ミミの鼓膜を震わせた。


「もし、これが何かの試練だというのなら、俺は、君と一緒に戦う。もし、これが世界のバグだというのなら、俺が、必ず原因を見つけ出して、修正してみせる」


「でも、でも…!」


「いいんだ。俺は、君の笑顔が見たい。君の幸せそうな寝顔が見たい。君の、ゴロゴロと喉を鳴らす音が、聞きたいんだ。…だから、大丈夫だ、ミミ。俺を、信じろ」


その言葉は、絶対的な安心感となって、ミミの心の奥深くまで、じんわりと染み渡っていく。 不安も、恐怖も、罪悪感も、その熱い囁きと、力強い抱擁に、蕩かされていく。


ミミは、ゆっくりとご主人様の首に腕を回し、その胸に、子供のように顔を埋めた。 もはや、言葉は必要なかった。


嵐は、まだ続いている。 しかし、ミミの心は、嘘のように晴れ渡っていた。 この腕の中にある限り、自分は大丈夫だと。 二人なら、きっと大丈夫だと。 物語は、まだ、始まったばかりなのだから。 #シーズン2 #本編



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