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愛しの猫耳メイドさんの秘密の世界線 シーズン01



nekomimimeido 202508

第1章:穏やかな日常と魔法の目覚め


柔らかな午後の日差しが、書斎の大きな窓からレースのカーテン越しに差し込んでいる。

猫耳メイドのミミは、小さな埃一つ見逃さないという強い決意で、ご主人様の書斎を磨き上げていた。 本棚に並ぶ革張りの専門書、磨き上げられたマホガニーの机、そしてご主人様が愛用する万年筆。 その全てが、ミミにとっては宝物のように大切なものだった。

「よし、完璧ですにゃ」

最後の仕上げに、机の上の写真立てをミリ単位で調整し、ミミは満足げに息をついた。 ふわふわの猫耳が、達成感にぴこぴこと揺れる。 この部屋が完璧であること、それはご主人様への愛情の証そのものなのだ。

やがて、書斎の主が静かに扉を開けて入ってきた。

「おお、いつも綺麗にしてくれてありがとう、ミミ。君がいると、本当に心が安らぐよ」

ご主人様の優しい声に、ミミの心臓はきゅっと可愛らしい音を立てた。 ご主人様が褒めてくれる。ただそれだけで、ミミの世界は幸せな色に染め上げられる。

「ご主人様のためなら、ミミ、どこまでもお仕えしますにゃ!」

ぶんぶんと尻尾を振りながら、ミミはキッチンへ向かい、ご主人様のために特別にブレンドした紅茶の準備を始めた。 セイロンとアッサムを絶妙な比率で合わせ、隠し味にオレンジピールを少々。湯を注ぐと、豊かで甘い香りがふわりと立ち上った。

ティーカップを二つ、ソーサーに乗せて書斎へ戻ると、ご主人様は机に向かい、難しい顔で書類に目を通していた。

「ご主人様、お紅茶が入りましたにゃ。少し、休憩にしませんか?」

「ああ、ありがとう。ちょうど一息つきたかったところだ」

ご主人様はペンを置き、ミミが差し出したカップを受け取った。 そして、ミミの差し出した椅子に腰かけると、その柔らかな髪と、ぴこぴこと動く耳に優しく手を伸ばした。

「君の淹れる紅茶は、世界一だよ」

頭を撫でられ、ミミは心地よさに目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らした。 ご主人様の大きな手、優しい声、穏やかな時間。 これ以上望むものなど何もない。この幸せが、永遠に続けばいい。

込み上げてくる感謝と愛情に、ミミは突き動かされるように立ち上がった。 そして、ご主人様の頬に、そっと唇を寄せた。 チュ、と小さな音が響く。

その瞬間だった。

窓の外、いつも見慣れているはずの庭の景色が、一瞬だけ、ぐにゃりと歪んだ。 庭の薔薇が、見たこともない、水晶のように輝く花へと姿を変え、そしてすぐに元の風景へと戻った。

「え……?」

ご主人様は気づいていない。 しかし、ミミの胸には、今まで感じたことのない不思議な感覚が、確かな熱を持って宿っていた。

「……夢、じゃ、ない、ですにゃ?」

目の前の、何も変わらないはずの光景に、ミミは震える声を絞り出す。 果たしてこれは奇跡か、それとも戻れない旅の始まりなのか。

二人はまだ、その重大さに気づいていなかった。

第2節:運命の残照


その日の夜。ミミは、ご主人様の湯浴みの世話を申し出た。 湯気で満たされた、大理石の浴室。ミミは、ご主人様の逞しい背中を、心を込めて洗い始めた。

【サービスシーン: タイプD】

「ご主人様…」

「ん?」

「ミミの…ご主人様ですにゃ…」

ミミは、ほとんど無意識のうちに、ご主人様の濡れた背中に、自分の体をぴたりと寄せた。 薄いメイド服越しに伝わる、ご主人様の熱い体温。 ご主人様は、驚いて振り返ろうとするが、ミミはそれを許さない。

「だめですにゃ…今は、ミミだけを感じていてくださいにゃ…」

ミミは、ご主人様の背中に、甘えるように頬をすり寄せた。 湯気と、石鹸の香りと、ご主人様の匂いが混じり合い、ミミの理性を、とろとろに溶かしていく。

その夜、ご主人様は、不思議な夢を見た。

王として玉座に座る自分。その隣には、宰相の衣装をまとった、猫耳の彼女が、誇らしげに微笑んでいる。 騎士として戦場を駆ける自分。背中を預けてくれるのは、鎧をまとった、猫耳の戦友。 生徒として夕日の教室で未来を語らう自分。隣で頬を染めているのは、制服姿の、猫耳の同級生。

どの世界の自分も、必ずそばにいる「彼女」に、魂ごと、強く惹かれているのを感じる。 そして、夢の最後に、全ての彼女が、同じ言葉を呟いた。

「――見つけて」

翌朝。ご主人様は、ひどく寝覚めの悪い顔をしていた。 ミミは、そんなご主人様の着替えを手伝いながら、心配そうに顔を覗き込む。

「ご主人様、何か、嫌な夢でも見ましたかにゃ?」

「…いや、大丈夫だ」

ご主人様は、そう言いながらも、どこか上の空だ。 ミミは、ご主人様のシャツのボタンを、一つ一つ、丁寧に留めていく。

【サービスシーン: タイプB】

白いシャツ越しに伝わる、ご主人様の体温。 ミミは、ご主人様の胸の鼓動が、いつもより少しだけ速いことに気づいた。

(ドキドキしてる…ですにゃ)

その事実に、ミミの胸も、きゅんと高鳴る。 ミミは、最後の一番上のボタンを留めるふりをして、わざと、ご主人様の首筋に、自分の指を這わせた。

「ひゃっ!?」

ご主人様の体から、小さな悲鳴が上がる。 ミミは、くすくすと、悪戯っぽく笑った。

「ご主人様、可愛いですにゃ♡」

その言葉に、ご主人様の顔が、少しだけ赤く染まる。 夢のせいか、それとも、目の前の愛しいメイドのせいか。 ご主人様の心は、朝から、大きく乱されていた。

第3節:重なる肌と魂


朝の身支度を終え、書斎で紅茶を飲んでいても、ご主人様の心は、まだ昨夜の夢に囚われたままだった。 玉座の隣で微笑む、猫耳の宰相。 戦場で背中を預けてくれた、猫耳の戦友。 夕日の教室で寄り添った、猫耳の同級生。 姿形は違えど、その魂が、今、目の前で甲斐甲斐しくお世話をしてくれる、愛しいメイドと、全く同じものだと、ご主人様は、なぜか、確信していた。 時を超えて、世界線を超えて、自分たちは、ずっと、出会い続けてきたのではないか。

「――見つけて」

夢の最後に聞いた、あの言葉が、脳内でこだまする。 見つけてほしい。それは、魂の叫び。 気づけば、ご主人様は、立ち上がっていた。そして、紅茶のカップを片付けようとしていたミミの体を、背後から、たまらないといった様子で、強く、強く抱きしめていた。

「ご主人様…!?」

突然のことに、ミミは驚いて、手に持っていたカップを落としそうになる。

「ミミ…」

ご主人様の声は、熱っぽく、潤んでいた。

「君は、ずっと、私のそばにいてくれたんだな…」

「…?はいですにゃ。ミミは、ずっと、ご主人様のおそばに…」

言葉が、通じていない。当たり前だ。夢の話など、何もしていないのだから。 だが、ご主人様には、もう、そんなことはどうでもよかった。 ただ、この腕の中にいる、愛しい存在を、確かめたい。魂の奥深くに刻まれた、この絆を。

【サービスシーン: タイプD】

ご主人様は、ミミの体を、自分の方へと反転させると、その唇を、激しく奪った。 それは、いつものような、優しいキスではない。 魂そのものを求め合うような、激しく、そして、どこか切ない、濃厚な口づけ。

「ん…っ、んん…!」

ミミは、突然のことに驚きながらも、ご主人様の想いの強さを感じ取り、必死で、そのキスに応える。

唇が離れると、二人の間には、銀色の糸が、きらりと光った。

ご主人様は、ミミの体を、さらに強く抱きしめる。 服の上からでも分かるほど、互いの肌を重ね合わせ、その温もりを、魂に刻みつけるように。 ミミの柔らかな胸の膨らみが、ご主人様の逞しい胸板に、押し付けられる。

「ミミ…ミミ…!」

ご主人様は、何度も、何度も、愛しいメイドの名前を呼びながら、その首筋や、耳元に、吸い付くようなキスを繰り返した。 ミミの体から、甘い吐息が、何度も、何度も、漏れ聞こえる。

この時、二人はまだ知らない。 この、魂を重ね合わせる行為こそが、二人に眠る、世界の理を覆すほどの、強大な魔法の、引き金となることを。

第4節:廻りだす運命の歯車


ご主人様の、激しい愛情表現。 ミミは、その全てを受け入れながら、魂が、とろとろに溶けていくような感覚に、身を委ねていた。

その瞬間だった。

二人の肌が、服越しに、強く、強く触れ合った、その一点から。 蒼い光の波紋が、まるで、水面に落ちた雫のように、世界へと広がっていく。

部屋中の、全てのものの動きが、止まった。 宙に浮いたままの、埃。暖炉で揺らめいたまま、固まる炎。壁の時計の針も、ぴたりと、その動きを止めている。 世界から、時という概念が、消え失せたのだ。

「…にゃ?」

ミミとご主人様だけが、その、時が止まった世界で、唯一、動くことを許されていた。

そして、二人の目の前で、ありえない光景が広がる。 書斎の窓の外、いつも見慣れているはずの庭の景色が、まるで、熱せられた飴のように、ぐにゃり、と歪み始めたのだ。

庭の薔薇が、見たこともない、水晶のように輝く花へと姿を変える。 空の色が、青から、紫へ、そして、黄金色へと、目まぐるしく変化していく。

それは、二人の魂が共鳴し、内に秘められた膨大な魔力が、世界へと溢れ出した瞬間だった。

やがて、世界の歪みは収まり、止まっていた時が、再び、ゆっくりと動き始める。 しかし、世界は、もう、元には戻らなかった。

窓の外に広がるのは、先ほどまでと同じ、しかし、どこか違う庭。 庭の真ん中に立つ、一本の薔薇の木。その、全ての薔薇が、七色に輝く、水晶の花へと、完全に姿を変えてしまっていた。

二人は、自分たちが、とんでもないことをしてしまったのだと、直感した。 後戻りは、できない。 運命の歯車は、今、確かに廻り始めたのだ。

【2章への予告】


この時、二人はまだ知らなかった。 廻り始めた運命の歯車が、次に二人を、喧騒と甘酸っぱい青春が渦巻く 『学園祭』 へと導くことになるということを…。

第2章:学園祭の喧騒


第1節:世界の変転


昨夜の出来事が、夢か現か、ミミにはまだ判別がつかなかった。

ご主人様の頬にキスをした瞬間、確かに世界は変貌したのだ。 窓の外の薔薇が、まるで宝石のように煌めく水晶の花へと姿を変えた。ほんの一瞬の、幻のような光景。 しかし、あの時に胸に宿った不思議な熱だけは、朝になっても消えることなくミミの内に燻り続けていた。

「ご主人様、昨日のこと、覚えてらっしゃいますかにゃ…?」

朝食の準備を終え、書斎で新聞に目を通していたご主人様に、ミミはおずおずと尋ねた。 ご主人様はカップを置き、穏やかな笑みをミミに向ける。

「ああ、もちろん覚えているよ。君が、とても可愛らしいキスをしてくれたこと」

「そ、そうじゃなくてですにゃ!窓の外が、その…!」

「窓の外?何かあったのかい?」

ご主人様は全く気づいていない。やはり、自分だけが見た幻だったのだろうか。 ミミが口ごもっていると、ご主人様は立ち上がり、ミミの目の前にやってきた。そして、その大きな手で、優しくミミの頭を撫ねる。

「ミミ。もし何か不安なことがあるなら、私に話してごらん。君の力になるよ」

その言葉に、ミミの胸の奥がじんわりと温かくなる。 そうだ、一人で悩む必要はないのだ。ご主人様と一緒なら、きっと大丈夫。

「あの、ですにゃ。もう一度だけ、ミミにキスをさせてくださいにゃ。確かめたいことがあるんです」

ミミの真剣な眼差しに、ご主人様は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに優しく微笑んで頷いた。 「君が望むなら」

期待と、ほんの少しの恐怖。 ミミはごくりと喉を鳴らし、背伸びをしてご主人様の唇に自分のそれを重ねた。

瞬間、世界から音が消えた。

視界が真っ白な光で塗りつぶされ、身体がふわりと浮き上がるような奇妙な感覚に襲われる。 ご主人様の腕の中にいるはずなのに、その温もりだけが遠ざかっていく。 目を開けているのか閉じているのかも分からない。赤、青、黄色、緑。無数の色が目の前で混じり合い、渦を巻き、万華鏡の内部に迷い込んだかのようだ。 遠くで誰かの笑い声が聞こえる。音楽のような、雑踏のような、様々な音が奔流となってミミの意識を飲み込んでいく。

(ご主人様…!)

