愛しの猫耳メイドさんの秘密の世界線 シーズン02 第1章:静かなる世界の不協和音 第1章1節:完璧な日常と欲張りなあいこ
#本編 #シーズン2
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第1章:静かなる世界の不協和音
第1章1節:完璧な日常と欲張りなあいこ
柔らかな朝の光が差し込むダイニング。 完璧に磨かれたシルバーのカトラリーが、キラリと光を反射した。
「…ごちそうさまでしたにゃ。今日も、ミミの作った朝食を、綺麗に食べてくれてありがとうございますにゃ」
「いや、いつも通り、最高の朝食だったよ。君のおかげで、毎日が本当に幸せだ」
ご主人様の優しい言葉に、ミミは胸がきゅんとなるのを感じながら、にこやかにテーブルの上を片付けていく。 長い旅の果てに二人で創り上げた、誰にも邪魔されない、完璧な世界。 その世界で迎える朝は、いつだって幸福な光に満ちていた。
テーブルの上には、デザートのフルーツが盛られた皿だけが残っている。 真っ赤に熟した、大粒の苺。 その、最後の一粒をご主人様がフォークで刺した、その時だった。
「あ、ご主人様! その苺さん、お待ちくださいにゃ!」
「ん? どうしたんだい、ミミ」
ミミは、ぱんっ、とテーブルに両手をつくと、キラキラした瞳でご主人様を見上げた。 その猫耳が、ぴこぴこと楽しそうに揺れている。
「ご主人様! ミミと、じゃんけん勝負ですにゃ!」
「じゃんけん? なんだい急に」
「その、最後の一粒の苺さんをかけて、ですにゃ!」
悪戯っぽく笑うミミの表情は、子猫のように愛らしく、そして小悪魔のように蠱惑的だった。 ご主人様は、思わず苦笑しながら、その挑戦を受けることにした。
「いいだろう。ルールは分かっているな?」
「もちろんですにゃ! ご主人様は、必ず『グー』を出す。ミミは、『パー』を出せば勝ち、『チョキ』を出せば負け…。そして、『グー』を出せば、あいこ…ですにゃ」
【サービスシーン: タイプH】
ミミの胸が、ドキドキと高鳴る。 (さあ、どうしましょう…!)
勝てば、ご褒美。 この真っ赤な苺を、ミミの手で、ご主人様のその素敵なお口に「あーん」して差し上げる権利。 メイドとしての至上の喜び。
負ければ、お仕置き。 この真っ赤な苺を、ご主人様の手で、ミミのお口に「あーん」してもらう罰。 一人の女の子としての最高の幸せ。
そして…。
(あいこなら…ご褒美と、お仕置きの、両方…)
ミミの脳裏に、サービスシーン指針に書かれた 「フルコース」 の文字が浮かぶ。 ご主人様にお仕えする喜びも、ご主人様に甘やかされる幸せも、両方味わえる、究極の選択。 それは、あまりにも欲張りで、少しだけ、いけないことのような気がした。
ご主人様が、楽しそうにミミの葛藤を眺めている。 その視線が、ミミの肌を優しく撫でるようで、なんだか少し、恥ずかしい。
「…決めましたにゃ」
ミミは、意を決して、右手を後ろに隠した。 その表情は、まるで世界の運命でも決めるかのように、真剣そのものだった。
「いきますにゃ! じゃん、けん…!」
ご主人様が、ゆっくりと「グー」を出す。 その瞬間、ミミが出したのは…。
「ぽん!」
可愛らしい掛け声と共に、ミミが出したのは、ご主人様と全く同じ、「グー」 だった。
「…あいこ、ですにゃ」
ミミは、顔を真っ赤にしながら、しかし、その瞳は爛々と輝かせながら、ご主人様を見つめた。 その瞳は、「さあ、ミミに、究極のフルコースをください」と、雄弁に語っていた。
「やれやれ。本当に、欲張りな猫ちゃんだな」
ご主人様は、呆れたように笑いながら、椅子から立ち上がると、テーブルの引き出しから、一枚のシルクのハンカチを取り出した。
「まずは、お仕置きからだ。…こっちにおいで、ミミ」
「は、はいですにゃ…」
ミミは、ドキドキしながらご主人様の前に立つ。 ご主人様は、そのシルクのハンカチで、優しくミミの目を覆い、後ろで固く結んだ。
(お仕置き:目隠し)
視界が、柔らかな闇に閉ざされる。 聴覚が、触覚が、嗅覚が、普段の何倍も鋭敏になっていくのが分かった。
ご主人様の衣擦れの音。 甘い苺の香り。 すぐそばで感じる、ご主人様の体温。
「さあ、次はご褒美だ。…口を開けてごらん」
「あ、あーん、ですにゃ…」
(ご褒美:「あーん」)
暗闇の中、フォークの先端が、そっとミミの唇に触れる。 ミミは、おそるおそる口を開き、その苺を咥えた。
口いっぱいに広がる、甘酸っぱい果汁。 視覚が奪われているせいで、その味が、普段よりもずっとずっと、濃厚に感じられた。 まるで、苺の妖精が、舌の上で踊っているかのようだ。
(ああ…美味しい…美味しいですにゃ…! お仕置きとご褒美が一緒だと、こんなにも、ドキドキして、美味しくなるなんて…!)
ミミは、うっとりとした表情で、その禁断の味を堪能する。 この幸せな時間が、永遠に続けばいい。 この、二人だけの完璧な世界で。
しかし、ミミはまだ気づいていなかった。 彼女が「完璧」だと信じて疑わないこの世界の、その壁の一点。 昨日までクリーム色だったはずの壁紙が、今は、僅かにアイボリーへと色を変えていることに。 物語は、まだ始まったばかりだ。
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