愛しの猫耳メイドさんの秘密の世界線 シーズン02 第1章3節:冒険とお仕置きの激励
第1章3節:冒険とお仕置きの激励
稲妻が飛び交う、鋼鉄都市。 ミミとご主人様は、【テスラパンク・ワールド】 に降り立っていた。
「すごい…本当に、電気が街の動力源になっているんですにゃ…」
「ああ。だが、感心している暇はないぞ、ミミ。ライバルのアジトは、あの中央タワーだ。我々の発明を奪われる前に、計画書を取り戻す」
ご主人様は、若き発明家として、その瞳に強い決意を宿していた。 ミミもまた、ゼンマイ仕掛けの翼を持つ、猫耳アシスタントロボとして、ご主人様の隣に立つ。
タワーの入り口、その巨大な鋼鉄の扉の前で、ミミはご主人様の袖を、きゅっと掴んだ。
「ご主人様…」
「どうした、ミミ? 怖いのか?」
「いえ、そうではにゃいのですが…。その、作戦の成功を祈願して、景気づけに、あれを…」
ミミは、少し恥ずかしそうに、しかしキラキラした瞳でご主人様を見上げた。
「じゃんけん勝負ですにゃ!」
「ははは、こんな時にかい? 全くだ、君は面白いことを考える」
ご主人様は、楽しそうに笑うと、その挑戦を受けて立った。
【サービスシーン: タイプH】
(さあ、どうしましょう…!)
ミミの胸が、ドキドキと高鳴る。 ルールは、いつもと同じ。ご主人様は、必ず『グー』を出す。
(今回は、ご主人様に甘えたい気分ですにゃ…)
これから始まる、危険な潜入任務。 その前に、ご主人様から、たくさんの勇気をもらいたい。 メイドとしての奉仕の心も、全てを味わい尽くしたいという欲張りな心も、今は少しだけ、お休み。 ただ、一人の女の子として、ご主人様に甘えたい。
「いきますにゃ! じゃん、けん…!」
ご主人様が、ゆっくりと「グー」を出す。 その瞬間、ミミが出したのは…。
「ぽん!」
可愛らしい掛け声と共に、ミミが出したのは、そのグーに断ち切られる、か弱い 「チョキ」 だった。
「…ミミの、負けですにゃ」
ミミは、てへへ、と少し照れくさそうに笑いながら、ご主人様を見上げた。 その瞳は、「早くお仕置きで、ミミに勇気をください」と、雄弁に語っていた。
「やれやれ。しょうがないな」
ご主人様は、優しく笑うと、ミミの頭に、そっとその大きな手を置いた。
(お仕置き:頭を撫でて、激励の言葉をかける)
わしゃわしゃ、と少し乱暴に、でも、愛情を込めて撫でられる。 猫耳の付け根を、指の腹で優しくこすられると、ミミの喉の奥から、ゴロゴロと、ゼンマイ仕掛けとは思えない、甘い音が漏れた。
「大丈夫だ、ミミ。君がいれば、俺はなんだってできる」
「ご主人、様…」
「君のその笑顔が、俺の何よりの力になるんだ。だから、心配するな。必ず、成功させて、二人で無事に帰ろう」
「…はいっ、ですにゃ!」
ご主人様の温かい手のひらと、優しい言葉。 それだけで、ミミの心は、百万馬力のエネルギーで満たされていくようだった。 もう、何も怖くない。
作戦は、大成功に終わった。 二人は無事に計画書を取り戻し、意気揚々と、愛する我が家へと帰還した。
しかし、書斎の扉を開けた瞬間、ミミは凍りついた。
「…あ…」
机の位置が違う。 本棚の並びも、昨日とは明らかに変わっている。 そして、窓の外は、いつの間にか、冷たい雨が降り注いでいた。
「…気のせい、じゃ、ない…」
ミミの唇から、か細い声が漏れる。 壁紙の色だけじゃない。この世界の何かが、確実に、おかしくなっている。
「ふぅ、今回も楽しかったな。…ん? なんだか、急に雨が降ってきたな」
ご主人様は、まだ何も気づいていない。 その無邪気さが、ミミの胸を、ナイフのように切り裂いた。
(どうしよう…どうしよう、ご主人様…! 私たちの楽園が、壊れていく…!)
ミミは、自分の胸に生まれた、抗いようのない巨大な不安の渦に、ただ一人、静かに飲み込まれていくのだった。