必死に意識を繋ぎ止めようと、心の中で愛しい主人の名を叫んだ。 その声に応えるように、奔流がぴたりと止んだ。

次にミミが意識を取り戻した時、鼻腔をくすぐったのは、埃っぽいチョークの匂いと、インクの香りだった。 ゆっくりと目を開けると、そこは見慣れた書斎ではなかった。 等間隔に並んだ木製の机と椅子。正面には大きな緑色の黒板。壁には習字の作品や、標語の書かれた紙が貼られている。 学校の、教室だ。

「……にゃ?」

混乱するミミの隣で、ご主人様も呆然と立ち尽くしていた。 そして、二人は互いの姿を見て、さらに驚愕することになる。 いつも着ているメイド服や、上質な仕立てのシャツではない。紺色のブレザーに、チェック柄のスラックスとスカート。 見慣れない学生服に身を包んでいたのだ。

ミミはふらふらと教室の隅に置かれた姿見の前に立ち、そこに映る自分の姿をまじまじと見つめた。 ブレザーの胸元には可愛らしいリボンが結ばれ、スカートからは白いソックスに包まれた脚が伸びている。 そして何より、頭からはトレードマークの猫耳がぴょこんと飛び出していた。幸い、周囲にそれを気にする者はいないようだ。

「ご主人様、これは一体…」

ミミが振り返ると、ご主人様は黒板に書かれた文字を指差していた。 そこには、チョークで書かれた勢いのある文字が躍っている。

『文化祭 2年B組 メイド喫茶♡萌え萌えきゅん♡』


「文化祭…?」

聞き慣れない単語にミミが首を傾げていると、窓の外から、わあっという大きな歓声と、賑やかな音楽が飛び込んできた。 校庭らしき場所では、色とりどりの法被を着た生徒たちが走り回り、屋台のようなものがいくつも並んでいるのが見える。

どうやら二人は、学園祭と呼ばれるイベントの真っ只中に転移してしまったらしい。 その事実を、まだ完全には受け止めきれずにいた。

第2節:看板娘と護衛役


教室の扉が勢いよく開き、数人の生徒たちが駆け込んできた。

「おーい、お前ら!そんなとこで突っ立ってないで、準備手伝えよ!もうお客さん来ちまうぞ!」

快活な茶髪の男子生徒が、ご主人様の肩を馴れ馴れしく叩く。まるで、ずっと昔からの友人であるかのように。 ご主人様もミミも、そのあまりに自然な振る舞いに、ただあっけに取られるばかりだ。 反論する隙も与えられず、二人はクラスメイトたちの輪の中に引きずり込まれていった。

「ほら、ミミちゃんはこっち!女子は着替えだよ、着替え!」

「にゃ、にゃんですか!?」

ミミは数人の女子生徒に腕を引かれ、教室の隅にカーテンで仕切られた即席の更衣室へと連れていかれた。 あれよあれよという間に学生服を脱がされ、渡されたのは、フリルとレースがふんだんにあしらわれた、見るからに可愛らしいメイド服だった。

「やっぱりミミちゃんが一番似合うねー!」 「今年のグランプリ、絶対獲れるよ!」

女子生徒たちの称賛の声に、ミミは戸惑いながらも、まんざらでもない気持ちで鏡の前に立った。 いつも着ているクラシカルなロングスカートのメイド服とは違う、スカート丈の短い、愛らしさを前面に押し出したデザイン。 これはこれで、ご主人様に見てほしいかもしれない。

ミミが更衣室から出ると、教室は既に「メイド喫茶」として完璧に飾り付けられていた。 机はクロスがかけられ、壁には手作りのポスターが貼られている。 そして、ミミの姿を認めた男子生徒たちが、わっと歓声を上げた。

「うおおお!ミミ、超絶可愛いじゃん!」 「写真撮らせてくれ!ツーショットで!」

あっという間に、ミミは男子生徒たちに囲まれてしまった。 もみくちゃにされながら、助けを求めるようにご主人様の方を見ると、彼は少し離れた場所で、腕を組んで静かにこちらを見ていた。 その表情は穏やかだったが、瞳の奥には、チリチリと燃える小さな炎が見える。 ミミが他の男に囲まれているのが、面白くないのだ。 そのことに気づいた瞬間、ミミの心に、きゅんとした喜びが広がった。

ご主人様は、さりげなくミミの隣に移動すると、彼女の肩に手を回そうとした男子生徒の手を、やんわりと制した。

「悪いな。うちのメイドに気安く触らないでくれるか」

その低い声には、有無を言わせぬ迫力があった。 クラスメイトたちは一瞬たじろいだが、すぐに「護衛役ご苦労さん!」と笑いながら散っていく。 ご主人様は、そのまま自然な流れでミミの隣に立ち、彼女の「護衛役」を自任するのだった。

やがてメイド喫茶が開店すると、ミミの可愛さはたちまち学園中の評判となった。 教室の前には長蛇の列ができ、ミミは注文を取ったり、お茶を運んだりと大忙しだ。 それでも、ご主人様が常にそばで見守ってくれていると思うと、不思議と疲れは感じなかった。

ようやく訪れた休憩時間。ご主人様は客として席につき、ミミに注文をした。 ミミは心を込めてオムライスを作り、ケチャップでとびきり大きなハートを描いた。

「ご主人様のためだけの、特別オムライスですにゃ♡」

「ああ、いただくよ」

ご主人様は嬉しそうに微笑み、スプーンを口に運んだ。 その光景を眺めているだけで、ミミは胸がいっぱいになる。 この世界が偽物だとわかっていても、この瞬間だけは、紛れもない本物の幸せだった。

その後、二人は手をつないで、活気に満ちた学園祭を見て回った。 お化け屋敷でご主人様の腕にしがみついたり、射的で意外な才能を発揮して大きなぬいぐるみを取ってもらったり。 それはまるで、普通の恋人同士のような、甘酸っぱい青春の一ページだった。 束の間の、しかし忘れられない思い出を、二人は確かに共有していた。

第3節:祭りの終わりと絶望の始まり


祭りの喧騒が落ち着き、夕日が校舎を茜色に染める頃、二人は後夜祭のキャンプファイヤーを眺めていた。 揺れる炎を見つめながら、この不思議な体験の終わりと、元の世界への帰還を意識する。

「綺麗ですにゃ…」

「ああ、そうだな」

ご主人様の隣で、ミミはパチパチと爆ぜる火の粉を見上げていた。 楽しかった一日が終わろうとしている。それは、この偽りの、しかし、かけがえのない青春が終わることも意味していた。

そろそろ、帰る時間だ。

二人は人気のない校舎裏へ移動し、向き合った。 ご主人様は、ミミの肩に、優しく手を置く。

「ミミ、楽しかったかい?」

「はいですにゃ!最高に、楽しかったです!」

ミミは満面の笑みで頷いた。 その笑顔を見て、ご主人様も、満足そうに微笑む。

「よし、帰ろうか。僕たちの家に」

「はいですにゃ!」

二人は、元の世界へ戻るためのキスを交わした。 しかし、目を開けた先にあったのは、見慣れた書斎ではなく、無数のキャンバスが並ぶ画家のアトリエだった。

「……え?」

混乱し、もう一度キスをする。 今度は、ネオンの光が煌めく、サイバーパンクな未来都市の路地裏。

何度試しても、愛しい我が家には戻れない。 魔法が自分たちの制御下にない、残酷な事実を突きつけられる。

楽しかった祭りの思い出が、急速に色褪せていく。 ミミの顔から、血の気が引いていくのが分かった。

【サービスシーン: タイプD】

「どうしよう、ご主人様…ミミたちの、お家は…どこに…」

ミミはご主人様の服の裾を、震える手で掴み、か細い声で呟いた。 その瞳からは、大粒の涙が、ぽろぽろとこぼれ落ちる。

ご主人様もまた、事態の深刻さを理解し、ミミを強く抱きしめることしかできなかった。

「大丈夫だ、ミミ。大丈夫…」

その声が、震えている。 ミミは、ご主人様の胸に顔をうずめ、声を上げて泣いた。 ご主人様は、そんなミミの体を、壊れ物を抱きしめるように、さらに強く抱きしめた。

その時、ミミは、ふと顔を上げた。 そして、涙で濡れた瞳のまま、悪戯っぽく、ふふっと笑ってみせた。

「…ご主人様」

「ん?」

ミミは、自分の着ているメイド服のミニスカートの裾を、そっと、ほんの数センチだけ、指でつまみ上げてみせた。 ちらりと見える、白い太もも。その、ほんの一瞬の光景に、ご主人様の視線は、釘付けになる。

「どんな世界に行っても、ミミは、ご主人様だけのメイドさん、ですにゃ…♡」

それは、絶望的な状況の中で、二人だけに通じる、愛の確認。 ご主人様は、その健気で、あまりにも愛らしいイタズラに、心を射抜かれた。

「…ああ、そうだな」

ご主人様は、愛しさが込み上げてくるのを抑えきれず、ミミの涙に濡れた唇を、激しく求めた。 それは、慰めでもあり、誓いでもあり、そして、どうしようもない不安をかき消すための、魂の叫びのようなキスだった。

「ん…っ、ご主人様…!」

唇を貪り合い、互いの存在を確かめ合う。 その濃厚な接触は、二人の絶望を、ほんの少しだけ、和らげてくれるのだった。

第3章:帰れない二人


第1節:涙の夜


サイバーパンクな未来都市、海の底の神殿、そして今は、どこまでも続く砂漠の真ん中。

何度キスを繰り返しても、二人が戻れるのは、見知らぬ絶望的な風景ばかりだった。 愛しい我が家への道は、完全に閉ざされてしまった。

陽が落ち、砂漠に冷たい夜の闇が訪れると、張り詰めていたミミの緊張の糸は、ぷつりと切れてしまった。

「う…うわああああん、ご主人様ぁ…!」

ミミはその場に崩れ落ち、子供のように声を上げて泣きじゃくった。

「ミミのせいですにゃ…!ミミが、ご主人様とキスなんてしたから…!お家に帰れなくなっちゃった…!」

砂漠の砂に、ぽたぽたと大粒の涙が吸い込まれていく。 ご主人様は何も言わず、泣きじゃくるミミの隣に座ると、その小さな体を優しく抱き寄せた。

「君のせいじゃない」

その声は、砂漠の夜のように静かで、そしてどこまでも優しかった。

「君が謝ることは何もない。悪いのは、この不思議な力を制御できない、僕の未熟さだ」

「でも、でも…!」

「それに、君とのキスは、いつだって僕にとって最高の宝物だよ。後悔なんて、するはずがないだろう?」

ご主人様はそう言うと、ミミの涙で濡れた頬を、そっと指で拭った。 そのあまりの優しさに、ミミはさらに声を上げてしまう。

しばらくの間、ご主人様はただ黙って、ミミが泣き止むまでその背中を優しくさすり続けていた。 やがて、しゃくりあげる声が少しずつ小さくなってきた頃、ご主人様はミミを自分の膝の上に抱きかかえた。

【サービスシーン: タイプA】

まるで、壊れ物を扱うかのように。 ご主人様は、冷え切ったミミの体を、自分の体温で温めるように、ぎゅっと抱きしめる。

ミミは、ご主人様の胸に顔をうずめた。 とくん、とくん、と聞こえる、力強くて優しい心臓の音。 それは、この絶望的な世界で、ミミの心を繋ぎ止める唯一の錨だった。

「大丈夫だ、ミミ。僕がいる。何があっても、君を一人にはしない」

ご主人様は、子守唄を歌うように、ミミの耳元で囁き続ける。 その声と温もりに、ミミの心は少しずつ、少しずつ癒されていく。 寒さと恐怖で震えていた体から、力が抜けていくのを感じた。

「ご主人様…」

「ん?」

「ミミ、寒いですにゃ…もっと、ぎゅってしてくださいにゃ…」

甘えるように、ミミはご主人様の首に腕を回し、さらに体をすり寄せる。 ご主人様は何も言わず、さらに強く、しかし優しく、その小さな体を抱きしめた。

二人の間には、もう言葉は必要なかった。 この温もりと、互いを想う心さえあれば、どんな絶望も乗り越えられる。

ミミは、ご主人様の腕の中で、ゆっくりと安らかな眠りへと落ちていくのだった。

第2節:二人の約束


砂漠の夜が明け、地平線の彼方が白み始めた頃、ミミはご主人様の腕の中で目を覚ました。 昨夜の絶望は、ご主人様の温もりのおかげで、少しだけ和らいでいるように感じられた。

「…おはようございます、ご主人様」

「ああ、おはよう、ミミ。よく眠れたかい?」

ご主人様の優しい声に、ミミはこくりと頷く。 しかし、これからどうすればいいのか、全く分からない。このまま、見知らぬ世界を永遠に彷徨い続けるしかないのだろうか。 不安が再び胸をよぎった、その時だった。

ご主人様は、ミミの体を抱きしめる腕に、さらに力を込めた。

「ミミ、約束しよう」

「約束…ですにゃ?」

「ああ。どんな世界に行っても、何があっても、僕が必ず君を守り抜く。そして、いつか必ず、二人で帰るんだ。僕たちの家に」

その言葉は、力強く、揺るぎない決意に満ちていた。 ミミの瞳から、再び涙が溢れそうになる。でも、それはもう、昨夜のような絶望の涙ではなかった。 嬉しくて、愛しくて、胸がいっぱいになる、温かい涙だった。

