第5話 女子力は重要なのか?
「ただいまー」
「「おかえりなさい」」
「なんかみんな傷物になってない?大丈夫?」
「お嬢が…強いっス」
「涼!あんたは、手加減ってのも鍛錬なのよ?」
「手合わせでどんなもんなのか試したの!で、今日の昼ごはん何?」
「お好み焼き。おニューのホットプレートでガンガン焼きまくり。っと準備しなきゃ」
「光輝!杏はすっかり主婦だね」
「俺は助かってる。家はきれいになったし、飯はうまい」
「確かに杏の飯はうまいよ。しかも、強いから私の鍛錬になる。光輝は杏に劣るのか?」
「そうだなぁ。杏の方が強いなぁ」
光輝は遠い目で言った。
「ふーん、じゃ、今ここは杏が一番強くて、その後が光輝、私って続くわけだ」
「その後がなかなか続かないだろ?差が大きすぎる。まぁ、銃に頼ってるってのもあるんだろうけど、体術もできないとなぁ。そこで!涼があいつら、今傷物になってるやつらを鍛えてほしいんだ」
「おっけー。家でダラダラ過ごすより楽しそうだし。杏の料理はおいしいもんね」
――ああ、笑顔が杏と同じでいい感じだ‼
「昼ご飯準備できたよー!ってホットプレートの準備くらいしてよ、涼!」
「え?私指名?ひどくない?」
「ひどくない!さぁ準備を急げ。温めたら油を塗って!そのくらいはできるよね?」
「できると思う」
「子供のお手伝いレベルだよ、さあ急げ~。みんなが待っている!」
「「お嬢ヤケドするといけないんで、俺やりますよ」」という声がそこかしこから上がり、涼もちょっとその気になりかける。
「甘やかしてはいけません!これはこの子の女子力を上げるのに必要なんです!」
「杏、出来た。…と思う」
…心配だ。
「とりあえず焼こう!豚のばら肉からも油出るし、大丈夫だ!各々出来るよね?」
「「ウッス」」
小声で杏は涼に言う。
「ねぇ…女子力ここの皆さんより低くない?」
「お嬢の分は俺が焼きます!」
「「俺が」」
「私はそんなに食べれないよ~」
「自分の分は自分で焼きなよ~」杏が台所から言う。
「まだまだ作らないと足りなくなるな。男所帯だし。キャベツの千切り祭りだね。余ったら、夕飯のみそ汁にでも使おう」
と、すっかり主婦的になっている。
「涼ー、長いもすりおろして。そんくらいできるよね?」
杏は挑戦的に涼に言った。
「できるだろう…と思う。」
「ぬめぬめするからねー。すりおろしすぎて、あんたの手までおろし金にさらさないでよ?」
「なぁ、杏。これ、皮のとこ持てばよくない?」
「そうだけど?」
「くそっ。私の中では大発見だったのに…」
「私に料理で勝とうなどとは甘いよ」
「杏はいつ食べるんだ?」
「うーん、とりあえず落ち着いたころかな?光輝さんもまだじゃない?」
「そういえば。杏を待ってくれてんのかもよ?」
「あのでかいホットプレートで一人焼くのは虚しいからな…。最悪フライパンでもいいんだけど」
ド天然もここまでくるとなぁ…と涼は思う。
「光輝さん、焼いてるよ。さっき買ったホットプレートで。みんな喜んでくれて何より♪」
――杏が楽しそうにしてるからよしとするか
「光輝さんは食べないの?」
「ん?いや、お前が食べる時に一緒にと思ってな」
でも無情に光輝のお腹の音が鳴った。
「光輝さん…無理せずに食べて。そのお腹の音が面白いっ…」
杏も涼も笑ってしまった。杏は腹を抱えている。
――笑われた…
「食べてよ!」
――ちょっと怒ってる?笑いながら…
「俺、焼いたことない…」
仕方ない。と杏がフライパンで焼いたお好み焼きを光輝に与えた。
「二代目、このお好み焼きはソースが不要なんです!」
「あぁ、みんながソース取り合ったり、ソースがなくなったりしないように生地に味付けたんだけど。どうかな?」
「「最高っス!」」
杏の頬が緩んだ。味見も出来なかったし、行き当たりばったりでどうだか不安だったのだろう。
「ソースって手作りできるんだな…」
「光輝さん!何を言うの?あらゆるソースが手作りのよ。そもそも3星レストランとかのシェフだったらソースは手作りでしょ?まぁ、食べてよ」
「これは…予想を上回る食べっぷりだなー。私も作りながら食べないと無くなりそうね」
杏の不安的中。完食。キャベツは千切り祭りだったのになくなった。
「もうないけど、まだお腹減ってる人いる?」
――地味に俺…二代目なのに…
「うーん、夕飯何にしようかなぁ?その前に洗い物しなきゃなぁ。たくさんあるよな。ホットプレートの手入れもしなきゃいけないしな。しながら考えよ」
「杏はポジティブだね」
「涼がネガティブなんじゃないの?いつまでも私に勝てないの引きずってるでしょ?」
涼、凹む。
「洗い物終わったら掃除しまくりね」
杏が生き生きとしている。この屋敷をひとりで掃除するのに…。
「あ、夕飯は鶏の唐揚げだったな。フライヤー買ったし♪洗い物終わったら下味付けしておかなきゃだな」
――杏、機嫌いいなぁ。家事がたまってるのそんなにいいかなぁ?世の中の主婦は嫌がるはずだが?
「光輝!杏の事ばっかり考えてるの顔に出てる!組の事に頭切り変えたら?」
――涼、スルドイ…