第9話 稽古をしながら…
「そんじゃ、午後からは杏が稽古つけてやれよ。そんでもってお前らをランク付けるってのはどうだ?」
二代目には逆らえないだろう?
「私は何すればいいのさー!」←逆らう人いた。
「涼はそうだな…庭の掃除」
「もう杏がやってほぼきれいじゃん!」
「『ほぼ』なんだよ。涼は完全にきれいにするの。これでどうだ?」
――ランクを付ければ組員の中でも士気が上がるだろうし、杏はチェックしやすいだろう
「杏、組員のランク付け頼んだぞ」
「「姐さんなら頼れるっス」」
「何よ?私だとダメなの?」と涼は膨れた。毎回組員を傷物にしてるんだから仕方ないだろう。
午後の稽古@道場
「じゃ、適当にかかってきてー。武器使わないでね?」と杏。
んー、涼に傷物にされただけあって前よりはマシになってるじゃん。と思いながらも攻撃は全てかわす。
「一人ずつじゃなくてもいいんだよー」この杏ののん気な言葉遣いが逆に組員の士気を高める。
「「それじゃ」」とぶつかる→ケンカする。杏に怒られる。
「夕飯…減らすよ?」脅し方が怖い。なんだかこれもDVなんだろうか?
「夕飯、何にしようかなぁ?」と考えながら、攻撃をかわし続ける。
「朝から鍋に昼はカツだから、夜はアッサリがいいかなぁ?」
「姐さん!自分は夜もガッツリ食べたいっス」
「「自分も」」と、攻撃しながらの会話。杏はかわす。
「うーん、何がいいかなぁ?運動しながら考えよう。かかってきてね」
「姐さんがかわしまくるから…」
「私が手を出したら骨とか覚悟が必要だよ?」
「それは困ります。かわし続けで頼んます」
光輝のつけたランクはS・A・B・Cの4つ。
「私の体に当てたらSねー。かすったらA、ちょっとどきっとしたらB、それ以外はC」
「「姐さんの体にかするのも無理っス」」
「そこが頑張りどころ!光輝さんに見せつけてやんないと!私は言わばいきなり入ってきた新米」
「「姐さんは実力で入ったんス」」
力で入る所じゃないんだけどなー。なかば誘拐のような感じだったし。
「おっとー。あ、君はBだね。ランクの表に名前書いていって」
こんな調子で杏は組員の格付けをしていった。
「杏…。Aランク以上がいないぞ」
「あー、私の基準が『私の体に当てたらS、かすったらA、ちょっとどきっとしたらB、それ以外はC』だったからかな?でもBランクのやつらの中にも北条って名前はない」
「その基準厳しくねー?俺でもお前の体に攻撃当てるの難しいぞ?で、北条はいない…か」
「どうしよっかなぁ?今日の夕飯、でかいホットプレートでみんなで焼きそば。と思ったんだけど、暗殺狙いがいるんじゃ…。みんなで毒殺されかねないし。どうしたらいいの?夕飯!」
「そうだよな。夕飯困ったなぁ。ガッツリ食べたいってリクエストもあるんだろ?昼は揚げ物だったしな。ラーメンとかは?器が別々だからいいんじゃね?」
「麺あるかな?足りるかな?あ、そのうち蕎麦打ちも習得する予定なんだ♪蕎麦アレルギーの人とかいるかな?結構心配」
――今は俺を心配してくれ
「とりあえず、今日の夕飯はラーメンにしますか!定食みたいにしてもいいし。しまった!麺を茹でたら、味噌汁を作る鍋がない‼光輝さん!大変だ‼」
「なんだ、俺を狙ってるやつでもわかったのか?」
「夕飯、ラーメン茹でたら、同時に味噌汁が作れない…」
――すごい心配したのに…
「俺は杏が作った漬け物も好きだぞ」
「それは…涼が破壊しました」
――声に殺気を感じる
「今度買い出しに行くときに寸胴鍋をもう一個買わないとな」
杏がキラキラしてきた。
――わかりやすい単純さだなぁ
「今日はラーメンライスでよくね?野菜を多くすれば麺が足りない分も栄養も補えるしよ?」
「そうだな、そうしますか」俺の案が採用された。
「炭水化物×炭水化物が不安だったけど、野菜室の野菜を総動員すればいい感じにできそうだし、いんじゃね?」
「明日、買い出しに付き合ってくれるかなぁ?」
「寸胴鍋も買わなきゃだろ?」
「そうだー!」
――杏が元気になってきた。
「今はラーメンライスに集中しよう。一人で大丈夫そうだから、光輝さんは自分の仕事をしてくださいよ」
「わかった」
――俺の仕事…地上げ屋とかなんだけどなぁ。あとは株式取引。これでも賢いのだ
「あ?林組の件の首謀者がわれたって?そりゃ、林組だろ?そうじゃなくてうちに入ってたスパイ?で、誰だ?」
「杏と涼って双子です。二人はやたらと強い。杏の姐さんは料理担当だから薬を入れるのも容易でしょうしね」
「わかった」とだけ応えて俺はそいつの名前を聞いた。
「お前の名前は?」
「自分、北条と言います」
――北条…
「杏がつけたランク付けに名前がなかったはずだが?」
「故意とは考えられませんか?」
「とにかく、お前は自分も容疑者だってわかってるよな?以上より、お前の身柄は軟禁状態にする。ボディーチェックもした後でな」
――とりあえず一匹かかった。一匹だけだといいんだが… それよりも杏を疑いたくはないな!そこが重要だ
「杏、ちょっといいか?」
「ゴメン。ラーメンが伸びちゃうから今はムリー」
――家事よくやってくれてるよな。組員達からも慕われてるし、杏と涼はそんなじゃない‼
「できたー‼ラーメンライス‼伸びちゃうから皆さん、どうぞ食べてください」
「このスープは姐さんが作ったんですか?」
「変な味するかなぁ?」
「「絶品っス。」」
「これなら店出せるってレベルっス。俺だったら常連になる!」
「「俺も」」
――うーむ、麺が少なめで野菜たっぷりなんだけど美味しいしなぁ。麺が増えると猶のこと味がうまくなるんだろうなぁ。
「皆さんにいきわたりましたか?」
「コレは軟禁している北条さんに」と俺に一杯ラーメンライスをよこした。
「杏の頼みならなぁ」とこそッと北条のところに持って行った。