「はい…!はいですにゃ、ご主人様!」

ミミもまた、ご主人様の背中に強く腕を回す。 その瞬間、二人の心は完全に一つになった。 もう迷わない。二人でなら、どこへだって行ける。

【サービスシーン: タイプD】

感情の高ぶりを抑えきれず、ミミはご主人様の唇を求めた。ご主人様もまた、その想いに応える。 それは、ただのキスではなかった。 互いの魂をぶつけ合い、一つの存在に溶け合うかのような、激しく、そして濃厚な口づけ。

「ん…っ、ご主人様…」

どちらからともなく、二人は砂の上に倒れ込む。 ミミは下からご主人様を見上げ、ご主人様はそんなミミを強く見つめ返す。

朝日を浴びて、ミミのメイド服の胸元が、汗で肌に張り付いているのが見えた。 ご主人様は、その柔らかな膨らみに、吸い寄せられるように手を伸ばす。

「あ…っ!」

服の上から、その温かく柔らかな感触を確かめるように、優しく揉む。 ミミの口から、甘い吐息が漏れた。 それは、この絶望的な世界にはあまりにも不釣り合いな、背徳的で、官-能的な光景だった。

「ミミ…好きだ…」

「ミミも…ご主人様だけが、好きですにゃ…」

二人は、互いの体を求め合うように、砂の上で何度も何度もキスを繰り返した。 この約束と、この愛情さえあれば、きっと大丈夫。 今はまだ、そう信じることしかできなかった。

唇を離した二人は、決意を新たに、次の世界へ移動するためのキスを交わす。 今度は、どんな世界が待っているのだろうか。 もう、何も怖くはなかった。

第3節:純粋な願いと暴走の序曲


決意のキスを交わし、二人が次にたどり着いたのは、穏やかな草原が広がる、比較的平和な世界だった。 小さな村があり、人々は素朴で親切だった。 二人は、旅の商人として身分を偽り、その村で数日間の休息を取ることにした。

絶望的な状況は変わらない。しかし、ご主人様との固い約束が、ミミの心を強く支えていた。 もう、泣いてばかりはいられない。自分がしっかりしなければ。 そして、何よりも、ご主人様の心を癒してあげなければ。

その想いが、ミミを少しだけ大胆にさせていた。

その日の夕食後、村の宿屋の一室で。 ミミは、ご主人様が日中の労働で疲れているだろうと、お風呂の準備を申し出た。

「ご主人様、お背中、流してさしあげますにゃ」

「ん?ああ、ありがとう。でも、一人で大丈夫だよ」

「いえ、ミミがやりたいんですにゃ。ご主人様は、ミミの 『ご主人様』 なんですから」

その言葉には、有無を言わせぬ響きがあった。 ご主人様が少し戸惑っていると、ミミはさらに、悪戯っぽく微笑んでみせた。

【サービスシーン: タイプB】

「それとも…ミミと一緒に入るのが、恥ずかしいですかにゃ?」

ミミはそう言うと、自分のメイド服の胸元のリボンに、そっと指をかけた。 今にも解けてしまいそうな、その仕草。湯気でほんのり上気した肌と、潤んだ瞳。 その積極的なアピールに、ご主人様は思わず息を呑んだ。

「…わかった。背中だけ、お願いしようかな」

結局、ご主人様はその誘いを、やんわりと、しかし断りきれずに受け入れるしかなかった。

浴室に満ちる湯気の中、ミミはご主人様の逞しい背中を、心を込めて洗い始めた。 石鹸の滑らかな泡が、ご主人様の筋肉の筋をなぞっていく。 その背中の温かさと、すぐそばにあるご主人様の存在を感じていると、ミミの胸に、ある強い想いが芽生え始めていた。

(ご主人様は、こんなに素敵なのに…こんなに優しくて、強くて、ミミにはもったいないくらいの人なのに…どうして、こんな辛い目に合わなければならないんだろう…)

もっと、ご主人様に幸せになってほしい。 世界中の誰よりも、愛されて、大切にされて、何一つ不自由のない、最高の楽園のような世界で、笑っていてほしい。

その純粋な願いは、しかし、あまりにも強く、そして一途すぎた。

ミミの心に宿ったその願いは、彼女自身も気づかぬうちに、キスによって発動する「世界線確定魔法」の次の行き先を、決定づけてしまっていた。

それは、ご主人様を最高の王様にする、甘美で、そして残酷な「ハーレレム世界線」への、片道切符だった。

風呂から上がり、火照った体でご主人様と見つめ合う。

「ご主人様…」 「ミミ…」

どちらからともなく、二人は唇を重ねた。 次の世界への、旅立ちのキス。

ミミの純粋な願いが、これから二人を最も過酷な精神的試練へと誘うことになるとも知らずに。

第4章:ハーレム世界線の誘惑と嫉妬の炎


第1節:静寂の楽園と穢れの印


キスの後、二人が目を開けると、そこは今まで体験したどの世界とも全く異なる、静寂と清浄に満ちた光景だった。

床は磨き上げられた水晶でできており、自分たちの姿を鏡のように映している。 天井は存在せず、代わりに、無数の星々が流れる天の川が、ドーム状に空間を覆っていた。 空気はひんやりと澄み渡り、どこからか、鈴の音のような、心地よい音楽だけが微かに聞こえてくる。

「ここは…」

ご主人様が呟く。その声は、玉座の間のようなだだっ広い空間に、朗々と響き渡った。 見れば、ご主人様は月の満ち欠けが刺繍された、荘厳な衣をまとっている。 そしてミミ自身も、天の羽衣のように軽やかで、幾重にも布が重なった美しい侍女の服を着ていた。

二人が状況を把握するよりも早く、玉座の間の巨大な扉が、音もなく開かれた。 そして、一人の侍女が、深く、深くこうべを垂れて告げる。

「王様。長らく地上に降りられていた姫様が、ただ今、全ての穢れを払われ、ご帰還なされました」

王。姫。 その言葉で、二人はこの世界での役割を理解した。 ご主人様は、この月の都の王。そして、これから帰ってくる「姫」の父親なのだと。

やがて、侍女たちに導かれ、一人の少女が玉座の間へと入ってきた。 色素の薄い、絹のような銀髪。星の光を閉じ込めたような、大きな瞳。 その姿は、まさしく絶世の美姫。地上での名を、かぐや姫といった。

「お父様、ただいま戻りました」

感情の起伏を感じさせない、鈴を転がすような声。 しかし、ご主人様…いや、月の王は、その帰還を心から喜んだ。

「おお、よく戻った、私のかぐや。もうどこへも行かせるものか。これからは、ずっと私のそばにいるのだ」

王は姫を強く抱きしめ、その溺愛ぶりを隠そうともしない。 その光景は、ミミの胸を、ちくりと刺した。

ミミもまた、王に仕える筆頭侍女として、甲斐甲斐しく働こうとした。 お茶を運び、衣の手入れをし、寝室の準備をする。 しかし、この月の都では、ミミの存在は少しだけ異質だった。

他の侍女たちは、皆、感情というものをほとんど表に出さない。 だが、ミミはご主人様の役に立てることが嬉しくて、つい顔がほころんでしまう。尻尾が、ぱたぱたと揺れてしまう。 そして何より、ミミの頭には、この都では 「地上の穢れ」の象徴とされる、ふわふわの猫耳が生えているのだ。

「ミミ。あなたは王様に仕える身でありながら、感情の抑制ができていません。その耳も、他の者への配慮が足りていないのではなくて?」

侍女長であるさやかは、氷のように冷たい声で、度々ミミにそう注意した。 他の侍女たちも、遠巻きにミミを見て、ひそひそと何かを囁いている。 ミミは、この清浄な世界で、自分だけが汚れた存在であるかのような、深い孤独を感じていた。

【サービスシーン: タイプB】

その夜。孤独感に耐えきれなくなったミミは、そっと王の寝室へと忍び込んだ。 ご主人様は、静かな寝息を立てて、深い眠りについている。

ミミは、そのベッドの傍らに跪くと、眠るご主人様の大きな手を、そっと取った。 そして、その指先を、自分の頭へと導いた。

「ご主人様…」

ご主人様の手が、穢れの象徴とされる、ミミの猫耳にそっと触れる。 ぴく、と耳が震えた。

「この世界では、ミミの耳は、汚いものらしいですにゃ。でも、ご主人様だけは…ご主人様だけは、ミミの全部を、受け入れてくださいますにゃ…」

眠っているご主人様に語りかけながら、ミミはその手に、自分の耳を何度もすり寄せた。 月の光が、水晶の窓から差し込み、涙を浮かべるミミの横顔を、幻想的に照らし出していた。

第2節:ライバル登場とアピール合戦


月の都での日々は、静かに、しかし確実にミミの心を蝕んでいった。

王であるご主人様は、溺愛する娘、かぐや姫の世話にかかりきりだ。 かぐや姫もまた、父である王にべったりと甘え、片時もそばを離れようとしない。 その姿は、無垢で、儚げで、いじらしい。 だが、ミミの目には、それが計算された行動のように見えて仕方がなかった。

「お父様、地上の話をしてさしあげますわ。わらわは、こんなにも辛い思いをしてきたのです…」

かぐや姫は、王の膝に乗り上げると、潤んだ瞳でそう訴える。 その度に、王は心を痛め、かぐや姫をさらに手厚く遇するのだった。

そんな二人を、氷のような瞳で見つめているのが、侍女長のさやか だ。 彼女は、王の気を惹こうとするかぐや姫の行動を、全て見透かしているようだった。

「姫様。王様をあまりお困らせするものではございません。さあ、お部屋へお戻りください」

清は、感情の読めない声でそう言うと、半ば強引にかぐや姫を王から引き離す。 そして、王と二人きりになると、こう進言するのだ。

「王よ。姫はまだ、地上の穢れが抜けきっておられぬご様子。しばらくは、わたくしが付きっきりで、月の都の作法を教え込む必要がありましょう」

それは、王の関心を自分に向けさせるための、実に巧妙な口実だった。

【サービスシーン: タイプB】

さらに、ミステリアスな月の巫女、月詠つくよみ も、虎視眈々と王の心を狙っていた。 彼女は、神託にかこつけて、頻繁に王と二人きりになろうとする。

「王様。今宵は、月の満ち欠けが、王の寝室に影響を与えるとの神託がございました。わたくしが、その身をもって、邪気を払う結界となりましょう…」

月詠はそう言うと、薄い衣一枚の姿で、王の寝室の床に横たわる。 その白い肌は月の光を浴びて青白く輝き、豊満な胸やしなやかな脚のラインを、惜しげもなく晒している。 それは、祈りというよりは、ほとんど誘惑に近い行為だった。

三者三様のアピール合戦。 その中で、猫耳を持つミミは、蚊帳の外だった。 ご主人様の役に立ちたいのに、近づくことすらできない。 そのもどかしさと嫉妬が、ミミの中で渦巻いていた。

(このままじゃ、ダメですにゃ…!ご主人様が、ミミを忘れてしまう…!)

その夜、ミミは一つの決意を固めた。 月の都の作法など、知ったことではない。 自分は、ご主人様のためだけのメイドなのだから。

ミミは、侍女服を脱ぎ捨てると、かつてご主人様が大好きだと言ってくれた、黒のメイド服に着替えた。 そして、月の光が差し込む、王の寝室へと向かう。

「ご主人様。ミミが、月の都の誰よりも、ご主人様を『お世話』してさしあげますにゃ」

その声は、決意と、そして少しの熱を帯びて、静寂の寝室に響き渡った。

第3節:燃え上がる嫉妬と決意の夜


ミミが王の寝室にたどり着くと、そこでは既に、静かな戦いの火蓋が切られていた。 かぐや姫が王の腕にすがりつき、清がそれを諌め、月詠が妖艶な笑みで様子をうかがっている。 王であるご主人様は、その中心で困り果てていた。

ミミは、もう黙って見ていられなかった。

「皆様、そこまでになさいませ」

凛とした声が、部屋に響く。 三人の視線が、一斉にミミへと突き刺さった。 月の都の侍女服ではない、黒と白の、懐かしいメイド服。そして、穢れの象徴である猫耳を、隠そうともせずに晒している。

「あなたこそ、王の御前でその無作法な姿は…」

清が言いかけた言葉を、ミミは強い視線で遮った。

「ミミは、このお方…ご主人様に仕えるためだけに存在するメイドですにゃ。月の都の作法など、ミミには関係ありません」

ミミはまっすぐにご主人様だけを見つめ、その前に進み出ると、深く、優雅に一礼した。

「ご主人様。お休み前のミルクティーをお持ちしました。ミミが、ご主人様のためだけにお淹れした、特別なものですにゃ」

その言葉と行動は、他の三人に対する明確な宣戦布告だった。 かぐや姫が「お父様はわらわと…」と言いかけるが、ご主人様の心は、もう決まっていた。

「ああ、ありがとう、ミミ。君の紅茶が飲みたかったんだ」

ご主人様はそう言うと、ミミの手からカップを受け取った。 その瞬間、ミミの瞳から、ぽろりと一筋の涙がこぼれ落ちた。

【サービスシーン: タイプA】

「ご主人様…ミミは、もう、ご主人様のお世話もできないのかと思いましたにゃ…」

その健気な涙に、ご主人様の胸は締め付けられる。 彼はカップを置くと、ミミの体を優しく引き寄せ、その涙を指で拭った。

「そんなことはない。君は、いつだって私の、たった一人のメイドだ」

その言葉を聞いた瞬間、ミミの中で、これまで抑えつけていた全ての感情が爆発した。

【サービスシーン: タイプD】

「にゃーーーっ!」

猫のような叫び声と共に、ミミはご主人様の胸に飛び込んだ。 そして、驚く三人に見せつけるように、ご主人様の唇を激しく奪った。 それは、嫉妬と、独占欲と、そして「私のご主人様だ」という強い意志表示。 舌を絡め、角度を変え、息もつかせぬほどの濃厚なキス。

「ん…っ、んん…!」

ご主人様もまた、ミミの全てを受け入れるように、そのキスに応える。

長い、長いキスの後。 ミミは唇を離すと、涙で潤んだ瞳で、ご主人様を見つめた。

「ご主人様は、ミミだけのものですにゃ…!」

その魂の叫びに、ご主人様は静かに頷くと、かぐや姫たちに向き直り、きっぱりと告げた。

「今夜は、ミミと二人きりで話がしたい。皆、下がってくれるか」

その言葉は、絶対的な王の命令。 三人は、悔しさと嫉妬を滲ませながらも、静かに部屋を退出していくしかなかった。

扉が閉まり、寝室に二人きりになると、ミミは再びご主人様の胸に顔をうずめ、声を上げて泣きじゃくるのだった。

第5章:涙の告白と大胆なキス


第1節:大胆なアプローチ


静寂が戻った王の寝室。 ご主人様は、腕の中で泣きじゃくるミミの背中を、優しくさすり続けていた。

やがて、ミミの嗚咽が少しずつ落ち着いてくると、ご主人様はその体をそっと離し、涙に濡れた瞳をまっすぐに見つめた。

「ミミ、すまなかった。君に、こんなにも寂しい思いをさせていたなんて…」

「ご主人様のせいでは、ありませんにゃ…。ミミが、我慢できなかっただけで…」

「ううん。私が、君の気持ちにもっと早く気づくべきだった。この世界は、君の願いが生んだ世界のはずなのに、君を一番苦しめてしまった」

その優しい言葉に、ミミの心は温かい愛情で満たされていく。 と同時に、このままではいけない、という強い想いが湧き上がってきた。 この偽りの楽園から、ご主人様を連れ出さなければ。二人だけの、本当の世界へ帰るために。

ミミは、涙をぐっとこらえると、決意の表情でご主人様を見つめ返した。

「ご主人様。ミミのお願いを、聞いてくださいますかにゃ?」

「もちろんだよ。君の願いなら、何でも」

その言葉を待っていたかのように、ミミは大胆な行動に出た。

【サービスシーン: タイプD】

ミミは、おもむろに自分のメイド服の肩紐に手をかけると、それをゆっくりと、肌の上を滑らせるように下ろしていった。 月の光を浴びて、白く滑らかな肩があらわになる。 そして、服は重力に従って、はらりと床に落ちた。 下着だけの、扇情的な姿。

「ミミ…!?」

ご主人様が驚きに目を見開く。 ミミは、そんなご主人様に向かって、一歩、また一歩と近づいていく。 そして、ベッドの端に座るご主人様の膝の上に、そっと腰を下ろした。

「ご主人様。ミミを、月の都の誰よりも、ううん、この世界の誰よりも、愛してくださいにゃ」

吐息がかかるほどの距離で、ミミはご主人様の耳元で囁いた。 そして、その首筋に、甘く吸い付くようなキスを落とす。

「んっ…」

ご主人様の喉から、思わず声が漏れる。 ミミは、ご主人様の反応を確かめるように、何度も、何度も、首筋や耳たぶにキスを繰り返した。 それは、この世界から脱出するための、ミミの必死で、そしてあまりにも大胆なアプローチだった。

「ミミを、選んでくださいにゃ…」

涙ながらにそう訴えるミミの姿に、ご主人様の心は、完全に決まった。

第2節:ご主人様の告白


ご主人様は、膝の上で震えるミミの華奢な体を、力強く、しかし壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめた。

「選ぶまでもない。私の心は、最初からずっと、君だけのものだ」

その声は、絶対的な確信に満ちていた。 ミミの瞳から、安堵の涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。

「ご主人様…!」

「すまなかった、ミミ。かぐや姫や、他の者たちに優しくしたのは、この世界の王としての役割を果たそうとしただけなんだ。だが、そのせいで君を不安にさせてしまった。私が、間違っていた」

ご主人様は、月の都に来てからの日々を思い返す。 確かに、そこは物質的には何一つ不自由のない、完璧な楽園だったかもしれない。 しかし、心が満たされることはなかった。 ミミの心からの笑顔が見られない世界、ミミが孤独を感じる世界など、ご主人様にとっては、何の意味もなさないのだ。

「豪華な食事も、美しいだけの侍女も、私には必要ない。ミミさえいればいい。君が淹れてくれる紅茶を飲み、君の笑顔を見て、君の猫耳を撫deていられるなら、私は他に何もいらないんだ」

それは、ご主人様の、魂からの告白だった。

【サービスシーン: タイプA】

ミミは、その言葉を聞きながら、ご主人様の胸に顔をうずめた。 とくん、とくん、と心地よく響いてくる、ご主人様の心臓の音。 ミミは、その音を聞いているだけで、幸せな気持ちになれた。

「ミミも…ミミも、ご主人様さえいれば、どこだって天国ですにゃ」

二人は、どちらからともなく、互いの体をぴったりと寄せ合った。 肌と肌が触れ合う温もり、互いの呼吸、そして、ただそこにいるだけで満たされる、絶対的な安心感。 これこそが、二人が本当に求めていたものだった。

ご主人様は、ミミの柔らかな髪に顔をうずめ、その香りを深く吸い込んだ。 甘くて、少しだけ太陽の匂いがする、ミミだけの特別な香り。

「この世界を、終わらせよう。そして、帰るんだ。僕たちの本当の家に」

「はいですにゃ、ご主人様」

ミミは顔を上げ、涙で濡れたまま、最高の笑顔で頷いた。 二人の心は、今、完全に一つになった。 この偽りの楽園を終わらせ、次の世界へと旅立つために。

第3節:楽園との決別


翌朝、王の寝室に、かぐや姫、清、月詠の三人が呼び出された。 三人は、昨夜の出来事から、王が何らかの決断を下すことを予感していた。 その表情は、緊張と、少しの期待に満ちている。

ご主人様は、王の衣をまとってはいるが、その隣には、下着姿のままのご主人様のシャツを一枚だけ羽織った、ミミが寄り添っていた。 その姿は、二人が昨夜、どのような時間を過ごしたのかを雄弁に物語っていた。

「皆、聞いてほしい」

ご主人様は、静かに、しかしきっぱりとした口調で語り始めた。

「私は、この月の都の王であることをやめる。そして、ミミと共に、ここを去ることにした」

「な…!?」

その言葉に、三人は絶句した。 特に、父の愛を一身に受けていたかぐや姫は、信じられないといった表情でわなわなと震えている。

「お父様、本気ですの…?わらわを、また一人にするのですか…?」

「一人ではないだろう。ここには、君を支えてくれる者たちがいる。それに、ここは君が安らぐべき場所だ。だが、私の居場所は、ここにはない」

ご主人様は、ミミの肩を強く抱き寄せた。

「私の居場所は、ミミの隣だけだ。彼女のいない世界に、私にとって価値はない」

その言葉は、三人の心を打ち砕くには、あまりにも十分すぎた。 清は無表情のまま固まり、月詠は悲しげに微笑み、そしてかぐや姫は、その場に泣き崩れた。

ご主人様は、そんな三人にもう一度だけ向き直ると、「世話になった」と短く告げた。 そして、ミミの手を取る。

「行こう、ミミ」

「はいですにゃ、ご主人様」

二人の心は、完全に一つになっていた。 この偽りの楽園を捨て、次なる世界へ旅立つための、最後の儀式。

【サービスシーン: タイプD】

ご主人様は、ミミの顎に手を添えると、三人が見ている前で、その唇を激しく奪った。 それは、この世界への決別の証であり、ミミだけを愛するという、揺るぎない誓いのキス。 舌を絡め、互いの全てを確かめ合うような、深く、長いキス。

やがて唇が離れると、二人の体は、ゆっくりと光の粒子に変わり始めた。

「さようなら、お父様…」

かぐや姫の悲痛な声が、遠のいていく。

(ごめん、かぐや姫…。でも、ご主人様は、ミミだけのものなんですにゃ…!)

ミミは心の中で、そう呟いた。

しかし、甘い世界を拒絶した反動は、二人の想像を絶するものだった。

次に目を開けた時、彼らを待っていたのは、全てが枯れ果て、灰色の塵が舞う、荒廃しきった絶望の世界だった。

第6章:過酷な世界での試練


第1節:灰色の絶望


目の前に広がるのは、どこまでも続く灰色の世界だった。

空は厚い雲に覆われ、太陽の光は届かない。 大地はひび割れ、草木一本生えていない。 時折吹き抜ける乾いた風が、砂塵を舞い上げ、二人の頬を打つ。

「ここは…」

ミミは、あまりの光景に言葉を失った。 月の都の、あの清浄で美しい世界とは、何もかもが正反対。 生命の気配が一切感じられない、死の世界だ。

ご主人様は、ミミの体をかばうように、強く抱きしめた。

「大丈夫だ、ミミ。私がそばにいる」

しかし、その声も、この絶望的な風景の中では、か細く響くだけだった。

二人は、あてもなく歩き始めた。食料も、水もない。 ただ、このまま立ち止まっていれば、死を待つだけだという本能だけが、二人を突き動かしていた。

どれくらい歩いただろうか。 二人の体力は、もう限界に近かった。 喉はカラカラに渇き、足は鉛のように重い。

その時、ミミの足が、何もないところで、もつれた。

「にゃっ!?」

【サービスシーン: タイプC】

ミミは、前のめりに、砂塵の上へと倒れ込んでしまう。 その衝撃で、長い旅路で脆くなっていたメイド服の胸元が、ビリっと音を立てて大きく破けてしまった。

「あ…!」

白い肌と、豊かな胸の谷間が、あらわになる。 ミミは、恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、慌てて胸元を腕で隠した。

「ミミ、大丈夫か!?」

ご主人様が駆け寄り、ミミを抱き起す。 その時、ご主人様の視線が、ミミの破れた服と、そこから覗く素肌に、一瞬だけ釘付けになった。

「ご、ご主人様のエッチ…!」

「いや、これは不可抗力だ!」

こんな極限状況だというのに、二人の間には、一瞬だけ、甘酸っぱいような、気まずいような空気が流れた。 ご主人様は、慌てて自分の上着を脱ぐと、ミミの肩にそっとかけてやる。

「すまない…」

「ううん…ありがとうございます、ですにゃ…」

その小さなハプニングは、この灰色の世界で、唯一の色を持った出来事だった。 しかし、それも束の間。 二人の前には、変わらない絶望の風景が、どこまでも、どこまでも広がっているのだった。

第2節:支え合う二人


荒廃した世界を彷徨い、数日が経過した。 食料も水も尽き、二人の体力は限界を超えていた。 意識は朦朧とし、一歩進むごとに、足元がおぼつかなくなる。

「ご主人様…もう、ミミは…」

ミミが力尽き、その場に崩れ落ちそうになった、その時。 ご主人様は、最後の力を振り絞り、ミミの体を抱きかかえた。

「しっかりしろ、ミミ。もう少しだ。もう少しで、何かが見つかるはずだ」

その声も、ひどくかすれている。 ご主人様自身も、もう限界のはずだった。それでも、ミミを励まし、その体を支え続けている。 その姿に、ミミは胸が張り裂けそうになった。

(ミミのせいで…ミミが、ご主人様をこんな目に…)

その夜、二人は、風をしのげる岩陰で、寄り添うように座り込んでいた。 もう、指一本動かす力も残っていない。

「ご主人様…ごめんなさい…ですにゃ…」

「謝るな、ミミ。君は、何も悪くない」

ご主人様は、ミミの頭を優しく撫でた。その手は、ひどく冷たくなっている。

「ただ…少し、疲れたな…」

ご主人様の言葉に、ミミははっとした。 このままでは、二人とも、本当に死んでしまう。

(嫌だ…!ご主人様が、いなくなってしまうなんて、絶対に嫌だ…!)

その強い想いが、ミミの心の奥底に、小さな火を灯した。

【サービスシーン: タイプA】

ミミは、残された最後の力を振り絞り、ご主人様の体に、自分の体をぎゅっと押し付けた。

「ミミの…ミミの体温で、ご主人様を温めますにゃ…」

「ミミ…」

「ご主人様は、ミミが守りますにゃ…。だから、だから…」

ミミは、ご主人様の冷たい頬に、自分の頬をすり寄せた。 そして、その唇に、自分の唇をそっと重ねる。 それは、世界を移動するためのキスではない。 ただ、愛する人の命を繋ぎ止めたいという、必死の祈りを込めたキスだった。

唇から伝わる、わずかな温もり。 ミミは、自分の命を、ご主人様に分け与えるかのように、何度も、何度も、そのキスを繰り返した。

この過酷な世界が、皮肉にも、二人の精神的な結びつきを、これまで以上に強く、そして固くしていた。 互いの存在だけが、唯一の希望。唯一の、生きる理由。

ご主人様は、そんなミミの健気な姿に、失いかけていた意識を、なんとか繋ぎ止めるのだった。

第3節:守るための力と暴走


ミミの必死の看病もむなしく、ご主人様の体は、どんどん冷たくなっていく。 意識も、ほとんどない状態だ。

(このままじゃ、ご主人様が…!)

ミミは、ご主人様を守りたい一心で、自分の中に眠る「世界線確定魔法」の力に、意識を集中させた。

(お願い…!ミミの力で、ご主人様を助けて…!もっと、もっと温かい、安全な場所へ…!)

しかし、焦りと極度の疲労、そしてご主人様を失うかもしれないという恐怖が、ミミの精神を蝕んでいた。 力の制御が、全く効かない。

(お願いだから、動いて…!)

ミミは、ほとんど無意識のうちに、ご主人様の唇に、自分の唇を重ねた。 それは、魔法を発動させるための、最後の手段。

その瞬間、二人の体を、今まで感じたこともないような、凄まじい光の奔流が包み込んだ。

「あ…ああ…っ!」

ミミの意思とは無関係に、魔法が荒れ狂う。 視界が、目まぐるしく変化していく。 燃え盛る火山の火口、全てが氷に閉ざされた極地、巨大な怪物が跋扈する原始の森。 安全な場所どころか、より危険で、より過酷な世界を、二人は目まぐるしく転移し続ける。

【サービスシーン: タイプD】

その混沌とした転移の最中、二人の体は、強く、強く結びつけられていた。

ミミは、ご主人様を失わないように、必死でその体に抱きつき、しがみつく。 ご主人様もまた、朦朧とした意識の中で、ミミの柔らかな体を、決して離すまいと強く抱きしめていた。

服が破れ、肌が直接触れ合う。 互いの体温、互いの呼吸、互いの鼓動だけが、この混沌とした世界で、唯一の確かなものだった。

「ご主人様…!離れないで…!」

「ミミ…!」

意識が途切れる寸前、ミミは、ご主人様の唇を、もう一度、強く求めた。 それが、この悪夢のような奔流の中で、唯一、自分の意思でできることだったから。

そして、二人の意識は、ついに限界を超え、混沌とした世界線の奔流の中へと、完全に飲み込まれていくのだった。

第7章:魔法の暴-走と深まる謎


第1節:混沌の奔流


意識が、ない。 あるのは、ただ、ご主人様の温もりだけ。 ミミは、その温もりだけを頼りに、暗く、冷たい奔流の中を漂っていた。

どれくらいの時間が経ったのだろう。 ふと、意識が急速に浮上するのを感じた。

目を開けると、そこは、全てが逆さまになった世界だった。 地面が頭上にあり、空が足元に広がっている。 重力も滅茶苦茶で、体がふわふわと宙に浮いていた。

「ご主人様…!?」

隣を見ると、ご主人様も、ゆっくりと目を開けるところだった。 その体は、ひどく衰弱してはいるが、命の光は、まだ消えていない。

「ミミ…無事か…」

「はいですにゃ…!ご主人様こそ…!」

二人が互いの無事を確かめ合った、その瞬間。 世界が、再びぐにゃりと歪んだ。

次の瞬間には、二人は巨大なキノコが生い茂る、薄暗い森の中にいた。 かと思えば、次の瞬間には、全てがお菓子でできた、甘い香りの家に。 そして、また次の瞬間には、魚たちが空を泳ぐ、海の中の世界へ。

魔法の暴走は、まだ収まっていなかった。 ミミの意思とは無関係に、二人は、意味不明で、支離滅裂な世界を、次から次へと渡り歩かされていく。

【サービスシーン: タイプC】

そんな目まぐるしい転移の最中、一つのハプニングが起きた。 二人が、灼熱の溶岩が流れる火山の世界に、ほんの一瞬だけ転移した時のことだ。 その熱で、ミミのボロボロだったメイド服が、ついに限界を迎え、燃え尽きてしまったのだ。

「にゃっ!?」

次の世界、美しい花畑に転移した時、ミミは自分が真っ裸であることに気づき、悲鳴を上げた。

「み、見ないでくださいにゃーっ!」

ミミは、その場に咲いていた大きな花の影に、慌てて身を隠す。 ご主人様も、目のやり場に困り、顔を真っ赤にしていた。

「す、すまない…!」

「ご主人様のエッチ!助平!変態ですにゃー!」

こんな状況だというのに、ミミは恥ずかしさのあまり、涙目でご主人様を罵倒する。 しかし、その罵倒も、すぐに次の転移によってかき消されてしまった。

水中の世界、機械だけの世界、音が一切ない世界。 悪夢のような転移は、一体いつまで続くのか。 二人の精神は、もう限界寸前だった。

第2節:静寂の世界


どれほどの数の世界を、どれほどの時間、彷徨ったのだろうか。 ミミの意識が、もう何度目かも分からない覚醒を迎えた時、あることに気づいた。

(…静か、ですにゃ)

あれほど続いていた、目まぐるしい世界の転移が、嘘のようにぴたりと止まっていたのだ。

ミミは、ゆっくりと体を起こした。 隣では、ご主人様も、同じように体を起こそうとしている。 ミミは、ご主人様の体を支えながら、周囲を見渡した。

そこは、奇妙なほど静かで、そして無機質な世界だった。 空には、太陽も月も星もなく、ただ均一な、乳白色の光が満ちているだけ。 地面は、どこまでも続く、継ぎ目のない金属のような板で覆われている。 そして、その地平線の彼方まで、同じ形をした、黒い石の塔のような建造物が、等間隔に、無数に立ち並んでいた。

生命の気配が、一切ない。 風の音すら、聞こえない。 あまりの静寂に、耳が痛くなるほどだった。

「ミミ、服を…」

ご主人様が、自分の着ていた上着を、そっとミミの裸の体にかけてくれた。 その温かさに、ミミは少しだけ、現実感を取り戻すことができた。

「ありがとうございます、ですにゃ…ご主人様、ここは…」

「分からない。だが、少なくとも、あの悪夢のような転移は収まったようだ」

二人は、ひとまず、この静寂の世界で休息を取ることにした。 幸い、この世界には、飢えも渇きも、寒さも暑さもないようだった。 ただ、静寂だけが、二人を支配していた。

【サービスシーン: タイプA】

その夜、二人は、黒い石の塔の一つにもたれかかり、寄り添って座っていた。 ミミは、ご主人様の上着にくるまりながら、その胸に、そっと顔をうずめる。

「ご主人様…」

「どうした?」

「ミミ、怖かったですにゃ…もう、ご主人様と、会えなくなるんじゃないかって…」

その声は、まだ少し震えている。 ご主人様は、そんなミミの頭を、優しく撫でた。

「大丈夫だ。僕たちは、もう離れたりしない」

ご主人様は、ミミの体を、ぎゅっと抱きしめた。 肌と肌が直接触れ合う、温かい感触。 ミミは、その温もりを確かめるように、ご主人様の背中に、そっと腕を回した。

この無機質で、冷たい世界で、互いの体温だけが、唯一の確かなもの。 二人は、どちらからともなく、唇を寄せた。 それは、激しいキスではない。 ただ、互いの存在を確かめ、安心させるための、優しくて、穏やかなキスだった。

しばらくの間、二人は言葉もなく、ただ静かに、互いの温もりを感じ続けていた。 この静寂の世界が、今の二人にとっては、何よりの安らぎを与えてくれる、聖域のように感じられた。

第3節:先人のメッセージ


静寂の世界で数日間の休息を取り、二人の体力は少しずつ回復していった。 ご主人様は、この世界の正体を探るため、無数に立ち並ぶ黒い石の塔の一つを、調べてみることにした。

塔は、滑らかな黒曜石のような石でできており、どこにも入り口らしきものは見当たらない。 しかし、ご主人様がその壁に手を触れた、その瞬間だった。

塔の表面に、まるで水面のように波紋が広がり、そして、古代の文字のようなものが、青白い光を放ちながら浮かび上がってきたのだ。

「これは…文字か?」

ご主人様がその文字をなぞると、二人の脳内に、直接、その意味が流れ込んできた。

『我、同じ力を持つ者なり。幾千の時を、愛する者と共に、世界を渡り歩きたり』

「同じ力を持つ者…!?」

ミミとご主人様は、顔を見合わせた。 自分たち以外にも、この魔法を使う者が、過去に存在したというのだ。

二人は、夢中で他の塔も調べて回った。 すると、それぞれの塔に、異なるメッセージが断片的に刻まれていることが分かった。

『この力は、願いを叶える。しかし、代償もまた、大きい』

『偽りの願いは、無限の混沌に魂を喰われるだろう』

『真の望みだけが、終着点への道を開く』

それは、まるで、先人からの警告のようだった。

【サービスシーン: タイプB】

そんな調査の途中、ミミは、ある一つの塔に、他の塔とは少し違う、小さな紋様が刻まれているのを見つけた。 それは、猫の肉球のような、可愛らしい形をしていた。

「ご主人様、これ…」

ミミがその紋様に、自分の手をそっと重ねてみる。 すると、塔の中から、ふわりと、温かい光に包まれた、一枚の衣服が現れた。 それは、ミミが失くしてしまったものとよく似た、黒と白のメイド服だった。

「これは…先人からの、贈り物、ですかにゃ…?」

ミミは、少し恥ずかしそうにしながらも、その場でご主人様に着替えさせてもらうことにした。 ご主人様は、ミミの裸の背中に、そっとメイド服を当てがう。 その指先が、素肌に触れるたびに、ミミの体は、ぴくん、と可愛らしく震えた。

「ご主人様…なんだか、ドキドキしますにゃ…」

「静かに。今、リボンを結んでいるんだ」

ご主人様は、ぶっきらぼうにそう言いながらも、その耳が少しだけ赤くなっているのを、ミミは見逃さなかった。

服を着終えたミミは、改めて、目の前の塔を見上げた。 先人は、一体何を伝えたかったのか。 そして、「終着点」とは、何を意味するのか。

謎は、深まるばかりだった。

第8章:魔法の真実


第1節:石碑の導き


先人からのメッセージ。 それは、絶望的な状況にいた二人にとって、初めて差し込んだ一筋の光だった。

二人は、無数にある黒い塔の中から、肉球の紋様が刻まれた、ミミに服を与えてくれたあの塔を、集中的に調べることにした。

「何か、他の塔とは違う、特別な意味があるはずだ…」

ご主人様は、塔の壁に刻まれた古代文字を、一つ一つ、指でなぞっていく。 ミミも、その横で、何か見落としがないか、必死に壁を見つめていた。

しかし、いくら調べても、得られるのは断片的な情報ばかり。 焦りだけが、募っていく。

その夜、調査に行き詰まった二人は、塔にもたれかかり、途方に暮れていた。

「ご主人様…やっぱり、ミミたちには、無理なんですにゃ…」

ミミが弱音を吐いた、その時だった。 ご主人様が、何かに気づいたように、はっと顔を上げた。

「ミミ、違う。一人じゃない。二人なんだ」

「え…?」

「この魔法は、君一人だけの力じゃない。僕と君、二人の力だ。だから、きっと、この謎を解く鍵も…」

ご主人様はそう言うと、ミミの手を取った。 そして、二人で一緒に、塔の壁に、そっと手を触れた。

その瞬間、塔全体が、今までとは比べ物にならないほどの、眩い光を放った。

そして、二人の脳内に、膨大な情報と、そして、ある男女の記憶が、濁流のように流れ込んできた。

それは、この魔法の先人である、一人の男と、彼が愛した女性の、長くて、そして悲しい旅の記憶だった。 彼らもまた、愛するがゆえに、この力を使い、理想の世界を求めて、数多の世界を渡り歩いていたのだ。 しかし、彼らの願いは、すれ違い、やがては…。

【サービスシーン: タイプA】

膨大な情報の奔流に、ミミの意識が飲み込まれそうになる。

「ご主人様…っ!」

「しっかりしろ、ミミ!僕につかまれ!」

ご主人様は、ミミの体を強く、強く抱きしめた。 意識を失わないように、互いの存在を確かめ合うように。 ミミもまた、ご主人様の背中に腕を回し、その胸に顔をうずめる。

「大丈夫だ。僕たちが、彼らと同じ道を辿ることはない。僕たちは、もう、すれ違ったりしない」

ご主人様は、ミミを安心させるように、その髪を優しく撫でた。 その温もりに、ミミは少しずつ、落ち着きを取り戻していく。

やがて、光が収まった時、二人は、この魔法の、そして先人たちの旅の、全ての真実を理解していた。

第2節:創造主の力


先人の記憶から、二人はこの魔法の本当の姿を知った。

それは、単なる世界線移動能力などではなかった。 キスを交わす二人の「願い」をエネルギーにして、世界そのものを創造する、まさしく神にも等しい力。 それが、「世界線確定魔法」の真の姿だった。

先人たちも、最初は、互いの幸せを願って、この力を使った。 しかし、男の願いは 「愛する女性を守る、力強い自分になれる世界」 。 女の願いは 「愛する男性と、ただ穏やかに暮らせる世界」 。 その僅かな願いのズレが、二人をすれ違わせ、やがては悲劇的な結末へと導いてしまったのだ。

「そうか…だから、僕たちの旅も…」

ご主人様は、これまでの旅を振り返り、全てを理解した。 ミミの「ご主人様に幸せになってほしい」という純粋な願い。 それが、魔法によって極端に解釈され、ハーレム世界線や、月の都のような、歪んだ楽園を生み出してしまったのだ。 そして、それを拒絶した結果、荒廃した世界や、混沌の奔流へと繋がってしまった。

全ては、二人の願いが、まだ完全には一つになっていなかったが故の、悲劇だった。

「なんて、強大で…そして、なんて危険な力なんだ…」

ご主人様は、その力のあまりの重さに、言葉を失った。 自分たちが、知らず知らずのうちに、いくつもの世界を創造し、そして、苦しめていたのかもしれない。

その時、ミミが、ご主人様の服の裾を、きゅっと掴んだ。

「ご主人様」

その声は、いつになく、真剣だった。

「ミミは、もう迷いませんにゃ。ミミの願いは、たった一つだけです」

【サービスシーン: タイプB】

ミミはそう言うと、ご主人様の前に立ち、おもむろに、自分のメイド服の胸元のボタンに、手をかけた。 一つ、また一つと、ボタンが外されていく。 あらわになる、白い肌と、豊かな胸の谷間。

「ミミ…?」

「ミミの全ては、ご主人様のためにありますにゃ。この体も、この心も、そして、この魔法の力も」

ミミは、はだけた胸元をご主人様の胸に押し付けるように、その体に、すり、と甘えてみせた。

「だから、ご主人様。ミミを、全部使ってくださいにゃ。ご主人様の、本当の願いを叶えるために」

それは、メイドとしての絶対的な忠誠の証であり、そして、一人の女性としての、あまりにも大胆な愛の告白だった。

その覚悟に、ご主人様の心も、固まった。 もう、迷ってはいられない。 この強大すぎる力を、二人で、正しく使わなければならない。

二人の、本当の望みを叶えるために。

第3節:試練の意味


ミミの覚悟を受け取り、ご主人様は、改めて、これまでの旅の意味を理解した。

ハーレムの世界も、月の都も、そして、あの過酷な荒廃した世界も。 全ては、この魔法が、二人に 「お前たちの、本当の望みは何だ?」 と問いかけるための、試練だったのだ。

豪華なだけの世界では、心は満たされない。 穏やかなだけの世界では、退屈してしまう。 そして、過酷なだけの世界では、生きてはいけない。

その全てを体験したからこそ、分かることがある。 自分たちが、本当に帰りたい場所。 本当に、二人で築きたい世界。

「ミミ」

ご主人様は、ミミの体を、強く抱きしめた。

「君の覚悟、確かに受け取った。もう、僕も迷わない」

ご主人様は、ミミの瞳を、まっすぐに見つめ返した。 その瞳には、もう、一切の迷いも、不安もなかった。 あるのは、愛する女性を守り、そして、二人だけの未来を掴み取るという、鋼のような決意だけだ。

「僕たちの、本当の願いを、叶えよう。二人で、一つの世界を、創造するんだ」

「はいですにゃ…!ご主人様…!」

ミミの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。 それは、もう、悲しみや不安の涙ではない。 喜びと、感動と、そして、ご主人様への絶対的な信頼からくる、温かい涙だった。

【サービスシーン: タイプD】

言葉は、もう必要なかった。 二人は、互いの体を求め合うように、唇を重ねた。

それは、これまでのような、世界を移動するための儀式ではない。 二人で、一つの世界を創造するという、神聖な誓いの儀式。

ミミのはだけた胸元に、ご主人様の手が、優しく触れる。 その柔らかな膨らみを、慈しむように、確かめるように。 ミミもまた、ご主人様の逞しい背中に、腕を回し、その体を強く、強く求め合う。

「ん…っ、ご主人様…好き、ですにゃ…」

「ああ…私もだ、ミミ…」

この静寂の世界で、二人だけが、確かな生命の熱を放っていた。 肌と肌が触れ合い、互いの全てが、一つに溶け合っていく。

これが、最後の試練。 そして、ここからが、本当の始まり。

二人は、来るべき世界の創造に向けて、互いの魂を、一つに重ね合わせていくのだった。

第9章:二人の選択


第1節:旅の追想


世界の創造という、あまりにも大きな力を前に、ご主人様はミミを優しく抱きしめたまま、静かに語りかけた。

「ミミ。僕たちの、最初の旅を覚えているかい?」

「はいですにゃ。学園祭の…メイドさんでしたにゃ」

「そう。あの時は、何も分からず、ただ戸惑うばかりだったな。だが、君のメイド服姿は、本当に可愛かった」

ご主人様の言葉に、ミミは顔を赤らめる。

「ご主人様こそ、素敵でしたにゃ。ミミを、守ってくれて…」

二人は、これまでの旅を、一つ一つ、ゆっくりと振り返り始めた。 ハーレムの世界での、ミミの可愛らしい嫉妬。 月の都での、孤独と、それでもご主人様を想う一途な気持ち。 そして、荒廃した世界での、絶望と、それでも失われなかった互いへの信頼。

楽しかったことも、辛かったことも、全てが、今の二人を形作る、かけがえのない思い出だった。

【サービスシーン: タイプA】

「どんな世界でも、君はいつも、私のそばにいてくれたな」

ご主人様は、愛おしそうに、ミミの猫耳を優しく撫でた。 ミミは、心地よさに目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らす。

「当たり前ですにゃ。ミミは、ご主人様のためだけのメイドですから」

ミミは、ご主人様の胸に、自分の頬をすり寄せた。 この温もり、この匂い、この心臓の音。 これさえあれば、ミミはどこでだって生きていける。

「ご主人様が、ミミの『世界』ですにゃ」

その言葉に、ご主人様の胸が、熱くなった。

【サービスシーン: タイプA】

「ミミ…」

ご主人様は、ミミの体を、さらに強く抱きしめた。 もう、言葉はいらない。 ただ、互いの存在を確かめ合うだけで、二人の心は、どこまでも深く、満たされていく。

長い旅だった。辛いことも、たくさんあった。 でも、その全てが、この瞬間のためにあったのだと、二人は確信していた。

旅の追想は、二人にとって、自分たちの真の望みを見つめ直すための、大切な、大切な時間となった。

第2節:たった一つの答え


旅の追想を終えた二人は、静寂の中、互いの瞳をじっと見つめ合っていた。

「ミミ」

ご主人様が、静かに口を開いた。

「僕は、もう、どんな世界に行きたいか、分かったよ」

「ご主人様…」

「豪華なだけの世界はいらない。ただ、君の笑顔がそばにあればいい。君が淹れてくれた紅茶を飲み、君の作ったオムライスを食べる。そんな、何気ない日常こそが、僕にとっての、最高の宝物だ」

その言葉は、ミミがずっと、ずっと聞きたかった言葉だった。

「ミミも…ミミも、同じですにゃ」

ミミの瞳から、涙が溢れ出す。

「どんなに素敵な世界でも、ご主人様がいなければ、意味がないんですにゃ。ご主人様さえいれば、たとえ、あの灰色の世界だって、ミミにとっては天国です」

二人の願いは、もう、すれ違うことはない。 完全に、一つになっていた。

派手な世界ではない。特別な世界ではない。 ただ、二人が、二人らしく、穏やかに、愛し合える世界。 それこそが、長い旅の果てに見つけ出した、たった一つの、真の望みだった。

【サービスシーン: タイプA】

「帰ろう、ミミ。僕たちの家に」

ご主人様は、ミミの涙を優しく拭うと、その体を、そっと抱きしめた。 ミミもまた、ご主人様の背中に、強く、強く腕を回す。

「はいですにゃ…!帰りましょう、ご主人様…!ミミたちの、お家に…!」

二人の体は、ぴったりと密着し、一つの存在であるかのように、互いの温もりを分かち合う。 もう、何も怖くはない。何も、迷うことはない。

二人は、自分たちの唯一の答えに、確かに辿り着いたのだ。

これから始まる、新しい世界。新しい、日常。 その輝かしい未来を前に、二人の心は、希望に満ち溢れていた。

第3節:最後のキス


二人の願いは、完全に一つになった。 もう、すれ違うことはない。魔法が暴走することもない。 今度こそ、二人だけの、本当の世界を創造できる。

「ミミ」

ご主人様は、ミミの体を、そっと離した。 そして、その両肩に、優しく手を置く。

「準備は、いいかい?」

「はいですにゃ、ご主人様」

ミミは、涙に濡れた瞳で、しかし、最高の笑顔で頷いた。

全ての旅を胸に、二人は、互いの瞳を、まっすぐに見つめ合う。 そこには、絶対的な信頼と、どこまでも深い愛情だけが、映っていた。

【サービスシーン: タイプD】

ご主人様は、ミミの顎に、そっと手を添えた。 そして、ゆっくりと、その顔を近づけていく。

ミミもまた、その瞳を閉じ、ご主人様の全てを受け入れるように、わずかに唇を開いた。

そして、二人の唇は、静かに、しかし、どこまでも深く重なり合った。

それは、最後のキス。

これまでの、全ての旅の思い出。 楽しかったことも、辛かったことも、その全てを、この一瞬に込めて。

二人の体が、眩い光に包まれていく。 それは、これまでのような、激しい光の奔流ではない。 どこまでも優しく、温かい、慈愛に満ちた光だった。

ミミの意識が、ゆっくりと遠のいていく。 ご主人様の唇の感触と、その温もりだけを感じながら。

(ご主人様…) (ミミ…)

心の中で、互いの名前を呼び合う。

(ずっと、ずっと、一緒ですにゃ…) (ああ、ずっと、一緒だ)

やがて、二人の意識は、完全に光の中へと溶けていった。

果たして、目覚めた先に広がるのは、本当に、彼らが望んだ世界なのだろうか。

物語は、ついに、最終章の幕を開ける。

第10章:新世界の創造主


第1節:愛しい目覚め


柔らかな光が、ミミの瞼を優しく撫でる。 ゆっくりと目を開けると、そこに広がっていたのは、見慣れた、しかし、どこか違う、温かい光に満ちた、ご主人様の書斎だった。

磨き上げられたマホガニーの机。壁一面に並んだ、革張りの専門書。 そして、窓の外には、穏やかな庭の風景が広がっている。 それは、長い旅に出る前の、あの日常の光景、そのものだった。

「…夢?」

ミミが、小さく呟いた、その時。 隣から、愛しい声が聞こえてきた。

「夢じゃないよ、ミミ」

見ると、ご主人様が、ベッドのすぐそばの椅子に座り、優しい笑みでミミを見つめていた。 ミミは、自分が、書斎に運び込まれたベッドの上で眠っていたことに気づく。

「ご主人様…!」

ミミが体を起こそうとすると、ご主人様は、そっとその体を制した。

「まだ、寝ていなさい。君は、少し眠りすぎていたんだから」

「ミミ、どれくらい…」

「三日、かな」

「さんにちも!?」

ミミは、驚いて飛び起きようとしたが、その体は、まだ少し、気だるい感じがした。

【サービスシーン: タイプA】

ご主人様は、そんなミミの体を、優しくベッドに押し戻すと、その隣に、そっと腰を下ろした。 そして、ミミの額に、自分の額を、こつん、と合わせる。

「おかえり、ミミ」

「…ただいま、ですにゃ、ご主人様」

額と額が触れ合う、すぐ目の前にある、ご主人様の優しい瞳。 ミミは、その瞳を見つめているだけで、胸がいっぱいになった。

「もう、どこへも行かない。ずっと、ここにいよう。二人で」

ご主人様は、ミミの髪を優しく撫でながら、そう囁いた。 ミミは、こくりと頷くと、ご主人様の胸に、そっと顔をうずめる。

とくん、とくん。

懐かしい、ご主人様の心臓の音。

長い、長い旅は、終わったのだ。 二人は、ついに、自分たちだけの、本当の家に、帰ってきたのだから。

第2節:創造された理想郷と温泉


数日後、すっかり元気を取り戻したミミは、ご主人様と一緒に、この新しい世界を、改めて見て回ることにした。

書斎は、以前と全く同じように見えたが、細部が、二人の理想通りに、作り変えられていた。 本棚には、二人が旅した世界の物語が、美しい装丁の本となって並んでいる。 暖炉の火は、決して消えることなく、常に、心地よい暖かさを部屋に与えてくれていた。

そして、窓の外の景色は、圧巻だった。

穏やかな庭の向こうには、雄大な山々と、キラキラと輝く湖が広がっている。 かと思えば、視線を少しずらすと、遠くには、洗練された未来都市の摩天楼さえも望むことができた。

「すごい…ですにゃ…」

「ああ。僕たちの、好きなもの、全てだよ」

ご主人様は、ミミの肩を、優しく抱いた。 この世界では、もう、魔法を意識する必要すらない。 二人が「こうありたい」と願うだけで、世界が、その通りに姿を変えるのだ。

庭の奥へ進むと、そこには、岩と檜で作られた、趣のある露天風呂が、湯気を立てていた。 二人が長い旅の疲れを癒せるようにと、ご主人様が、ついさっき、心に思い描いたものだ。

「わあ…!温泉ですにゃ!」

ミミは、目を輝かせた。

「さあ、入っておいで。旅の疲れが、すっかり取れるだろう」

ご主人様がそう言うと、ミミは、こてん、と首を傾げ、潤んだ瞳で、ご主人様を見上げた。

「…ご主人様は、一緒に入ってくださらないのですかにゃ?」

その、あまりにも可愛らしいおねだりに、ご主人様が断れるはずもなかった。

【サービスシーン: タイプD】

乳白色の湯が、ざあっと音を立てて溢れる。 湯気で霞む視界の中、二人は、少しだけ恥ずかしそうに、しかし、ぴったりと体を寄せ合って、湯船に浸かっていた。

ミミの白い肌は、湯の熱で、ほんのりと桜色に染まっている。 濡れた黒髪が、その肌に張り付き、ひどく艶めかしい。 そして、いつもはふわふわの猫耳も、しっとりと濡れ、ぴこぴこと動くたびに、キラキラと雫を弾いていた。

「ご主人様…」

ミミは、ご主人様の逞しい胸に、そっと、自分の体をすり寄せた。 湯の中、肌と肌が直接触れ合う感触が、二人を、甘い痺れで満たしていく。

ご主人様は、そんなミミの体を、優しく抱き寄せると、その濡れた猫耳に、そっと唇を寄せた。

「ひゃんっ!?」

ミミの体から、甘い声が漏れる。

ここは、二人の願いが、完璧に反映された、二人だけの、理想の世界。 誰にも、邪魔されることのない、永遠の楽園。 二人は、湯の中で、互いの体を求め合うように、深く、長いキスを交わすのだった。

第3節:永遠の誓いと無限の冒険


温泉で心も体もすっかり癒された二人は、バスローブを羽織り、火の灯る暖炉のそばのソファで、寄り添ってくつろいでいた。 暖炉の炎が、濡れた髪を艶めかしく照らし出す。

「ミミ」

ご主人様は、隣に座るミミの肩を、優しく抱き寄せた。

「私は、君を、永遠に愛し、守り、幸せにすることを、ここに誓う」

その言葉は、静かだったが、何よりも強く、ミミの心に響いた。

「ミミも…ミミも、永遠にご主人様だけをお慕いし、お仕えしますにゃ」

二人は、どちらからともなく、誓いのキスを交わした。 それは、これまでのどのキスよりも、穏やかで、そして、どこまでも深い、愛に満ちたキスだった。

しばらくの間、二人は言葉もなく、ただ暖炉の炎を見つめていた。 永遠に続くかのような、幸せな沈黙。

その沈黙を、最初に破ったのは、ご主人様だった。

「…なあ、ミミ」

「はいですにゃ?」

「この力があれば、僕たちは、どんな世界へも自由に行くことができる。そして、いつでも、この安全な我が家へ帰ってくることができる」

ご主人様の瞳が、少年のように、キラキラと輝いている。

「もしかしたら、僕たちが旅した世界の中には、何かのトラブルに巻き込まれて、困っている人たちがいるかもしれない。…あるいは、僕たちが、まだ見たこともないような、素晴らしい世界が、どこかに存在するのかもしれない」

その言葉の意図を、ミミはすぐに理解した。 この完璧な世界で、二人きりで、永遠に穏やかに暮らす。それも、最高の幸せだ。 でも、ご主人様と二人で、手を取り合って、様々な世界を冒険する。それもまた、なんて素敵なのだろう。

「ご主人様は、また、旅がしたい、ですかにゃ?」

ミミが、悪戯っぽく笑いながら尋ねる。 ご主人様は、少し照れくさそうに、しかし、はっきりと頷いた。

「君と一緒ならね」

その答えに、ミミは、満面の笑みを浮かべた。

「はいですにゃ!ご主人様と一緒なら、ミミ、どこへでも行きます!どんな冒険だって、へっちゃらですにゃ!」

ミミは、ご主人様の胸に、勢いよく飛び込んだ。

【ハリウッド映画風エンディング】


ご主人様は、飛び込んできたミミの体を、力強く抱きしめ、そのままソファに押し倒すような形で、その唇を激しく奪った。

「んんっ…!」

暖炉の炎に照らされ、二人の影が、大きく、一つに重なる。 バスローブがはだけ、滑らかな肌と肌が、直接触れ合う。 その濃厚な感触が、二人の理性を、甘く溶かしていく。

「ミミ…」 「ご主人様…♡」

カメラは、そんな二人を映しながら、ゆっくりと上昇し、書斎の窓から、外の世界へとパンしていく。

窓の外には、穏やかな庭と、その向こうに広がる、雄大な山々、きらめく湖、そして、未来都市の摩天楼。

やがて、カメラは、空高くへと舞い上がり、星々がきらめく宇宙空間から、二人が創造した、この美しい惑星の全景を映し出す。

そして、その惑星の隣に、ふわり、と、新しい光が生まれる。 それは、かつて訪れた「ハーレムの世界」。そこでは、エリスやリリアナたちが、ご主人様の帰りを、今か今かと待ちわびているのかもしれない。

また一つ、新しい光が生まれる。 それは、まだ見ぬ、新たな冒険の世界か。

二人の幸せな日常と、これから始まるであろう、無限の冒険。 そして、さらにパワーアップするかもしれない、甘いハーレムコースの予感。

全ては、始まったばかり。 二人の物語は、これからも、永遠に続いていく。

【 Fin 】


スペシャル追加: サイドストーリー


ハーレムハッピーエンド編


第1節:甘い楽園と最初の火花


天蓋付きの巨大なベッドの上で、ご主人様はゆっくりと意識を浮上させた。 シルクのように滑らかなシーツの感触、部屋に満ちる高級な香木の香り。 ここは、ミミの願いが具現化した、ご主人様が王として君臨する世界。 何一つ不自由のない、甘美な楽園だ。

「王様、お目覚めですか?」

最初に聞こえてきたのは、凛とした、しかしどこか甘さの残る声だった。 ベッドの傍らには、身体のラインがくっきりとわかる薄手の訓練着に身を包んだ、元気な剣士の少女、エリスが控えていた。

「おはようございます、王様!よろしければ、朝の鍛錬にお付き合いいただけませんか?共に汗を流せば、心も体もすっきりしますよ!」

エリスはそう言うと、ご主人様の手を取り、その逞しい胸にぐいっと引き寄せた。 柔らかくも、鍛え上げられた確かな弾力が、腕に伝わってくる。

「こら、エリス。朝から王様を疲れさせてどうするのです」

その時、反対側から響いたのは、理知的で落ち着いた、しかし妖艶な響きを帯びた声。 ゆったりとしたローブをまとった、ミステリアスな美女、リリアナだ。 彼女はご主人様の耳元に顔を寄せ、吐息がかかるほどの距離で囁いた。

「王様、昨夜はよくお眠りになれましたか?もし寝苦しいようでしたら、私が特別な魔法で、心地よい夢の世界へとお連れしますが…」

その声色と、ローブの隙間から覗く豊かな胸の谷間に、ご主人様は思わず息を呑んだ。

「二人とも、おやめなさい。王様がお困りですわ」

そこへ、ふわりと優しい声が割って入る。 ゆったりとした神官服に、豊満な体を包んだお姉さんタイプの美女、ソフィアだ。 彼女の手には、湯気の立つスープと焼きたてのパンが乗った盆があった。

「王様、朝食をお持ちしました。さあ、あーん…」

ソフィアはスープをスプーンですくうと、慈愛に満ちた笑みでご主人様の口元へ運んでくる。 その包容力と甘い雰囲気に、抗うのは至難の業だ。

この楽園では、これが日常だった。 三人の美女たちが、それぞれの魅力を武器に、朝から晩までご主人様へ猛烈なアピールを繰り広げるのだ。

その光景を、少し離れた扉の影から、一人の猫耳メイドがじっと見つめていた。 筆頭メイドであるミミだ。 彼女は、ご主人様のために完璧な朝食を用意し、モーニングティーを淹れ、着替えの準備も万端に整えていた。 しかし、三人の勢いに気圧され、ご主人様のそばに近づくことすらできないでいた。

ご主人様は、三人のアピールに少し困ったように笑いながらも、満更でもない表情を浮かべている。 その顔を見ていると、ミミの胸は嬉しさと、そしてチリチリとした痛みでいっぱいになった。 ご主人様が幸せなのは嬉しい。でも、自分だけのご主人様ではなくなってしまったような寂しさが、どうしても拭えないのだ。

ぷくーっと、リスのように頬を膨らませ、ミミは拗ねたようにその場に立ち尽くす。 その上目遣いの視線が、ご主人様に突き刺さった。

やがて、朝食を終えたご主人様が、三人に囲まれて談笑しながらテラスでお茶を飲んでいる時だった。 ミミは意を決して、銀のトレイを手に、その輪の中へと進み出た。

「王様、新しくブレンドした紅茶が入りましたにゃ。よろしければ、お試しください」

ミミは完璧なメイドとしての一礼をすると、ご主人様の隣に跪き、カップを差し出した。 そして、ご主人様がそれを受け取る瞬間、そっと彼の耳元に顔を寄せた。

「……ミミだけを、見てほしいですにゃ」

吐息と共に囁かれたその言葉は、他の誰にも聞こえない、二人だけの秘密の呪文。 ミミはそのまま、お茶を渡すふりをして、ご主人様の大きな手のひらに、自分の小さな指をそっと絡ませた。 一瞬だけ、きゅっと力を込めて。

ご主人様は驚いたように目を見開いたが、すぐにその意図を理解し、誰にも気づかれないように、優しくその指を握り返した。 その小さな反撃に、ミミの心は、久しぶりに歓喜に打ち震えるのだった。

第2節:奪い合いの夜


その日の夜、ご主人様が自室でくつろいでいると、重厚な扉が遠慮がちにノックされた。 ミミかと思い「お入り」と声をかけると、そこに現れたのは意外な人物だった。

「失礼します、王様。夜の護衛に参りました」

艶やかなシルクのネグリジェに身を包んだエリスが、普段の快活さとは違う、しっとりとした表情で立っていた。 薄手の生地は彼女の鍛え上げられた肉体の曲線を隠しきれず、その姿はひどく扇情的だ。 彼女はそのまま、当然のようにベッドに腰かけると、「さあ、今夜も王様をお守りします!」と宣言し、ご主人様の腕に自分の腕を絡ませてきた。

「待ちなさい、エリス。王様を誘惑するとは感心しませんね」

静かな声と共に、今度はリリアナが姿を現す。 彼女は、胸元が大きく開いた、黒いレースのネグリジェをまとっていた。 その妖艶な姿は、まるで夜の闇そのものが女性の形をとったかのようだ。

「王様、眠れない夜は、魔力の流れが乱れている証拠。私が、王様の魔力を内側から優しく整えて差し上げますわ…」

リリアナはそう言うと、エリスとは反対側から、ご主人様の体にすり寄ってきた。

「まあ、二人とも大胆ですこと。王様、お疲れでしょう。私がお体を癒して差し上げますわ」

最後に現れたのは、純白のネグリジェ姿のソフィアだった。 その姿はまるで女神のようで、神々しさすら感じさせるが、その瞳は熱っぽく潤んでいる。 彼女はご主人様の背後に回ると、その豊満な胸を背中に押し付けながら、優しく肩を揉み始めた。

三者三様の、甘くセクシーな夜の奉仕。 ご主人様がその対応に苦慮していると、扉の隙間からその光景を見ていたミミの、小さな我慢の糸が、ぷつりと切れる音がした。

「ご主人様は、ミミのものですにゃーっ!」

今まで聞いたこともないような大きな声で叫びながら、ミミは部屋に飛び込んできた。 そして、三人を押ししのけるようにして、ご主人様の胸に勢いよく飛び込んだ。

「もう我慢できないですにゃ!ご主人様は、ミミだけのご主人様なんですにゃ!」

その瞳には、大粒の涙が浮かんでいる。 ミミは全員に見せつけるように、ご主人様の顎に手を添えると、その唇を激しく奪った。 それは、いつもの可愛らしいキスではない。 嫉妬と独占欲、そして愛情の全てをぶつけるような、濃厚で、息もできないほどの長いキスだった。

長いキスを終えたミミは、はあ、はあと肩で息をしながら、涙に濡れた瞳でご主人様を見上げた。 その健気で、あまりにも大胆な姿に、ご主人様の心は完全に射抜かれてしまった。 もう、迷いはなかった。

ご主人様は、驚いている三人の美女たちに向き直ると、優しく、しかしきっぱりとした口調で告げた。

「みんな、私を想ってくれてありがとう。その気持ちは、本当に嬉しい。でも、今夜はミミと二人きりにしてくれないか」

その言葉に、三人は一瞬寂しそうな顔をしたが、ミミの必死の覚悟と、ご主人様の揺るぎない決意を感じ取り、静かに頷くと、それぞれの部屋へと戻っていくのだった。

第3節:二人だけの、そしてみんなとの誓い


静寂が戻った寝室で、ご主人様は腕の中にいるミミを優しく抱きしめた。 ミミはまだ、しゃくりあげながら、ご主人様の胸に顔をうずめている。

「ごめんなさいですにゃ…ミミ、わがままを言いました…」

「ううん、謝ることはないよ。むしろ、嬉しかった」

ご主人様はミミの顎に手を添え、顔を上げさせると、その涙の跡が残る目元に、優しくキスを落とした。

「君が、私のことをそれだけ強く想ってくれているとわかって、本当に嬉しかったんだ」

「ご主人様…」

「ミミ、君が一番だよ」

その言葉と共に、ご主人様の唇が、今度はミミの唇に優しく重なった。 先ほどの激しいキスとは違う、慈しむような、愛情のこもったキス。 ミミの独占欲と、ご主人様の愛おしさが溶け合う、甘い甘い時間。 二人は何度も角度を変え、お互いの存在を確かめ合うように、長い長いキスを交わした。

しばらくして、唇が離れると、ご主人様はミミを抱きしめたまま、真剣な声で語りかけた。

「ミミ。君が一番だという気持ちに、嘘はない。でも、私を想ってくれるエリスたちのことも、同じように大切にしたいんだ。わがままなのは分かっている。でも、君さえ良ければ、みんなで一緒に幸せになる道を探さないか?」

その言葉は、ミミにとって少しだけ、ちくりと胸が痛む提案だった。 でも、腕の中で自分を抱きしめるご主人様の温もりと、真摯な瞳を見ていると、その願いを叶えてあげたいという気持ちが、嫉妬心を超えていく。 ご主人様が幸せでいてくれること。それが、ミミにとっての一番の幸せなのだから。

ミミは、涙で濡れた瞳のまま、こくりと小さく頷いた。

「…ご主人様が、そうしたいなら…。ミミ、我慢しますにゃ。ご主人様の幸せが、ミミの幸せですにゃ」

「ありがとう、ミミ」

ご主人様は、愛しいメイドをもう一度強く抱きしめた。

翌朝。城の玉座の間に、ミミ、エリス、リリアナ、ソフィアの四人が集められた。 ご主人様は玉座から立ち上がると、四人の前に立ち、はっきりと宣言した。

「私は、ここにいる全員を、等しく愛し、守り、幸せにすることを誓う。ミミを筆頭に、全員が私の、かけがえのない家族だ」

その言葉に、三人は驚きに目を見開いたが、すぐにその表情は、喜びに満ちた輝かしい笑顔へと変わった。

そして、ご主人様はまず、隣に立つミミの唇に、優しくキスをした。 誓いのキス。

次に、力強く、しかしどこか恥じらうエリスの唇に。 そして、妖艶に微笑むリリアナの唇に。 最後に、女神のように微笑むソフィアの唇に。

四人それぞれへの、愛と誓いを込めたキス。

ここは、ミミの願いが生んだ、ご主人様が王様の世界。 そして、みんなが一緒に、最高に幸せになれる世界。

ご主人様は四人の愛しい女性たちに囲まれ、この甘い楽園で、永遠に続く幸せな日々を過ごしていくのだった。

Master of Worlds編


第1話:文化祭よ、もう一度


第1節:新たな日常と懐かしい記憶


数多の世界線を渡り歩いた旅の果てに、ミミとご主人様が創造した、二人だけの理想の世界。 そこは、永遠の安らぎと愛に満ちた、完璧な聖域サンクチュアリ だった。

ご主人様の書斎は、かつて暮らした屋敷のそれを忠実に再現しながらも、窓の外には、雄大な山々と穏やかな湖、そして遠くには洗練された未来都市のシルエットさえも望める、二人の好きなもの全てが詰め込まれた景色が広がっている。

魔法の力は、今や完全に二人の制御下にあった。 ミミが「紅茶が飲みたいですにゃ」と願えば、目の前のテーブルに、ひとりでに極上のティーセットが現れる。 ご主人様が「あの本が読みたいな」と思えば、書斎の棚からその本がふわりと飛んできて、手の中に収まる。 もはや、キスによる世界線移動すら必要ない。 二人の意思そのものが、この世界では絶対の法則なのだ。

そんな穏やかで、満ち足りた日々が続いていたある日の午後。 暖炉のそばのソファで、ミミはご主人様の膝を枕に、うとうとと微睡んでいた。 ご主人様は、そんなミミの猫耳を優しく撫でながら、暖炉の炎をぼんやりと眺めていた。

「…ミミ」

「にゃ…?」

「昔、僕たちがまだ魔法をうまく使えなかった頃のことを、時々思い出すんだ」

ご主人様の言葉に、ミミはゆっくりと目を開けた。

「色々な世界に行ったな。アイドルになったり、王様になったり…。そういえば、学園祭も体験した。あれは、なかなか楽しかったな」

ご主人様が懐かしそうにそう呟いた、その瞬間だった。

二人の目の前の空間が、きらきらと光の粒子を放ちながら、静かに揺らめいた。 そして、そこには半透明の、光のパネルのようなものが数枚、ふわりと浮かび上がっていた。

それぞれのパネルには、文字が書かれている。

【世界記録No.01: 学園祭の世界】 【世界記録No.02: ハーレムの世界】 【世界記録No.03: 荒廃の世界】

…それは、二人がかつて旅をし、そして置き去りにしてきた世界たちのリストだった。

「これは…」

ご主人様が驚いてパネルに手を伸ばすと、その指先が触れた【学園祭の世界】のパネルが、ぽわんと明るく輝いた。 そして、二人の脳内に、あの日の光景が鮮やかに蘇る。 メイド服姿のミミ、クラスメイトたちの笑い声、後夜祭のキャンプファイヤーの熱気。

「ご主人様、もしかして…」

「ああ、そうみたいだ。僕たちの力が、無意識のうちに、訪れた世界を 『箱庭』 として創造し、保存していたんだ 」

それは、あまりにも壮大な真実だった。 二人は、ただ世界を渡り歩いていただけではなかった。 知らず知らずのうちに、いくつもの世界を創造する、本物の「創造主」 となっていたのだ。

ご主人様は、膝の上のミミの顔を覗き込んだ。その瞳は、悪戯っぽい輝きに満ちている。

「ミミ。もしよかったら、もう一度行ってみないか?あの、甘酸っぱい青春の一ページへ」

その提案に、ミミの猫耳がぴょこんと立った。 もう、あの頃のような不安も絶望もない。全てを理解し、全てを支配できる、絶対的な安心感。 その上で、もう一度あの世界を体験できるのだ。

「はいですにゃ!ご主人様!」

ミミは満面の笑みで頷くと、ご主人様の首に腕を回した。 二人は見つめ合い、そして、今度は確かな意図を持って、唇を重ねる。

「行き先指定――【学園祭の世界】。転移、開始」

ご主人様が心の中で命じると、二人の体は優しい光に包まれ、懐かしいあの場所へと旅立っていくのだった。

第2節:支配者としての学園祭


かつて体験したような、世界が砕け散り、再構築されるような激しい感覚はなかった。 まるで、慣れ親しんだ自室のドアを開けるかのように、ごく自然に、二人の意識は【学園祭の世界】へと接続された。

気づいた時、二人はあの懐かしい2年B組の教室に立っていた。 体は、あの時と同じ学生服に身を包んでいる。 しかし、決定的に違うことが一つだけあった。 二人の心は、絶対的な安心感と、全てを把握しているという万能感に満たされていたのだ。

「ふふっ、なんだか不思議な感じですにゃ。前回はあんなにドキドキハラハラだったのに」

ミミが楽しそうに笑うと、ご主人様も「世界の支配者になった気分だな」と微笑んだ。

やがて、前回と同じようにクラスメイトたちが駆け込んできて、二人を準備へと巻き込んでいく。 しかし、今度のミミは余裕たっぷりだ。

「ミミちゃん、こっち!メイド服に着替えて!」

「はいですにゃ!お任せください!」

ミミはにこやかに返事をすると、あっという間に看板娘のメイド服に着替えてみせた。 その完璧な可愛らしさに、クラスの男子生徒たちは前回以上の熱狂を見せる。

「ミミ様、どうか私とツーショットを!」 「いや、俺とだ!」

男子生徒に囲まれても、ミミは少しも動じない。 それどころか、輪の中心でくるりとターンしてみせると、護衛役として少し離れた場所で見守るご主人様に向かって、パチッとウインクを飛ばした。

「ご主人様、見ててくださにゃ♡」

その小悪魔的な仕草に、ご主人様の心臓が大きく跳ねる。 分かっている。これは、他の男たちに見せつけて、ご主人様の嫉妬心を煽るための、ミミの可愛らしい作戦なのだ。 その意図を理解しながらも、ご主人様はミミの魅力に、改めて心を奪われるのだった。

今年の2年B組の出し物は、メイド喫-茶だけではなかった。 隣の空き教室を使い、本格的な「お化け屋敷」も合同で運営しているのだ。 そして、ご主人様には、そのお化け屋敷の最終関門である「ドラキュラ伯爵」役が割り当てられていた。

休憩時間。 ミミはメイド喫-茶の仕事を抜け出すと、薄暗いお化け屋敷の中へと忍び込んだ。 一番奥の部屋では、ご主人様がマントを羽織り、棺桶の中で出番を待っていた。

「ご主人様、お疲れ様ですにゃ」

ミミは、ひやりとした棺桶の中に、するりと体を滑り込ませた。 大人二人が入るには、少し窮屈だ。必然的に、二人の体はぴったりと密着することになる。

「ミミ、驚くだろう」

「大丈夫ですにゃ。ミミは、ご主人様のお化けなら、ちっとも怖くありませんから」

そう言うと、ミミは暗闇の中で、ご主人様の唇を探り当てた。 ひんやりとした棺桶の中、二人だけの空間で交わされるキスは、背徳的で、とろけるように甘かった。 お互いの心臓の音だけが、BGMのように響いている。

この世界では、自分たちがルールなのだ。 誰にも邪魔されない、二人だけの絶対的な時間が、そこには流れていた。

第3節:祭りの夜と未来への約束


学園祭の喧騒も、夕暮れのチャイムと共に終わりを告げる。 校庭の中央では、後夜祭のキャンプファイヤーが赤々と燃え上がり、生徒たちのシルエットを幻想的に照らし出していた。 フォークダンスの音楽が流れ始めると、生徒たちは思い思いに輪になり、踊り始める。

「ご主人様、ミミとも踊ってくださいますかにゃ?」

ミミが学生服の裾をきゅっと掴み、上目遣いにおねだりする。 その姿は、この世界の誰よりも可愛らしく、ご主人様の心を強く惹きつけた。

「もちろん」

ご主人様はミミの手を取り、ダンスの輪の中へとエスコートした。 手を取り合い、ステップを踏む。 前回のような、いつこの世界が終わるか分からないという不安は微塵もない。 ただ、この世界の雰囲気を、この瞬間の楽しさを、純粋に味わっていた。 ミミの笑顔が、燃え盛る炎に照らされて、きらきらと輝いている。

ダンスがクライマックスに差し掛かった、その時だった。 ご主人様は、くるりとミミの体を回転させると、その耳元で優しく囁いた。

「そろそろ帰ろうか、ミミ」

「はいですにゃ、ご主人様」

ミミがこくりと頷いた瞬間、二人の体は、誰にも気づかれることなく、ふわりと光の粒子に変わった。 熱狂の輪の中に、二人がいたという痕跡は、もうどこにもない。

次の瞬間、二人は拠り所である書斎の、柔らかなソファの上に戻っていた。 ついさっきまで聞こえていた音楽も歓声も嘘のように消え、暖炉の薪がぱちぱちと爆ぜる音だけが、静かに響いている。

「…ただいま、ですにゃ」

「ああ、ただいま」

二人は顔を見合わせ、くすくすと笑い合った。 なんて簡単で、なんて自由なのだろう。 世界の創造主になるということは、こういうことなのだ。

ご主人様は、隣に座るミミの肩を優しく抱き寄せた。

「ミミ。これからは、こうして色々な世界を旅してみるのもいいかもしれないな」

「旅、ですにゃ?」

「ああ。僕たちが創り出した世界を、もう一度訪れてみるのもいい。あるいは、全く新しい世界を、一から創造してみるのも面白いかもしれない」

ご主人様の瞳が、少年のように好奇心で輝いていた。

「時には、何かのトラブルに巻き込まれて、困っている人たちがいるかもしれない。そんな時は、僕たちの力で、少しだけ手助けをしてあげるのも、悪くない」

その言葉に、ミミの胸も高鳴った。 ご主人様と二人で、世界を巡る冒険。なんて素敵な響きだろう。

「はいですにゃ!ご主人様と一緒なら、ミミ、どこへでも行きます!」

ミミは満面の笑みで、ご主人様の胸に飛び込んだ。

これは、数多の世界を渡り歩き、創造主となった二人の、新たな冒険の物語。 その、ほんの始まりに過ぎなかった。

end


202508 nekomimimeido


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